「ダビデの信仰に学ぶ」
甲斐慎一郎
サムエル記、第二、7章18~29節
「私たちの願うところ、思うところ」をはるかに越えて、かなえ
てくださる神を呼び求め、答えられた信仰の人として、ダビデの生
涯から学んでみましょう。
一、神の家を建てることを預言者ナタンに相談し、彼の承諾
を得たダビデ(1~3節)
ダビデは、りっぱな王宮に住んでいましたが、神の箱は、天幕に
ありましたので、神殿を建てることを思いつきました。
ダビデが主のために家を建てようとしたのは見上げた心がけであ
り、彼の動機は純粋でした。しかし彼は、このような良い志を持っ
たからと言って身の程をわきまえず、また神の導きも求めないで、
勝手に神の宮を建てるようなことはしませんでした。
ダビデは、信頼のおける友である預言者ナタンに自分の心を打ち
明け、どのようにすればよいか相談しました(2節)。ナタンは、
ダビデのことばを聞いた時、王の志は神の栄光を現すものであると
判断して、心から喜んで賛成したのです(3節)。
二、「わたしが、あなたのために家を建てる」とダビデに約
束された主(4~17節)
「しかしナタンは、たとえ敬虔であっても神の導きではなく、た
だ自分の感動によって語ったのです。私たちの考えにおいても、た
とえ敬虔な動機から出ていたとしても、神のみこころにかなわない
ことがあります。......ですから事ごとに主観的な感情ではなく、客
観的な啓示によってこれを試験しなければならないのです」(A・
イーダーシャイム)。
主は、ナタンを通してダビデに次のような4つのことを仰せられ
ました。
1.主は、神の家を建てるようにイスラエル人に仰せられたこと
は一度もない(7節)
2.主が、ダビデのために家を建てる(11、27節)
3.主は、ダビデの世継ぎの子を起こし、彼が主の家を建てる
(12、13節)
4.ダビデの家と彼の王国とは、主の前にとこしえまでも続く
(16節)
主がダビデのために家を建て、主の前にとこしえまでも続くとい
うのは、主がダビデの王国を永遠に確立されることを教えています。
この「ダビデへの大いなる約束は(12、15、16節)、ソロモンにお
いて一部分成就したが、完全な成就は、ダビデの最も偉大な子、キ
リストにおいてのみある(第一列王8章15~20節、ヘブル1章5節、
ルカ1章31~33節、使徒2章29~31節、13章22、23節)」(A・
M・レンウィック)。
ダビデは、大きな戦いをして多くの血を流してきたので、神の宮
を建ててはなりませんでした(第一歴代22章8節)。それで主は、
主の御名のために宮を建てようとしているダビデの好意を無にしな
いように、こまやかな心くばりをして、この時は宮を建ててはなら
ない理由を告げて無下に断るようなことをせず、「わたしが、あな
たのために家を建てる」と言って(27節)、彼に希望を与えて励ま
されたのです。
三、主のことばに感謝して、約束どおりに行ってくださいと
祈ったダビデ(18~29節)
ダビデは、ナタンをとおして告げられた主のことばを聞いた時、
自分の願いはかなえられないことを知りました。しかし神の宮を建
てることができないことに対する不平や不満のことばなど一言も言
いませんでした。
かえってダビデは、主の御目には取るに足りない者のために、は
るか先のことまで告げてくださった主の心憎いまでの配慮に感激し
て、主の前にへりくだった心から満ちあふれる感謝のことばが口を
ついてほとばしり出ただけでなく、「あなたの約束どおりに行って
ください」と大胆に祈ったのです(25節)。
ダビデ王が祈った「この祈りの特徴は、大いなる謙遜、神の顧み
に対する感謝、神の意志への服従、主に対する信頼である」(A・
M・レンウィック)。
神は、このようなダビデの信仰の祈りに応えて、彼の「願うとこ
ろ、思うところ」をはるかに越えて、かなえてくださったのです。