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東京フリー・メソジスト教団付協力牧師 甲斐慎一郎 説教要約

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2007.03.14
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「ローマの裁判(2)」
                    甲斐慎一郎
                    ルカの福音書、23章5~12節

 ローマの裁判の第一回目であるピラトの初回裁判において、イエ
スに無罪の判決が下されました。しかし祭司長たちや群衆は「この
人は、ガリラヤからここまで、ユダヤ全土で教えながら、この民を
扇動しているのです」と、あくまで言い張って、イエスを訴え続け
ました(5節)。

 「それを聞いたピラトは、この人はガリラヤ人かと尋ねて、ヘロ
デの支配下にあるとわかると、イエスをヘロデのところに送」りま
した(6、7節)。ここからローマの裁判の第二回目であるヘロデ
の裁判が始まります。

 一、ヘロデのイエスへの尋問(8、9節)

 ヘロデとピラトは、おそらく権力の座を争って、「互いに敵対し
てい」ました(12節)。そこでピラトは、ヘロデがガリラヤの国主
であることを口実にして、自らはこの面倒な裁判を回避し、ヘロデ
に責任を転嫁するために、そのころエルサレムにいたヘロデのとこ
ろにイエスを送ったのです。

 ところが、ヘロデはイエスを見ると非常に喜びました。「ずっと
前からイエスのことを聞いていたので、イエスに会いたいと思って
いたし、イエスの行う何かの奇蹟を見たいと考えていたからで」す。
それで、いろいろと質問しました(8、9節)。

 ピラトは、不純な動機と狡猾な手段によって、自分に敵対してい
るヘロデを苦しめようとしました。ところがヘロデは、イエスが送
られて来たことを非常に喜んだだけでなく、「この日、ヘロデとピ
ラトは仲よくなった」のです(12節)。この世における人間関係と
いうものは、何と奇妙なものでしょうか。

 二、イエスのヘロデへの黙秘(9、10節)

 ヘロデは「いろいろと質問し」ましたが、「イエスは彼に何もお
答えにな」りませんでした(9節)。なぜイエスは、黙っておられ
たのでしょうか。これには、次のような3つの理由が考えられます。

 1.ヘロデの質問はイエスが政治的な犯罪者であるかどうかとい
う今回の裁判に直接関係のある尋問ではなく、イエスに対する好奇
心から出た的外れな質問なので、答える必要がなかったのでしょう。

 2.良心の光にそむいて、バプテスマのヨハネを殺したヘロデに
対して、もう何も言うべきことはなかったのではないでしょうか。

 3.ヘロデを「試みて、その心にあることをことごとく知るため」
です(第二歴代誌32章31節)。このイエスの黙秘によって、ヘロ
デはついにその本性を現し、「自分の兵士たちといっしょにイエス
を侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はでな衣を着せて、ピラトに
送り返した」のです(11節)。

 三、ヘロデのイエスへの判決(11、12節)

 ピラトは、祭司長たちと指導者たちと民衆とを呼び集め、この人
には「あなたがたが訴えているような罪は別に何も見つかりません。
ヘロデとても同じです」と言いました(14、15節)。このピラトの
言葉は、ヘロデもイエスに無罪の判決を下したことを教えています。

 そしてルカは、「この日、ヘロデとピラトは仲よくなった」と記
しています(12節)。ヘロデとピラトは、「それまでは互いに敵対
してい」ました(12節)。ところが二人ともイエスに無罪の判決を
下したことと、「イエスに逆らっ」たこと(使徒4章27節)におい
て一致したので、和解して、仲よくなったのではないでしょうか。

 二人が互いに悪い所を悔い改めて一致するのは、真実な和解です
が、この二人の場合のように、第三者に対して共通のものを持つこ
とによって一致するのは、偽りの和解です。

拙著「キリストの生涯の学び」198「ローマの裁判(2)」より転載





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Last updated  2007.03.15 00:10:32
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