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今日は私が関与しているオフィスの引越しをしました。「盛和塾」という中小企業の経営者達が集う練成塾のオフィスです。十人余りが参加して行ったので、わずか二時間余りで終わりました。主には机や椅子、本箱に冷蔵庫、パソコン、プリンター、コピーマシンなどのオフィス機器でしたが、今までのビルの二階から一階へ運び出し、次には新しいビルの二階に持ち上げるので、少し苦労がありました。今までのビルにはエレベーターが使えたので、何とかなったのですが、移転先には外付けの階段があるだけで、ドアーや廊下の幅も広くなく、大きな机や冷蔵庫などを入れるのに苦労しました。
もっとも私が70歳で一番高齢者だったので、皆が気を遣ってくれ、重たいものは何も持たせてくれず、30代、40代の塾生が頑張ってくれました。今日の引越しの中で一つ感じたことがありました。それは引越し用の大型トラックを運転していたホセというメキシコ人運転手のことです。狭い階段や狭いドアーや廊下をうまく通すのに苦労している私たちを見かねて彼が手伝ってくれました。実にうまいのです。まるで居合い抜きの名人が自分の手より長い刀を鞘から抜き、戻すように、大きい机や冷蔵庫を斜めにしたり、立てたりしながら、狭い幅をなんなく通しました。最後は皆で彼の上手さに拍手で感謝しました。 昔80年代から90年代に掛けて私はメキシコでの日系工場の手伝いをしたことがあります。今日ホセさんを見て、当時に感じたメキシコの技術者や労働者のことを思い出しました。600人程働いていたその工場には日本の本社から数名の若い技術者が来ていました。工専や技大で勉強した優秀な技術者達です。ところが機械が故障すると、なんのかんのと言ってすぐに直せないのです。その理由を聞いたら、取り替える部品がないとか、工具がないと言うのです。 日本から合う部品や工具を取り寄せるのに何日も時間のロスがありました。ところがメキシコの技術者はそれを見て、色んな工夫をして、ちゃんとした部品や工具がなくても、何とか機械を修理してしまうのです。私は日本の技術者の方がメキシコの技術者より最先端の技術を学び、優れていると思っていたのですが、マニュアルに無い問題などが発生した時の処理にはメキシコの技術者の方が機転や工夫が利くことを実感しました。今日の若い技術者はその用途用途にぴったり合った部品や工具がないと直せなくなっているのです。メキシコ人労働者の中には、それこそカナズチ一つあれば何でも直してしまうようなベテランもいました。あまりに工具や機械が便利になると、それがないと何も出来ないという状態になりますが、メキシコなどではまだまだ工夫が生きています。 昔の日本の技術者は今のメキシコの技術者たちと同じようでした。一般人でもちゃんとした工具がなくても、工夫して物作りや修理をこなしたものです。現代の日本はあまりにも便利になり、その用途用途に特化した優れた工具や製品が出来ています。それだけに昔物がない時代に多くあった工夫や知恵が少なくなったように思います。今日では料理でもその種類に合ったいろいろな料理器具があります。昔は鍋一つでいろいろこなしたものでした。余りにも便利になると、その半面で工夫する知恵が失われるのかなと感じています。ひょっとしたら教育にも同じようなことが言えるかも知れません。勉強馬鹿、知識馬鹿と言うか、根本的な生き抜くための知恵や強さが逆に失われるのかも知れないと思っています。(終り) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.11.07 10:30:18
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