梅木水晶の日常

かつて私と男が住んでいた、
田舎町の税制システムでは、
漫画家の仕事に携わる男の手元には、
この田舎町のおかしな税制システムのせいで、
男が漫画家の仕事で得た収入が残らない、との事でしたので、
男はしきりに東京に引越したがっていました。

男がよく言っていた事は、
「水タン、水タンの貯金が100万円貯まったら、東京に住もうね。
　東京に住んだら、僕みたいな文化的な仕事をする人間の手元にも、
　ちゃんとした形で収入が残るはずだから、
　そしたら今よりも僕達の暮らしは楽になるはずだよ。

　でも、水タンには今の仕事を辞めて貰わなきゃいけなくなるから、
　今のうちに、東京で正社員として働けそうな仕事を探しておいてね。
　ほら、この洋菓子屋さんの正社員の仕事なんていいんじゃない？
　水タンなら、ここの制服も似合いそうだし、
　ラッピングとかも出来るんでしょ。
　あと、水タン、簿記とか情報関係の資格も持ってたよね。
　そういう仕事も東京にはいっぱいあるから、何も心配しなくていいよ。」
といった内容の事でした。

私は、
「結局、東京に引越したとしても、
　私の収入が生活の柱になるんじゃねえの」と思いました。

東京に引越す前に、男の元から逃げて本当によかったと思います。

しかし、貯金が100万貯まったくらいで東京に引越したのでは、
引越し費用や、不動産屋さんに支払うお金や毎月の家賃、
その後の生活費などを考えても、
東京での生活が１年持つとは思えません。

何をもって男は、
「貯金が100万貯まったら東京に引越そう」なんて言っていたのでしょうか。

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