みなさん、こんにちは。
標記の事故について、前回はクルマ側からの分析を行いましたが、クルマ同士の事故規模そのものは軽微ですし、双方のドライバーとも乱暴な運転をしていたわけではない(不注意ではあった)ことがお分かりいただけたと思います。ですから、事故そのものは「どこでも起こりうる」程度のものです。それにしては結果が重大になってしまったわけですが、この事故の本質的な問題点は、そこから探り出さないといけないでしょう。
たまたまこの事故の数日前に、事故現場の近くにある会社を取材した件は既述の通りです。現地には取材の前日に入っていたため、「せっかくだから琵琶湖でも見に行くか」と、駅(JR大津京)から湖畔まで歩いてみたのですが、その際に、クルマ優先で人が阻害されている「何か嫌な感じ」を覚えたのも、前々回のブログに書いたとおりです。
その「嫌な感じ」の正体がなんなのか、そのときはよく考えなかったのですが、改めて現場の風景をGoogle Earthで見てみると、歩行者の安全が軽視されているということに気がつきました。大津京駅から県道558号線に出るまでの道は、片側2車線で中央分離帯があるにも関わらず、歩道と車道の間にガードレールが設置されていないんですね。
さらに県道558号線(件の事故は、この道の先の559号線で起きています)に出ると、ここもやはり、車道と歩道の間にガードレールはなく、部分的に足の貧弱な鉄柵が設置されているのみでした。そんな環境であるにも関わらず、道が直線かつ平坦で広いので、クルマがけっこうなスピードで走っています(制限速度は50km/h)。湖岸には真新しいマンション群があるのですが、「駅と住居」という生活の動線を、幹線道路が分断する形で通っているわけですね。
要するに、生活空間と通過交通のための幹線道路がきちんと分けられていないにも関わらず、歩行者の安全対策が十分に行われておらず、僕はそこに「何か嫌な感じ」を覚えたというわけです。
今回、事故に遭った園児の保育士さんは、日頃から歩道の奥に園児をかためて待機させていたそうですが、恐らく彼らも本能的に「クルマと隔離されていない危険」を感じていたからではないかと思います。当該交差点は、歩道との間にガードレールがない一方、反対側(川があって歩道はない)には、クルマの転落を防ぐためのガードレールが設置されているという、なんとも歩行者軽視な対策が行われています。
すなわち本質的な問題は「こんな構造を設計して何も不思議だとは思わない感覚」にあるのだと思います。
ですから取るべき対策は、短期的には、歩道と車道の明確な分離です。ガードレールの設置はもちろんですが、今回の事故は横断歩道のところからクルマが突っ込んでいますから、横断歩道部分にも、車椅子の通行を阻害しない程度の間隔で、頑丈なポールを立てる必要があります。すべての交差点に一度に対応するのは困難でしょうから、通園・通学路や幼稚園/保育園/小中学校近傍の大きな交差点から優先的に対策を進めていただけるよう、滋賀県(に限りません)には強くお願いしたいところです(少なくとも国交省や都道府県土木事務所、公安委員会および交通警察関連部署は、保育/教育施設の位置と動線を早急に把握すべきだと思います)。
長期的には、居住空間と幹線道路を明確に分離する都市計画が必要となります。国土の狭い日本では、なかなか難しいかも知れませんが、「だから無理」ではなく、「どうにかできる方法はないものか」と考え、行政の垣根を越えて取り組んでいただきたいと思います。