お気づきの方は少なかったと思いますが、ここ数か月、マリード・バックナンバーのうち、１～５０号分のリンクが切れたままになっていました。

マリードを配信しはじめたころ（「まぐまぐ」といったメールマガジン配信スタンドを利用せず、全部手作業で送信していました）、わたしには、ＨＴＭＬタグの知識がまったくなく、自分でホームページを作成することができるなど夢にも思っていませんでした。それで、当時わたしが勤務していたかもがわ出版のホームページ内にマリードのページを作ってもらい、そこにバックナンバーを掲載していたのです（５１号からは自前のＨＰを立ち上げた）。

ところが昨年秋ごろ、かもがわ出版のホームページがリニューアルされたとき、なぜかマリードのページが削除されてしまっていたのです（おおーい。消すなら消すと、一言ことわってくれよな）。まあ、データだけは担当者が別個に保存しておいてくれていたので、それを譲り受けて、先頃リンクを修正し、再公開となった次第です。

当時のバックナンバーを読み返すと、一人で情報公開訴訟をしていた自分を懐かしく思い出されます。もちろん同和補助金が制度化された「裏金」として不正に支出されていたことなど知る由もなかった頃で、行き当たりばったりで、とにかくジタバタして、なんと無駄な時間を費やしていたことか。

今でこそ、市民ウォッチャー・京都のみなさんや、マリード読者のみなさんをはじめ、いろんな人たちから支援してもらっていますが、情報公開訴訟で勝つまでは（いや、２００２年末に裁判のなかで補助金に関する不正事実が明らかになるまでかな）、ずいぶんさびしい思いをしてきましたね。裁判までやるなんて、あんたよっぽどヒマなんか、もの好きやなつやな、解放運動がなんたるかろくに知らんくせに気楽なこと言うなといった反応に遭うこともありました。

２００１年４月２０日、現在の同和温泉裁判の提訴をおこなったときのことが、忘れられません。たしか小雨が降って、肌寒い１日でした。当時まだわたしが常連で寄稿していた月刊誌『ねっとわーく京都』の編集室から京都地裁までの道を（普通に歩けば１０分もかからないくらいの距離）、膨大な証拠書類を抱え、濡れながら一人トボトボ歩いたものです。あんまり提出書類が多かったので傘もさせなかったのです。編集室から地裁まで２往復くらいしたでしょうか。

このときはまだ、わたしには一緒に荷物を運んでくれる協力者もいなかったのです（これはひとえに、わたしの性格に難があることが要因）。

弁護士を立てずに行政相手の裁判が続けられるのだろうか、こんな裁判やる価値が本当にあるのだろうか、おれはいつまでもこんなことをやっていていいのだろうかなどと、マリード誌上ではそんな不安は書いていませんでしたが、ずいぶんと動揺していたのです。

実際、提訴に必要な書類を出し終えて裁判所を出たとき、自分のやっていることがむなしくて、不安に思えて、泣けてきましたね。いや、本当に。その頃から、わたしのことを励ましてくれる人も、もちろんいました。でも常に気持ちの中には、不安、焦燥、むなしさが隣り合っていました。

今もまだ、ときおり、不安を感じたり、あほらしくなったりすることがあります。発行が２か月以上滞っているときって、だいたいそんな気持ちに陥っていると思ってください（たんに書くネタがないというときもある）。

でも、わたしにとって幸いなのは、わたしにはマリードがあるということです。自分一人で執筆、配信、ＨＰ管理をしておいて、ちょっとへんかもしれませんが、帰るべき家がある、そこには迎えてくれる人が変わらずにいるという気持ちなのです。マリードがあるからこそ、取材活動を持続できたと思っています。

この２１日で、マリードを創刊してまる５年になります。５年間で、同和行政、部落解放運動を取り巻く情勢は大きく変わった面もありますが、すでに体制化した腐敗構造は、容易なことでは取り除かれることはない。そして、いまだ覗くこともできないでいる「闇」の部分は、広く残されているようです。近く、また新たに住民訴訟を１件、起こす予定です。

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寺園敦史　almarid@muhajirin.com
マリード［同和行政オブザーバー］