第四話【死の予兆】
7時05分 朝田亭 玄関「お嬢様・・・!こんな遅くにお出かけですか?」「ええ。大丈夫よ。ちょっと散歩するだけだから」玄関でひまわりと召使の少女が話していた。ひまわりは嫌そうに肩を竦めている。「ですが・・・・・・・」「え?あ・・あはははははは」心配する様に言った召使の言葉を聞き、ひまわりは笑い出した。ひまわりはそのまま、ゆっくりとその召使に近づいていく。その姿はとても薄気味悪いモノだった。「お嬢・・・様・・・?」ひまわりの異変に気づいたのか、少女は顔色を変え、後ろに引き下がる。少女がリビングのドアの取っ手に手を掛けようとした時だった。「逃げないでよ」そう言ったかと思うと、彼女の手は少女の手を押さえつけていた。「貴方、まだ見習いの召使なのに、私をやけに心配してくれるのねぇ。普通なら、厳しいから嫌いになってるのに。・・・純粋ね。」「・・?」そう言い終わったひまわりは、何故か悲しそうだった。「貴方が、貴方があの燃えるごとく美しく、血のように儚い目を持つ種族の人間であれば・・・・・・もったいないわね・・・貴方、名前は?」「えっ!?……あ、あずきです!菜野 あずき…」「そう、あずきって言うのね。覚えておくわ…」少女の手を離すと、ひまわりはそのまま玄関へと向かい、外に出て行った。ひまわりが出て行った後、少女は床にへたりつく。顔には汗がにじみでていて。「あれ…が、ひまわり様…?」私が慕っていた、゛ひまわり゛様…?それに、私の事…お忘れになったの…?あんなに一緒に…ずっと一緒に居たのに!ひまわりっ!!姿も、声も、全てひまわりだけど… 何かがおかしい「そう、赤目だったら・・・ね」暗い夜の道。ひまわりは秘かにそう呟いた。 世界は廻り始める。 気づかない所で。 ほら、また。 動き始めている。 これからが 新たなる世界の始まり。 幕開けの予兆。 最初の犠牲者、だぁれ。7時10分 鼎亭 佐名木自室「ちょっと・・・・何なの!?何なのよ・・・あんな屈辱って無いわ!!」バリィン!茨の怒鳴り声が聞こえると共に何かが割れる音がした。「茨様!気持ちは分かります!でも・・でも何故江間がこんな事に!!」佐名木は今にも意識が無くなりそうな江間を必死に抱え込んでいながら、必死に茨を訴えている。江間の額からは紅い血が流れ出ている。佐名木や江間の周りには壺の破片が落ちていた。「何故?何故じゃないわよ佐名木!あんたの妹は、卯月日向と交流してたのよ!?あの化物と!」茨は気が狂ったように江間を睨み付けながら指を差した。「江間・・・が・・・本当なの・・・・?」佐名木は江間を揺らすが、目を逸らすばかりで黙りこくっている。「ねぇ、江間ぁ!何でっ…!?」「何で…ですって?」ふ、と佐名木を睨みつける形で江間は見上げた。「江間…?」見たことも無いような妹の表情を前にして、佐名木はたじろいだ。茨はそんな二人の様子を静かに見ている。「知らないでしょ…お姉ちゃんも…茨様も…日向の事、何も知らないでしょぉ!!」がん、と江間は思い切り壁を殴った。江間の瞳には、涙が溜まっている。「日向の事、何も知らないくせに!日向、本当に優しくて…っ何で、目の色が違う位でヒドイ事するの!?差別するの!?こんな事して楽しい!?何で日向を分かろうとしないのよ!!」「あんた・・・何を生意気なっ!!!」 パンッ!怒鳴りつけてきた江間の頬を、茨は強くはたいた。「茨様…!」佐名木は勢い良く茨を止めにかかる。「おやめ、佐名木!…お前も私を裏切んの!?江間!あんたには幻滅したっ何が分かろうとしないよ!分かりたくもない…あんなバケモノの気持ちなんか…吐き気がするったらありゃしないわ!」「な…本気で言ってるの…?」茨の日向を化け物としか見ない態度に、江間が目を見開く。「本気よ。だいたい、許せないのよ!この私よりも目立ってることが!!あんな奴ばっかり目立って…朝田令嬢の奴にもとり入って…はっ、何処がいいの?あんなクズ!今すぐ殺してやりたいくらいよ!!!」「茨様…!?」「おかしいよ…貴方、狂ってる!もう嫌っ嫌だよぉう…お姉ちゃん、何でこんな人にずっと仕えていなきゃいけないの!?もうやめようよ…!」呆然と突っ立っている佐名木を見て、江間は泣きじゃくる。「茨様、間違ってますよ…だって、だって、今の茨様、私の知っている茨様ではないもの…ね?茨さ「お黙んなさい!」」「お前は私の何を知ってんの?裏と表って言葉分かるかしら?今までお前やお前の妹に見せてきたのは嘘の私。結構、捨て駒にしては使いがいがあったって感じよ。でもそれも今日で終わり。さよなら?可愛そうな捨て駒ちゃん?」恥ずい代物書いてしもうた…;;