|
テーマ:洋画(641)
カテゴリ:映画
初っ端目のドアップからカトリーヌ・ドヌーヴが映し出されるんやけど、その顔が完全にイッちゃってる。 綺麗やから余計マネキンみたいで、やっぱりイッちゃってるっていうのが一番しっくりくるな。あんな顔なかなかできんぞ。 たぶんこのオープニングはラストのその後の様子。 カトリーヌ・ドヌーヴの映画はあんまり観ててないけど『シェルブールの雨傘』と比べるとこっちの方がインパクトもあって、ハマり役やな。 無表情で俯いてる時の目つきとかかなり良かったね。 キャロルの異様さは普段の様子から分かる。 街を歩いてる時に鼻をこするような、ハエでも払っているみたいな仕草をずっとしてんねんけどこれがもうおかしい。 あと、おっさんが「よう、姉ちゃん」って本格的なナンパとかじゃなくちょっかい出す感じで声をかけてきた時。 普通やったら避けて歩くとか、嫌な顔するなりするやろけどキャロルは違うねん。 そのおっさんを見た途端、表情がおかしくなってその夜には襲われる妄想しとったからな。 とにかく男を怖がってて嫌悪してる、尋常じゃないほど。被害妄想が凄まじい。 感情の起伏がほとんどなくて、映画の最初から最後までほぼ無表情。 同僚のブリジットとの会話でのみ笑うけど、それもはにかんでる程度。 キャロルは一緒に住んでる姉ヘレンに依存してて姉妹仲はいいねんけど、姉が妻子持ちの男マイケルを家に連れ込むことに対し嫌悪感がある。 最初はこの姉とマイケルのこと「この男妻子持ちで何しとんねん、そんなんと付き合う姉も姉やで」と嫌な感じで観てた。 でも、観ていくと気づく。この二人がキャロルにすごく愛情を持っていて、接し方が優しい。 マイケルが「ちょっとキャロルがおかしい、病院で診てもらったほうがいい」みたいなことを言い出す。 そしたら姉が「妹がおかしいわけないやろ、何言うとんねん!」って結構キツく怒るわけ。 その言い方が「私の妹になんて失礼なこと言うんや!」みたいな怒り方。 マイケルも変な意味で言ったわけじゃなくて、本当にちょっとこの子大丈夫かなと思って言うたんやろけどあんまり姉が怒るもんやから、もういいよみたいな感じでこの話は終わり。 姉がマイケルと旅行行くって言うた時に、キャロルが小さい子が親にするみたいに「行かないで」って姉にすがる。 その時の姉が小さい子供を相手にしてるような言い方で「いい子にしてるのよ」って宥めるように頭撫でたりしちゃって。マイケルの方も同じく優しげに子供に言うみたいに声をかけるねん。 旅行中も絵葉書送ってきて、ずっとキャロルの様子を気にしてくれてんねん。あくまでも子供を相手にしてるような感じ。 あんな年頃の女の人に対する言い方、接し方ちゃうで。二人ともこれが普通っぽいし、キャロルを可愛いく思ってることがよく分かるシーンやな。 キャロルの方は姉が恋しくて恋しくて仕方がない。 うさぎの料理を冷蔵庫から出してきて部屋に置いてるっていうのがもうな。 姉が作ったものやし、旅行が決まる前に「一緒に食べような」って約束してたもんな。 普通腐ってきたら臭いで我慢できんくなるけど、ハエ集ってきてても全く気になってないし。 鞄の中にそのウサギの足を入れて出かけるくらいやもん。 姉恋しさゆえや。姉に一緒におってほしいんや。もうどんだけ寂しいねんって。 うさぎ料理でどれだけ姉を恋しがってるかを見せるって、いい演出やね。あれで一発で分かるもんな。 姉も「マイケルを家に入れるな」と言われてなんやかんや文句は言うとるけど、基本はキャロルに優しい良い姉。 映画の説明ではキャロルの恋人という役柄のコリンという男がおるねんけど、これ恋人って言えるんか? コリンが一方的に好きで追い回してるだけで、キャロルの方に好意はないどころが完全に怖がって萎縮しとるもん。 店でお昼食べてるキャロルにコリンが「こんなもの食べちゃだめだよ」とか言って別の店に誘うけど、その時のキャロルの様子よ。 コリンは会えて嬉しいのが全面に出とってしゃぎまくってんねんな。 キャロルは萎縮してずっと下見て「仕事があるから…」と繰り返す。 コリンは恋は盲目とはよく言うたもんで、明らかにキャロルの様子がおかしいのに全く気付いてないと言うか見てもないと言うか恋に恋してる状態。相手の反応を全く見てないもんな。 でも、一途にキャロルのことが好きやねん。友達に「ヤッちまえばいいやん」ってからかわれて、本気で怒ってたからな。 全く会えんで連絡も取れんくなってからは家に押しかけて来て扉に体当たりするくらい。 これだけ聞くとこいつもヤバく思えるやろけど、会いたくて会いたくて仕方ない純粋な気持ちが観てる側にはよく分かるから。 ただ、コリンが来た時のキャロルは死ぬほど怖がっとったけどな。狼狽えまくって可哀想やったもん。 キャロルに背中合わせで照れながら「会いたかったんだ」「ずっと一緒にいたいんだ」とか言ってる時の絵面がなんとも言えんな。 キャロルは鈍器持ってずっと壁の方向いて俯いとるし、コリンは全くお構いなしで少女漫画みたいな雰囲気出しとんねん。 いきなりキャロルに頭殴られて殺されてしまうのが本当に気の毒。 コリンは純粋にキャロルが好きなんやけど、キャロルは純粋にコリンが怖い。全く噛み合ってない。 コリンはイケメンやし一途だしめっちゃいい人なんやけど、もうこれは恋した相手が悪かったとしか言えんな。 こっちとしては、こんないい相手おらんやろし美男美女でくっついてほしかってんけどな。 ぶん殴ったとき思わず「アッー!!」って叫んでももうたし。なんてもったいないことを…。 水に沈んどってもイケメンやな〜。 コリンを殺してしまったことには動揺するんやけど、死体をバスタブに沈めてしまうと何事もなかったかのように普通にしてんねん。隠さなあかんとかそういうのはなくて、自分の視界から消えればOK!てのが…やっぱり異常やねんな。 その後、家主が家賃を回収に来る。 コリンの死体はバスタブに沈めとるだけやから、部屋に入った瞬間「臭っ!」ってなるわけよ。「若い子はロクに掃除もせんのかい」で済むんやけど、そりゃ死体があるとは普通思わんしな。 この家主がキャロルに刺されるシーンがなかなか良い。 家主がまさかこんな子が攻撃してくるなんて思ってもないから、最初切られた時に何か分かってなくて「何?」みたいな感じでキョトンとなってる感じが。 不意打ちで思わぬ相手から刺された時のリアルな反応って感じで、その自然さに感心したわ。訳も分かってないうちにまた刺されて、ロクに反撃もできず死んでいく様がリアル。 二人も殺してしまったけど、キャロルからしたら本気で怖いわけやし普段から「こんな目に合わされるんちゃうか」って男に襲われる妄想しまくってる。 本気でそう思ってて、恐怖心から殺してしまったわけだから可哀想ではあるわな。殺したいわけではないんやから。 コリンは扉破って無理矢理入ってきたからしゃーないとして。 家主の場合は、家賃をさっさと渡しに行っとけば別に来ることもなかったんやけどな。 姉から何度も家賃渡しといてって言われてたんやけど、キャロルがそれどころじゃない心理状態やったから。 しかも家主の前で太もも見えるような格好して…見せつけるようなもんやからな。 自分が若くて美人な自覚はないねんな。 部屋来た時点ですぐにすみませんって金渡せばさっさと帰ったんやろに。 招き入れたみたいになっとったしな。まあ、家主が襲ってきたしな…。 とにかく普通に男の人と喋られへんし、ろくに見られへんからどうしようもないなあれは。 男が怖いから男が近寄って来んように自衛する、とかはできないのよこの子。恐怖心が凄すぎて、普通の状態じゃないから。 女の人と一緒にいれば何も問題ないねん。 キャロルが部屋の窓から見える修道院を見てるシーンがちょくちょく入るねんけど、あそこに入ってたら一生幸せに暮らせたんちゃうかと思うわ。 キャロルにとって最高やろ。とにかく男さえおらんかったらいいんやから。 旅行から帰ってきた二人。まず姉が死体を発見してパニック状態。 そこに荷物を運び込んでいたマイケルが飛んで来るんやけど、この人出来た人やで。 まず、姉を落ち着かせて「自分の部屋におりなさい」って座らせといてから外の電話まで駆け下りてって警察に通報。 すぐに戻ってきてから様子のおかしいキャロルを見るなりサッと抱き上げて連れていくんよ。この人大したもんやなと思ったね。咄嗟の判断というか段取り?手際?が良いわ。 キャロルを横抱きにして連れて行く時に、キャロルが男が自分に触っとるもんやからえらい目でマイケルのこと見んのよ。 またその目つきが凄いんやけど、それに気づいたマイケルの表情が凄くいいんよ。 「ああ、生きてるわ。良かった」って感じの安心したような表情に少し悲しさを混ぜたような絶妙な表情。 マイケルはこんな状態のキャロルを怖いとか気持ち悪いとか全く思わへんねん。純粋に心配してる素晴らしい大人の対応最高!! キャロルの異常さにいち早く気付く鋭さがあって、キャロルへの接し方も上手かったし、異様な状態のキャロルをすぐさま助け出す頼もしさもあって本当に出来た人ですよ、彼は。 姉よりもキャロルを理解してるね。しつこいようやけど出来た人やで。 こんな出来た人間になりてえ、半端ねえ! 姉が自分の部屋でおるとベッド下から手が出てきて、キャロルが死にかけみたいな様子でおったんよ。姉のベッド下におるのがまた…とにかく姉が恋しいんやね。ここまで来ると健気。 その様子に姉が来ビビって後ずさりするのを見て、最初は「妹がこんな状態になっとんのに心配しろや」って思ったんよ。でも、よく観て考えたらあれは単純にビビっただけやろな。 帰ってきたと思ったら死体はあるわベッド下から手は出てくるわ。 あまりにも異様で「どうしたの!?」って駆け寄れる状態じゃなくなるのも分からんでもない。 姉はマイケルに「妹おかしいで」って言われて「そんな事ないわ!」って言っとったくらい妹はいたって普通やと思っとったもんな。 姉の悲鳴を聞いて他の部屋の住人が入ってきて遠巻きに見ながらガヤガヤ言ってるところにマイケルがすかさず助け出すわけですよ。 姉さえおったら人を殺すような事態にはならんかったな。 姉がおらんかったらロクに食事も取らないわ(料理が出来ないっぽい)、掃除はできないわ、とにかく何もできない子やから。 ラストでキャロルの家族写真が映る。 他の家族は普通に前見て笑っとんねんけどキャロルだけもう何とも言えん顔してそっぽ向いてんねんやんか。 そのがタイトルそのまま『反撥』っていう顔。タイトル通り。 具体的に何に反撥してるとか何があったとか言うてないんやけど、その写真見ただけでこんな風になってしもうた原因は子供の頃に何かあったからなんやなってすぐ分かるもん。 もうあの頃から反撥しとんねん。何と言わんけど男に対してあんなになるような何かがあったんよ。 あとは、男が迫ってきた時の『反撥』て意味。普通の人にとって何気ないことでもキャロルにとっては何倍にも感じ、後にもそれがずっと残って被害妄想が膨らむからその『反撥』が凄いってことやと思う。 サイコホラーって位置づけの映画なんやけど、自分はサイコともホラーとも思わなかった。 キャロルが精神を病んでることはすぐに分かるし、言動の原因も比較的分かりやすい。 早い段階から「この子大丈夫やろか」って心配になってハラハラはするけど。大人になりきってない感じやな。美人やから嫌でも男が寄ってくるし、ただただ不憫やったわ。 二人も死んどるけど誰が悪いとも言えん。もちろん殺してんのは悪いんやけどさ… でもでも扉ぶち破ってきたり襲い掛かってくる方が悪い!「やめなさい!この子が怖がるでしょ」って感情で観てたわ。 姉は結婚とかしたい人やろからキャロルとずっと一緒に住むってわけにはいかないし、この生活がずっと続けられるわけじゃないから、やっぱりキャロルが修道院に行くのが最善の道やったな。周りが女ばっかりやから平穏に暮らせたんちゃう。 医者に診せても意味なさそうやし…。 余談やけど、キャロルの勤め先の美容院、環境が良くて自分もここで働きたいわ。 勤め先の経営者マダム・ドニーズが物分りのいい懐の広い人。キャロルがお客さんの指を切ってしまったんやけどそんな怒鳴りつけるわけでもなく、キャロルの様子を見て「何かあったの?」「よく休みなさい」って言うてくれるねん。大人やわ〜、頭ごなしに怒らんとその子の様子を見て判断してくれる上司って今やと考えられんのとちゃう。 お客さんもなかなかいいし。まあ、一人しか出てなかったんやけど。 雰囲気が良くて働きやすそうやと思ったな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.02.11 10:04:50
コメント(0) | コメントを書く
[映画] カテゴリの最新記事
|