歌心などとんとない私ですが、こちらに住む知人が秋分にことよせ、三つの古歌を送ってきてくれました。一つは良く知られた「秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ 驚かれぬる」です。古今和歌集にある藤原敏行という人の歌だそうです。いつまでも残暑が消えないと思っていたら、いつのまにか季節は変っていた驚きと喜びが詠われているのかもしれません。更に秋が進むと、「奥山に もみじ踏み分け なく鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき」となるのでしょうか。これも同じ古今和歌集の中の猿丸太夫という人の歌だそうです。
忙しい現代の中では平安時代の人々の自然と共生する生活の中で生まれた豊かな感受性や繊細な美意識は遠くなりました。しかしたまにこんな歌を聞くと、しばしの間、季節の移ろいに目や耳を澄ませる思いになります。知人によると、日本の秋を詠った歌として彼が最も優れたものと感じているのは、万葉集にある額田王の次の歌だそうです。この女性は天智、天武、二人の天皇に懸想された、容貌も心も美しい人だったようです。わびしさ、さびしさ、余情、品格のすべてが31音の中に込められているとして、彼は絶賛しています。「君待つと わが恋いおれば わが宿の すだれ動かし 秋の風吹く」
確かに夜風が冷たく感じられるようになりました。パソコンの手を休めて、少し開いてた窓を閉めました。明日はMさんの葬儀です。きっと明日は一段と秋の気配を感じるかも知れません。(終り)
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Last updated
2011.09.25 14:26:08
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