2008/06/21(土)12:11
【19】0805台湾出張 -TAXIの運ちゃん(5)-
「あのっっ・・・
日本の統治の時は、どんなだったですかっ・・・」
隣のオジサンに体を向けて、
身を乗り出すようにして言いました。
どんな答えでも、いいです。
教えて下さい。
当時の日本人達を・・・祖父を、
どう思ってらっしゃるのかを、
・・・聞かせて下さい・・・!
ヒザの上に揃えた両手は、
ギュッと握り締めていました。
奥歯を噛んで、
オジサンの横顔を見つめました。
オジサンは
「えぇ~え、良かったです」
深々と頷いて、言いました。
一瞬、言葉が出ず。
「・・・・・・・そうですかっっ!!」
搾り出すように、言いました。
思い込みだとわかっていますが
祖父や、私が、受け入れられたように感じました。
このオジサンは、
・・・かつて、同胞だった・・・!!
手を伸ばして、
オジサンの腕に触れたいと思いました。
が。
穏やかな表情のままのオジサンに・・・・
・・・・・・・・・
私は目線を下方に落とし・・・・・・
・・・・そして
息をつきながら、
・・・・・・・前に向き直りました。
信号が見えました。
その向こうに、「湖口駅」が見えました。
「あ・・・着きましたね」
「はい」
私の口調は、最初に戻っていました。
サッとカバンを引き寄せて
財布を取り出し、100元札を1枚渡しました。
「収拠(受け取り)、お願いできますか?」
「はい」
オジサンは受け取りを1枚、ピリピリとはぐと
「 じ ぶ ん で 、 か く 」
微笑みながら、ゆっくり言いました。
私も微笑んで
「はいっっ」 と答え、
それを受け取りました。
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「ありがとうございました」
何度か会釈しながら、車のドアを閉めました。
車の邪魔にならない所に移動して、
オジサンの車を見送りました。
オジサンは車を切り返すと、
振り返る事なく、前方へ消えていきました。
・・・あんな事聞いて、良かったんだろうか。
オジサンの表情を思い浮かべました。
私一人、あんなに興奮して・・・・・・
「えぇ~え、良かったです」
オジサンの言葉が、耳に残っていました。
「えぇ~え、良かったです」
「えぇ~え・・・・」
オジサンはそう言ったし、
深く頷(うなづ)いた・・・
じゃあ、あの表情は・・・・・・
2008 引く 1945 、は。
ろ く じ ゅ う さ ん
63年、経ってるって事か・・・・
オジサンにとっても、63年も前の記憶・・・
フッ・・・(笑)
私一人で、そんな昔の事を
最近の事のように・・・
周囲を見渡しました。
63年前までの50年・・・・・
・・・・ここは、日本だった
ふっと、
セピア色の風景が
目の前に見えたような気がしました。
そして次の瞬間、
カラーに戻っていました。
・・・さ、電車乗るか!
歩き出しました。
「 じ ぶ ん で 、 か く 」
オジサンの口調を思い出して、
一人微笑みながら、駅へ向かいました。
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あれだけ興奮していたのに
その場を離れた途端、パッと切替えができたのが
不思議な感じでした。
その切替は、やはり
63年の年月が流れた、という事なんだろうかと思い
そして同時に、
私は、今を生きているという事なんだろう
とも思いました。
過去を受け止めながら、今を生きるのは
確かに背負うものが多く、辛い事もあるかもしれない。
でもその分、より強く、より深い生き方ができるのではないか、
そんな気がしています。
次のTAXIへ
つづく。
↑ よろしければ是非、一回押してやってください。。
いや~もう、ホント何だかもう、長い話でスミマセンでした^^;
前回はねぇ、きっとこのブログの中で一番文字数が多かった回だと思いますね。
書いた後、ちょっと疲労しました^^;
毎回気分で書いてるから、どの程度の話になるか自分でも分からなくて。
あんなになるとは、思いませんでした。
読んで下さった方々には、感謝するばかりです。
オジサンの立場についても色々書こうかな~とも思ったんですが、
また、何か機会があった時にします。
書くなら、ちゃんと書きたいので、ええ。
なので、今回は私のセンチメンタル・ビジネストリップ という事で^^;
受け取りを「自分で書く」と言うのは、
「好きな金額書きなさい」って事です^^;
オジサンも、しっかり今を生きてますね。
次回もTAXIの話です。
雰囲気はガラッと変わって「謝謝!」しか言わなかった^^;運転手さんの話です。
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私の日常の小ネタをチョコチョコ載せてます。そちらも是非!