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「入江さんと三津さんが話し合った結果駆け落ちすると言う事は?」
「ないと信じてる。」
「何か根拠がお有りで?」
「無いがその代わり九一には自由を与えてる。だから後は三津がそれに納得して受け入れるかだ。」
『なるほど。入江さんには話をつけてるんだな。』植髮失敗
桂の算段が少し読めた。だが納得しなければ三津はどんな行動をとるだろうか。最悪の結果は考えたくないなと首を振った。
その夜誰もが寝静まった頃,桂はそっと部屋を抜け出した。 隣りの部屋の三津の様子を見に来た。 思い悩んで寝付けてないのではと心配したが綺麗な寝顔がそこにあった。
「ごめんね。必ず幸せにするから。」
その一言と額に口づけを一つ残して桂は部屋を出た。翌日も天気に恵まれた。この日は進む速度を上げた。 だが馬に乗り慣れてない三津が気持ち悪いと顔を青白くし,お尻も痛いと訴えるから休憩を多めに取った。
「早く帰りたいけど辛い……。」
三津は涙目でそう呟いた。
「なるべく急ぐ。だから頑張って。」
休憩中にしゃがみ込んだ三津の背中を桂が擦った。三津は軟弱ですみませんとひたすら二人に謝った。
「何と言うか今の姿がいつも見てる三津さんの姿でほっとしてます。」
「伊藤さん言ってる意味が分かりません……。」
「か弱くて守ってやりたいと思わせてくる姿を言ってるんだよ。」
桂はいいように言い換えた。だが三津は絶対良い意味じゃないと分かっていた。間抜けだとでも言いたいのかと食ってかかりたいが,残念ながら今はその元気はない。
何とか気合いで耐え抜いて,だいぶ先の宿場町まで来る事が出来た。
「無理させたね……ごめんね。」
「謝らんとってください……。私が早く帰りたいってわがまま言ったから……。」
三津は宿に着いて早々に布団に横たわった。食事もとる気にならない。 こんな状態で一人にするのは心配だから桂はここで寝るよと言った。 三津は両手で顔を覆ったまま,不甲斐ないと何度も呟いた。
「もうおやすみ。明日には阿弥陀寺に着くようにするから元気になってもらわないと。」
『明日にはまたあそこに戻るんや……。』
一気に緊張感が増してきた。みんなはどんな目で自分を見るのだろうか。考えるだけでもまた吐き気がしてきた。
「私あそこに帰って大丈夫ですか?」
弱々しい声で問いかけた。三津が不安になる気持ちも分かるが心配しなくていいのにと,桂はうっすら笑みを浮かべた。
「三津は大丈夫だよ。みんな君の帰りを待ってる。」
みんなに受け入れられないのは桂の方だ。 傍若無人な振る舞いをみんな呆れている。桂が嫌われたとしても三津が嫌われる事などないんだ。
「会うの怖い……。」
「他のみんなにも?私が君を迎えに行くと話した時,宴の用意はどうすればいい?と聞かれた。歓迎されてる証拠だ。 赤禰君もまた三津に膝枕をするけど妬かないでくれと言ってきた。みんな変わらず受け入れてくれるよ。」
「小五郎さんはみんなに何か言われたの?」
「いや,もう何も言ってこない。間違った行いも正してもらえないほど嫌われたみたいだ。」
三津は顔を覆っていた手を外してやっと桂の顔を見た。桂は目が合ったと嬉しそうに笑う。
「私のせいですね。」
桂は三津の頬に流れる涙を指で拭いながら違うよと首を振った。「そうやって自分を責めるとこは変わらないね。もっと,お前は嫌われて当然だぐらい思ってみたら?その方がきっと気は楽だよ?」
「そんなん思われへん……。」
「そう言う優し過ぎる所も好きだよ。でもね,私は悪者でいいんだ。そう言う役回りなんだよ。」
好き好んで損な役回りをする人なんていないでしょと三津は言うけど,桂はこれでいいんだと笑っていた。
『これも罪滅ぼしの一つなんかな。』
だからと言って桂がみんなに嫌われてるのは見過ごせない。仮にも自分の夫だ。
『私達が仲睦まじく見えたらみんなの見る目は変わるんやろうか。』
でもそんな姿を見せたら入江は傷付くんじゃないか。そう思うと身動きが取れない。 三津の目元が険しくなったから桂は何も考えずに寝なさいと囁いた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.04.27 17:27:24
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