「金持ちとラザロ(2)」
甲斐慎一郎
ルカの福音書、16章14~26節
「さて、金の好きなパリサイ人たちが、一部始終(すなわち、迷
い出た羊、失われた銀貨、放蕩息子、不正な管理人の話)を聞いて、
イエスをあざ笑ってい」ました(14節)。
イエスは、彼らに「あなたがたは、人の前で自分を正しいとする
者です。しかし神は、あなたがたの心をご存じです。人間の間であ
がめられる者は、神の前で憎まれ、きらわれます」と言われました
(15節)。
このようにイエスは、神のご覧になる目と人の見る目が全く違っ
ている(または逆である)ことを彼らに教えようとされました。そ
の具体的な例として「金持ちとラザロ」の話をされたのです。そこ
で第二回目は、彼ら二人の外側の姿に焦点を合わせてみましょう。
一、この世における二人の外側の姿
アブラハムは、金持ちに、「子よ。思い出してみなさい。おまえ
は生きている間、良い物を受け、ラザロは生きている間、悪い物を
受けていました」と言いました(25節)。
[項目] 金持ち ラザロ
1.初め 豊かな家に誕生。 貧しい家に誕生
2.状態 健康。 病気
3.衣 紫の衣や細布。 ぼろ切れ
4.食 御馳走。 パンくず
5.住 大邸宅。 無宿
6.行為 遊び暮らす。 病の床にふす
7.境遇 家族や使用人に 孤独、犬がおで
囲まれている。 きをなめている
8.終わり 豪華な葬式。 孤独な死
これが、この世における金持ちとラザロの対照的な外側の姿です。
二、次に来る世における二人の外側の姿
そしてアブラハムは、金持ちに「しかし、今ここで彼は慰められ、
おまえは苦しみもだえているのです」と言いました(25節)。
[項目] 金持ち ラザロ
1.初め よみ。 パラダイス
2.状態 炎の中の苦しみ。 アブラハムのふ
ところの安息
3.衣? 炎の衣。 慰めの衣
4.食? 一滴の水もない。 満ち足りている
5.住? 炎の住まい。 楽園
6 行為 苦しみもだえて 神への感謝と賛
いる。 美、聖徒との楽しい交わり。
7.境遇 孤独。 神と天使と聖徒
に囲まれている
8.終わり 第二の死であ 死も苦しみもな
る地獄。 い天の御国
これが、次に来る世における金持ちとラザロの対照的な外側の姿
です。
三、この世における物事の見方や考え方
ラザロが「パラダイス」に、金持ちが「よみ」に行ったのは、彼
ら二人の内側の姿のゆえであり、生きている間に良い物または悪い
物を受けたという彼ら二人の外側の姿のゆえではありません。
私たちは、「善悪」や「真偽」や「正邪」という道徳や倫理に関
するものについては、明確に善悪を区別しなければなりません。
しかし次のような、それ自体に道徳や倫理における善悪の規準を
設けていない外側の姿に関するものについては、前者を善、後者を
悪、反対に前者を悪、後者を善と決めてかかるような善悪の区別を
つけてはなりません。
▽損得 利害 得失 貧富 優劣 勝敗
▽栄辱 美醜 貴賤 明暗 陰陽 寛厳
▽苦楽 禍福 吉凶 盛衰 順逆 浮沈
▽強弱 大小 多少 高低 長短 広狭
なぜならラザロは、外側の姿は赤い文字の恵まれないほうでした
が、「パラダイス」に、金持ちは青い文字の恵まれたほうでしたが、
「よみ」に行ったからです。
拙著「キリストの生涯の学び」133「金持ちとラザロ(2)」より転載