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野宮安寿.com

[考えること] カテゴリの記事

全39件 (39件中 1-39件目)

パニックにならない

昨日の夜、突然の腹痛に襲われました。もともと胃腸が弱いので(東横線各駅のトイレ位置に詳しいわたし…)よくあることではあるのですが、どういうわけか私の痛みは生野菜、いや違う生やさしくないのです。毎回「このまま気を失って、一巻の終わりでは…」という気がします。昨日も「まずい、やり残したことがあと200くらいある(強欲)」「あーー、部屋が汚いしぃ」「犬君ごめん」とか思いつつ、口も利けない状態で冷や汗をかき、部屋の隅でうずくまっていました。いつもならそのままうめき続けるか、あるいはそれが異様に長いと救急車なのですが、昨日はふと「痛いけどなぜか冷静」な自分がいました。「今日何をたべた??」「朝は抜いて、昼はピザトースト、夜はバジリコのスパゲティとスープ。大体自分で作ったから変な添加物は無いと思う」「じゃあ、食べ物が原因じゃないよな」「時間的にも食べ物じゃない」「風邪?」「今日は熱ないよ」「お腹出して寝た?」「寒いから絶対しない」「へんなツボ押したとか??」「それもないと思う」「誰かに恨まれる覚えは?」「あるかもしれないけど、まだ生きているので」「神経かな?」「かもね」「だとしたら大丈夫、死なないから!!」。そして時間はかかりましたが、こころなしかいつもより痛みは深刻化せず、次第におさまっていきました。しばらくして思い出したこと。何かの本で「戦争で生き残るのはあんまり生に執着せず、かつ冷静な人」という記述があったなあ…。パニックにならないって、本当に大事ですね。そういえばイギリス人も「Don't panic!!」って子どもの頃からよく言いきかせられるらしい。深夜には痛みは完全におさまりました。そしてぬるいお湯を飲んで、冷静に、布団の海に潜り込んだのでした。※ちなみにこの痛みは本当にやっかいなのですが、「死ぬかも」と思うので毎回「しなければいけないことの順位」が明確になるという特典がもたらされます。人間死を目前にすると、ことの軽重がてきぱき判断出来るのですね。そして、回復したあとは「一度死んだと思ってがんばろう(しかし単純だなあ、オレ)、負けるもんか」と思い、闘争心が湧いてきます。それから、大雑把に言うと、神経過敏で繊細になりすぎたとき、誰かの一言やメールの一文で起きあがれないくらい傷ついたとき(ふだんなら平気なわけで、その人が悪いと言うより、自分が悪い)、この痛みがやってくる傾向があります。神経過敏は大腸にも響く(あるいは逆??)。神経と大腸は直結しているのです!! 過敏性大腸を「過敏性だ胃腸」と思いこんでいたことは絶対秘密にしつつ、たまに誰かに教えてあげよう。

December 11, 2005

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街のねずみ

ありがちな逃避で笑ってしまうのですが、私は疲れが出てくると「田舎に住みた～い」と思ったりしてしまうのです。年に一回くらい。今住んでいる所だってとても都会とはいえませんが、やはり育ったところ、むやみと温かくてひたすら呑気な静岡を懐かしく思い出したり、まだ見ぬ海や山のさとをぼーっと思い描いたりします。この前もぼけ～とそんな風景を夢想していたのですが、そのときふと「でも田舎じゃみるいのと『読む会』できないなあ」と思いました。「あと『書く会』も難しいだろう…芝居もしづらいかもねえ…いやこれらはなんとかなるにしても(ネット上でやるとか、通信講座にするとか!!)、友達は会えない人が多くなるよねえ」。そう都会の良さって、たくさんの友達とすぐ会えることなんですね。すごく当たり前のことだけど、すっかり忘れていました。都会の良さ。私は東京や横浜に来て、ほんとうにたくさんの人と出会えたんです。いろいろ見れたし。空気は汚いし、物価高いし、ぎすぎすしてるし、怒りたくなることも多いけれど、まだしばらくは都会の近くにいよう。好きな人の近くにいたいな…という気持ちが「街」をうんだのだとしたら、街もそんなにわるくないですね。少しは自立しろよ私、と思わないでもないけど…。

December 9, 2005

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同窓会というもの

先月電話で住所確認やら打診やらがあったけれど、正式に同窓会の通知が来ました。お正月に開催とか。参加不参加は別として、文面を読んでいるだけで想像力が暴風雨のようになって、疲れます…。あの人は今こうかな、この人は現在こうだよね、あの人とこの人の会話はこれだよなー。妄想の巨大颱風が吹き荒れる夜。なーんか、とほほな性分ですね。セリフまでいちいち考えるあたりとか。私は好奇心で出来ているので、すごく面倒ではあるけど(交通費もばかになりません…)たぶん行ってしまう気がします。一次会くらいまで。しかし暴風雨は明るい雨ばかり降らせず、きっちり暗い予測もしているわけで「行っていやな気持ちになるかもなあ」とも思います。なんかこの年代って、一番なまなましい感じもしますよね。学歴や、就職や、結婚や、出産、まだいろいろなことに繊細な年齢な気もします。むつかしそう。私は個人的に好きな先生には会いに行っているし、ふるい友達にもたまにメールしたり電話したりする。それで十分だし、かなり幸福という気持ちも強いのです。あえて同窓会にいかなくてもね。きちっとしたものが昔から苦手な性分でもあるし…うーむ。私はわりと即断即決できるタイプなんですけど。こんなに人を悩ませるとは…同窓会恐るべしです。

December 7, 2005

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びょうきのいみ

友人達からも「強いのか弱いのかまったくわからん…」と言われる私の身体。「確かによく風邪は引くけど、根性ですぐに現場復帰してる感じはするし、だけど寝込むと信じられないくらい長かいこともあり、しかし普段は連日のオーバーワークでもにこにこしてるし…???」。私もよく分からないけど、要するにかなりマイペースな身体なのではないかと。わがまま?? はい、たぶん…。それはともかく肺炎をこじらせたこの冬、私は10/14の発病からずっと発熱、鼻水、頭痛、咳、のどの痛み、倦怠感、などにしつこく悩まされ続けてきました。現在もまだ鼻づまり。で、しみじみ思ったのですが、「病気って、それがどんなものであれ次のステップに行くためにかかるんだな」と。はじめはとにかく辛くて、あちこち痛くて、また仕事上多くの方に迷惑を掛けるのが死ぬほどつらくて、心の方がダメになるかと思ったのです。が、こういうせっぱ詰まった状態になると思いがけない人が助けてくれたり、いつもは気づかないことに気づいたり、しっかり夢を見て眠ったり出来る。読まなくてはいけない本(仕事でということではなく)もまとめて読めました。なんだか病んだ身体を使って、心を整理しているような感じでした。びょうきのいみ。ただ嫌うだけでなく、病気さんの意図についても考えてみたいです。もしかしたら、「病気」という名前そのものが、間違っているのかもしれませんよね。いつごろ日本語として定着したのかなあ。最近「病院」と言う言葉も「近いけどちょっと違うにゃ」という感じがしています。

December 6, 2005

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ヨココレのこと

数日前に決定したのですが、すごく愛着をもって進めていたお仕事、ヨコハマ・リーディング・コレクションの実務から外れることになりました。プロデューサーの一人としてがんばろうと思っていたものの、内部で方向性の違いが明らかになり、話し合って私がやめることにしようと。みんなすごくいい人で「野宮がやめなくてもいい。逆に自分がやめるよ」とまで言ってくれたのですが、私はもともとプロデューサーになりたかったわけでなく根っから「書いて幸せ」な人。この企画自体はとても愛しているから、プロデューサーをやりたかった人(達)にこの子を託して、大きく育ててもらおう思ったのでした。考えてみれば名付け親も私だし(「ヨココレ」と親しんでくださいね)、企画もかなり面白いところまで煮詰めることが出来たと思います。そこまで関われたのは誇りです。どうかいい形で実現して欲しい。そして毎回新鮮な形で継続していって欲しい。来年2月から横浜・相鉄本多劇場で、今までなかった朗読劇のシリーズ上演がはじまります。詳細を書けないのがもどかしい…どうしても抽象的な書き方になってしまいますが「古典と現代的な演出の出会い」「埋もれていた、斬新なテキストの紹介」「新進作家、演出家の発掘」などなどが実現するかもなのです。すごく可能性のある子です。しばらくはよちよちだし、やんちゃもするかもしれないけど、どうかかわいがってあげて下さい!!

November 20, 2005

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制作という素敵なお仕事

今朝、すごく嬉しいお電話を頂きました。「うちの劇団今日から公演なんですけど、折り込んでいいですよ。1000枚はいけますよ」「晶子」のチラシがまだたくさんあることを、心配してくれたんです。結局すぐに折り込みをお願いできる人が見つからないのでお断りしましたが、お気持ちはすごくありがたかったです(そのあと「今日無理なら公演期間いつでも来ていいですよ」とまでメールが…感涙)。このご恩忘れません…とつぶやきつつ、もう待ったなしの台本書き、演劇大学@横浜の準備、さまざまにたまった雑用など。＊－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－しかし今回の芝居「晶子」、制作さんが調子を崩されてしまったので、けっこう大変です(でもその方を怒っているんじゃないんです。ゆっくり休んで欲しい。必要なだけ時間をかけて、回復して下さいね。私もよく寝込むから、本人が一番「申し訳ない」という気持ちでひりひりしているのは分かるのだ)。主宰であるさつきさんは稽古があるし、演出家さんも稽古の合間に日本中を飛び回っている多忙な方、野宮も台本書きをはじめいくつかの企画を同時進行しているので、チラシを挟みに行く時間がとれない…。私はかねてから制作の仕事ってわりと楽しいし、クリエイティヴなんだよなあ…と思っていて、制作の仕事には「制作さん」以外も関わった方がいいなーと感じている。演劇関係者はもちろん、他分野の人も巻き込みつつ、芝居のこと勉強したいなあと思っている学生さんや演劇ファンもまじえつつ、ゆるやかなつながりの制作集団みたいなものを作れないかと思っているのだけど(それにはもちろん私も入る)。そして今回のような場合も含めて、みんなでお互い様に助け合えるグループにでるといいなーと思っている。あちこちで改善はされてるけど、制作さんって一昔前のお母さんのような高度な「複雑職」。仕事して、家族に尽くして、自分のことなんて顧みる間もなく睡眠三時間。スポンサーに頭さげて、助成金集めて、劇団員励まして、DM発送して、チラシ配って、ケンカの仲裁して、山盛りの雑用して、バイトして、睡眠二時間。あ、お母さんより大変かも。公演が近づくと過労死一歩手前があたりまえ、という無茶苦茶な仕事だ。なんかおかしい。もっと制作の仕事自体を魅力的にできると思う。結局、ソフトに関わる人達や遠巻きに見ていた人達がもっと制作をした方がいいんじゃないかなあ。私は職人的な分担というのは大事だとは思うけど(照明さんは照明にだけ責任を持つとか)、例えば「どんな封筒を作るのか」は作家とか演出とかキャスト、あるいは照明さんが口を出した方がいいような気がする。チラシにしてもみんなで考える。そしてみんなで効率のいい配布の仕方を考える(自分達が作ったのが余っていたら辛いものね)。結局封筒もチラシもメインで働くのは美術さんでそれ以外の人は形にならない「ブレーン」かもしれないけど、多くの人が創作に関わることがすごく必要だと思う。そして制作の「仕事」の部分と「労働」の部分の線引きをきちんとして、労働部についても弱い誰かに押しつけるのでなく、分担し、あるいは労働のメリット(若い劇団員の教育的に意義があるとか、一緒にいて仲良しになれるとか、その間別のうち合わせが出来るとか、ダイエットになるとか)を明確にして、それを活用できないかな。もちろんソフト(コンテンツ)を作る人達はそのことで死ぬ思いをするわけで、だから役割分担や時間配分(作家は台本書き上げるまではうろちょろしないとか)などは必要だけど。そしてなにより経済的問題、ギャラをどうするかという問題もあるけど。ただ今みたいなあまりにも幸福感から遠い制作業が「演劇」のベースにあったら、人々が芝居ばなれするのも「当然だよな」と思う。なんとなくそういう無理は伝わるものなのだ。そんな妄想を抱きつつ、プランを練りつつ、とりあえず今回どうするかなあと考えてます(別に私の責任でもないんだけど、この公演にかけているさつきさんの気持ちには台本以外でも出来るだけ応えたい)。「世にも不幸せな物語」の「いつでも、何か手はある」が最近の座右の銘。※ちなみに「戯曲を書く会」は車の移動時間、紙をはこんだり、印刷機を見守っている「労働」時間はうち合わせに使っています。あとはお茶を飲んでグチを言うひととき。まあ主催と制作が同じだからできることではありますが。しかし「書く会」も実働部隊がぷれっちょと2人じゃきついなあ、助っ人欲しいにゃあとは話しているのです。

November 19, 2005

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難しいこと??

昨夜「今回の芝居、途中からでもいいので手伝わせてください」と以前から言ってくれていた人からメールがありました。「考えてみたら野宮さんの作るものはいいときもあるけど、そうでない時もありますよね。今回の舞台、面白いなら手伝います。だけどそうじゃないなら、やりません。演出家も女優さんも知らない人だし、内容を知らないと不安なのでとりあえず稽古を見せてください」すごく丁寧に「だったら手伝わなくていいっす」と返信しました。人手不足の折り、チラシ撒きを手伝ってもらえるのはかなり助かるなあ…と思っていました。けど、まだ固まっていない稽古の途中で面白いもつまらないもないし(真剣に、それこそ身を削っているキャストとスタッフの前で判定するわけですか??)、私の関係者が現場でそんなことを言いだしたら、私の立つ瀬だってありません。第一こちらからお願いしたわけでもないし。これが芝居関係者でなければ別の対応をしたかもしれないけど、もう何回も公演をしている人がこんなことをメールしてくるんだもの…。朝になって「失言でした、すみません」と言われたので、もう怒ってはいないけど、やっぱり後々不安なので今回はお引き取り頂くことにしました。＊－－－－－－－－－－－－「面白いならやります」「尊敬できる人となら組みます」というセリフは時と場合によっては、すごく傲慢に聞こえます。確かに私も共同主催は、尊敬できない人とはしません。本当にその人の仕事が好きとか、志が同じとか、心根が美しいとか、仕事が有能とか、なんでもいいからある一点の尊敬、「惚れ」た所がないときついと思います。だけど仕事で関わるすべての人を心底尊敬しているか、と言われたらそれはそうじゃないことも多々あり、でもいつも『今は未熟な俺達だけど、固まってないからこそいっしょにいたら何か新しいものができるかもしれない。その未知数なところが言いようもなく素敵だし、折角だから力を合わせてがんばろう』とどこかで真剣に思っているので、私は「尊敬できる人としか組まない」とは言わないのだと思うのです(尊敬できない人とご一緒するのはかなり苦痛の時もあるけど、でも考えてみればお互い様だし。簡単に言えば、類友。尊敬できない人が多いのは自分の未熟の証明でもあると思います。第一他人を尊敬できる出来ないって言うのって、文脈によっては冗談すれすれに失礼だし)。未熟な物同士が、高めあうことって難しいことかな。でも実際、この世界には「それしか」ないのだけれどな。そこを楽しめるようになりたいなあ…。今回のメールは自分の中の指針をはっきりさせるのにとても役立ちました。そういう意味では、とても感謝。また「手伝いたい」と言ってくれた、その時の気持ち自体は今もとても有り難かったと思っています♪　ありがとう、またね。

November 17, 2005

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風邪の装い

昔田辺聖子さんがエッセイで書かれていた(最近田辺さんのことを言っても『誰??』なんて真顔で言われるけど、田辺さんははずれの少ない希有な大作家なのですよ)。「かなりおしゃれな女の人も、夏はなりふりかまっていられなくなる」と。でも、野宮は最近思う。人は風邪をひくと、夏よりなりふり構えない。私は綺麗な女の人が好きなので、基本的におしゃれでない女性を見ると「惜しい!! あーしてこーしてこーすればどうよ!! あ、そのあたりこーしてあーしてみればかなり違うのに…」と脳内おせっかい大会を繰り広げている暇人だ。だから自分についてもある程度はきちんとしてたいなーと思う性質。だけど、このごろの私ときたらあんた…。散髪に行ってないからぼさぼさの頭、首には安い毛糸で編んだ毛皮っぽいマフラー(ぽい、の時点ですでにいろいろなものを諦めている)、プチバドウの長袖シャツの上にユニクロのフリース、シマロンのパンツの上にユニクロのライトエアテックの長ズボン。そして外出する時はよれよれで汚れた白いダウンを羽織って、顔にはマスク。マスクの下はもちろんすっぴん。その格好でバス停に立ち、「あ、外に出るときは水仕事しないからハンドクリーム塗ろう」とか言って、時刻表の前で手をこすり会わせたりしている…。通りすがりの犬でさえ「なんか可哀想…」と振り向くほどのくたくた感。おしゃれの残り火、プチバドウやシマロンが一切見えていない所もいっそう虚しく悲しい…。というわけで風邪をひくと、こういう面でもかなり凹みます。病気であろうと、冬であろうと、本当はいろいろおしゃれの工夫はできるのだけど、工夫する気力が出ないあたりも、どうしようもなく辛い。くーー。こんな目にあわないためにも、予防医療を強くオススメする野宮です。職場では加湿器を出して、足をあっためて、無理しない。早く家に帰って、早く寝る。だめだめちゃんでもいい。風邪ひいちゃって休んだらだめだめ以下です。皆さんご無事で～。(あ、風邪の時用に重ね着のかわいいコーディネートをいつも準備しておくという手はあるな…だけど元気な時はとてもそんなことをしようなんて思わないのですよねえ)

November 16, 2005

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私のお姉ちゃん

義理の姉とたまに絵を描きに行きます。姉は某美大油絵科卒で、路上で描いていると人だかりがもわもわ出来るくらい上手い。一方私はすごい下手で、言葉につまった人達から「ぷりみてぃぶ」とよく言われますが今はそれは置いておきましょう。姉の肩越しにいろいろな声がします。「うちのサークルに入りません?? いや御礼するんで指導してください」「あなた、私のギャラリーで展示してよ。いいよ、それ」「大きいのを描いて、売ってちょうだい」感動したがゆえなんでしょうけどかなり強引に「ネットで作品を公開すべき」って言われたり、勝手にデジカメで写真とられたり。こういう時あんまり謙遜するのも変だし、怒っても仕方ないし、応対が難しいなあ…と思うのですが、彼女は毎回にこにこして一言「ありがとうございます～。でもあたし努力が嫌いなんです」うーん、努力が嫌いじゃあギャラリーやネット用に何枚も描きたくないよな、きちんと一枚を完成させて売りたくもないだろう、講師なんて論外だ…みんなすごく納得して帰っていきます。すごい、姉。別に嘘をついているわけでなく本心な所も、作品を書くとき下らない努力ばかりする私から見ると雲の上の人。格好いいですお姉ちゃん。そんな姉に「じゃあ何が好きなの」と聞くと即答「食べること!!」。「そろそろランチタイム終わるから洋食食べに行こう!! あそこのピラフ食べてると天国にいるような気分よ。あとハンバーグのきのこソースが最近変わったからそれも試さないとだし、スープの野菜が大粒で(続く続く)」。絵の具箱を片づけつつ、この人と知り合えて良かった…としみじみ思うわけです。

November 8, 2005

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ご存知ですか??

冥きより冥き道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月　和泉式部調べ物をしていて、上記の和歌に出会ったのですが「とてもいい歌だ」と思ったものの、知識がなくて正確な解釈が分かりません。ご存知の方、教えて下さい。「はるかに照らせ山の端の月」は播磨の性空上人よ、導師となって真如の世界へ導いてくださいという意味があるそうなのですが(この和歌はもともと仏道に縁を結ぶために詠まれたものとのこと)、「冥きより冥き道にぞ入りぬべき」がよく分からないのです。情報お待ちしています!品詞分解から逃げ回ったことをはげしく後悔している野宮でした。

August 8, 2005

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きちんとまとまらないのですが…

先月末ですが、大事な人がしばらく入院することになりました。そのことで、このところちょっとくよくよしていました。そんなにひどくなる前にもっとあれこれ対処出来たのではないかとか、私が病気をひどくしてしまったのではないかとか。でも今は、早くよくなりますように、そして私は自分の仕事をきちんとしようとつよく思っています。今わりと健康な私が言うと気に障る人もいるかもしれないけれど、病気というのは次のステージに行くための必要不可欠な段階だと思うことが多いです。小さな時からよく寝込んでいました。左足の骨が奇形で、歩行するたび痛んで悩んでたこともあったんです。だけどそのたび「むむ…これは辛い。だけど病気のあとにはもとの場所には戻らない気がする」ってなんとなく思っていた。そしていつもしっかり苦しんだあとは次の景色がひょっこり顔を出していた気がします。時間がかかっても待ってるからね。しんぱいしないで、ゆっくり休んで、あまえてね。たぶんこれを読むことは出来ないと思うけど、書いておこうと思いました。

August 6, 2005

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自分を知る、そしてお詫び

今日とある芝居のプロデューサーさん(ふだんは文筆家)とお話していたら、「プロデューサーしていると自分の原稿があっても、あーあの人と連絡しなきゃ、あの宣伝どうしよう、あの人に一言伝えないと…とえんえん考えてしまって集中できないのよね…。今日もこれから2本書かないといけないんだけど…」とおっしゃっていました。電話なのに大きく肯いてしまった。今回の公演で分かったけど、私もおんなじタイプなので。集中力のなさを実感する日々でした。ふつうは戯曲とかエッセイとか文章を書き出すと、ほぼ何も聞こえなくなるくらい集中できるのですが、そして書くのもわりと早い方なのですが、自分が主宰の公演をしているとなんかいろいろ考えてしまうのですよね。…そうでなければいけないし、だけど原稿を書くときは忸怩たるものがありるし…。そんなこんなでメルマガとかあれこれ遅配が続いてごめんなさい。

July 18, 2005

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sunaokuwaharaについて

友達から「おとといからsunaokuwaharaの秋冬が店頭に出ましたよ～」という悪魔のようなメールが届く。「買いに行くならいっしょにいってあげるよ」。入荷したのは私だって知ってますって…。新作のリストも見てますって。今期のどことなく退廃的で細部が偏執的に凝ってる感じ、ものすごく好きですって。だけど自分が主宰のお芝居したあとで何万円もするスカート買えるわけないじゃん…(芝居にお金使ったことは後悔なんてしてないけど。そして主宰といっても共同主宰だし、みんなに出資してもらったような形にはなってるけど…)。私は確かにI.S.時代から桑原直さんの作るものが大好き。でもほとんど買っていないのです。貧しくて。何年もバイトに行く交通費にも事欠く生活してたから、洋服に割くお金なんてめったになくて。正価で買ったのなんてI.S.時代のアオザイ風ワンピース1着くらいですね。エセメルヘンな感じがたまらなくて(一見優等生的にかわいいんだけど、よく見ると細部が底なしに暗くてパンクな服)渋谷の東急東横店でつい転びました。でもそれだって本当に迷ったなあ。要するにいつも見ているだけの、セールの時たまに接触する片思いブランドなのです。だから私は「たのむから知り合いの人a-netに入社してください」と言い続けてますね。関係者セールにもぐりこむためだけに(笑)。気持ちにあった好きな服や着物を着ているときって、ほんとうに幸せです。そんなことは滅多にないけど。服って人体のみならず心まで現実より少し高い所に引き上げてくれる魔法があるので、自分とシンクロする素材や色やシェイプと出会うと自身もそれを見ている人もとても幸せになれる。昔(ほんとに昔だなあ)プリンセス・プリンセスが「ダイアモンド」という曲の中で「好きな服を着てるだけ　悪いことしてないよ」と歌っていたけど、私は歌詞のここの部分だけすごく好きでした。印象深い。どうでもいいと思っている服をどうでもいい感じに着るのは、洋服を作るすべての人に申し訳ないと思うのです。それだけは気をつけたいといつも思う。そんな風にわりと洋服とか着物への愛は深いわりに、なんか毎日似たような服ばっかりの自分ってほんとどうかと思うんだけど…。

July 17, 2005

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恋ににたもの

終わりました…アトリエ公演。7/9にお陰様で無事終了。そのあと朝まで打ち上げ、朝日を眺めつつ帰宅して睡眠。そしてたまった急を要する仕事をして、少し眠って今に至る…という感じです。公演に協力してくださった方々、見に来てくださった方々、ほんとうにありがとうございました。それにしても楽しい公演でした。しかし舞台がはじまると日記がつけられなくなるのは毎度のことで…。このブログをちょこちょこ見に来てくださった方々、ほんとうにすみませんでした。いつも「日常のことが書けないのはともかく、せめて稽古場日誌をつけよう」と思うのですが、今回もやはり出来ず。毎日の高円寺と横浜の往復は思いのほか大変で、睡眠が毎日四時間以内になっていたこと。あと正直に言ってやはり精神的に追いつめられるんですね…。夢中になってしまうというか。もう芝居のことしか考えられない状態に陥っていました。今回の台本は、私にしては珍しく(たぶん人生で一度きりでしょう)真っ正面から「恋」について語ってしまったのですが、打ち上げの時素敵な俳優さんから「芝居ってきついし、面倒だし、辛いし、もう二度とするものかと思うけど、だけどやりだすと楽しくて楽しくて…恋とおんなじなんだよね」という言葉をもらいました(彼にはその他「下手を克服する努力も必要だけど、演技も脚本も得意を発展させるほうがいい」とも言われ、なんだか納得…)。ひとつの恋が終わって、日記の書ける日常にもどろうと思います。8月には展示やリーディング公演、9月にも芝居がありますが、その時また日記が滞りだしたら「またか野宮…」と笑ってください。これからしばらくは過去日記の書き込めるところを埋めたり、公演の感想を書いていきたいと思います。なにせはじめて自分に科白があったんですよ…ほんとうに緊張し、勉強になった。書きたいことがいっぱいあります。それでは近い時間に、また。

July 11, 2005

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お疲れさま

オフコースに「さよなら」という曲があったけど、私は「さよなら」という言葉がわりと好きでない…ということに気づいたのは大学の時でした(ちなみにその曲自体はわりと好きだったのです。でも歌詞カードを見るまで「明日は確かに君だけ」だと思っていたなあ。ほんとは「愛したのは確かに君だけ」なんだけど、それを知ったときは少しがっくりきました。明日はお互いひとりきりという潔いかなしみが好きだったのに…。ちなみにこのバンドのベスト1は後期の「昨日見た夢」だと野宮は思います)。気づいたきっかけは…一期生の時偶然入ったサークルで親睦会みたいなものがあり(喫茶店でしゃべるだけ)その帰りの別れ際「じゃ、お疲れさま」とみんなが言うのに涙が出そうになったこと。「あ、いいですね。お疲れさまって」「へ!? どこが?!」「『さよなら』じゃないから。ここで切れちゃう感じがしないし」「って言うか、まあ普通はこう言わない?? それにまた会うに決まってるじゃん。学部一緒なんだし」と先輩に笑われたけど、私は感動して「お疲れさまかあ…私も使えるようになろう」と決意したのでした。今もそうだけど、私は日常的に「この人と次に会えるかは分からないんだ」と頻繁に思う性質です。要するに自分がいつ死ぬか分からないと思っているからなんだけど、そういう人にとって別れ際というのはどんな時もいつもかなり辛い。単純に喫茶店でおしゃべりして駅の改札で「またね」と言うときだって、私は奥歯を噛みしめていたりする。そこに「さよなら」と言われるとなんだかもうお酒でも飲まないとやりきれないような、寂しさがこみ上げてくるのだ。だけど「お疲れさま」。いいな～。この言葉には相手をねぎらう気持ちがあるし、またどこかで会える気もする。二度と会えない人にはこのせりふは使わないから。「お疲れさま。また明日」次の瞬間私がこの世での活動を止めても、なんだかその人とは彼の地で会えそうな気がして素敵。芝居準備が佳境に入るとスタッフ同士のメールのやりとりにも疲れ果て、タイトルも芸なく「○○の件」とか「お疲れさま」ばかりになる。メールにわりとこだわりのある私は「Re:」というタイトルが来るだけで凹む迷惑な繊細さんなのだが(凹むのはたまにですし、基本的にビジネスメールは事務的に読んでいますので無理してタイトル作らないでいいですけど(笑))、でも「お疲れさま」というタイトルは何度来ても平気です。というよりなんだか嬉しい。たぶん大学の時の感動があるからだと思うのです。自分がメールする時もこのタイトルはつい多用してしまう。というわけで公演まであと数日。これからも「お疲れさま」タイトルのメールを打ちまくります。がんばろう!!ちなみに「さよなら」は、人生の中で数回使えばいいと思う。どういう時に使うかは、分かってはいるけどここでは書きません。それに、たぶん、これについては誰もが知っていることだし。

July 3, 2005

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スイッチ

先日のこと。朝自宅で仕事して、昼着くように高円寺まで行って、稽古が終わって、打ち合わせをして、そうしたらもう23時でした。これら終電で帰るんだ…。そう思いつつ稽古場から駅まで歩いていた時、私に不思議なスイッチが入ったのです。私は突然独り言をつぶやきはじめました。夜道を歩く女が暗い声でぼそぼそ呟いています…。「偉い、偉いよあんた。朝二人分の食事つくってさ、犬のエサもあげてさ、そうじして洗濯して、すぐに仕事はじめて、仕事しつつも親や親戚の電話とか宅急便とか(うちは事務所なので宅急便とかバイク便が多い)ご近所や町内会の対応もしてさ、化粧もしてさ、稽古場にも大体遅れないで行くしさ、役者でもないのになぜか柔軟してるし意味はないけどバレエもしてるし、性格暗い物書きのくせに稽古場ではわりと明るい風にしてるし、なにより挨拶してるし……台本の直しも『面白くなるなら』って前向きだし、風邪ひいて熱があっても風邪って言わないでここまできたし(メールで関係者1人に告白はしたけど)、人の悪口もそんなに言わないし、むしろ周辺の人をかなり好きになってるし、うちに帰ればまた食事の心配してるし、犬君の相手もするし、なんかすごくない?? すごいすごい。こうして電車にもきちんと乗るし、乗り間違えたりしないし、切符も買えるし、自動改札も通れるし、エスカレーターとエレベーターの違いも分かるし…(以下えんえんと)」ほんとうに疲れると、人は自助装置というか、護身心理術というか、そんななにかが作動するですね。その設備がついていてよかったなあと思った瞬間でした。わりといつもは自分にダメばかり出す性質なので、こういうことって大事かもしれません。疲れたり暗くなったら小さな事でも自分をほめる、もしよければ(まあ一見かなりくだらないけど)やってみて下さい。あと最近気づいたのですが、姿勢を良くしていると人間暗い気持ちになりにくいものですね。はったりでもいいから姿勢を良くしていると、いろいろなことが前向きに転がっていくような気がします。根暗で、後ろ向きで、いろいろなことを疑ってかかっている私ですが、たまにはこんなことも気づいたりするのでした。

June 24, 2005

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聖母(マドンナ)たちのララバイ殺人事件

テレビはドラマもドリフも禁止、夜十時には必ず就寝という家庭に育ちました(母の機嫌がいい時はたまにNHK『銀河テレビ小説』は見せて貰えました。井上ひさしさんの「四捨五入殺人事件」楽しかったなあ。あとこれも特例で早坂暁『花へんろ』は見せてもらえた。名作なので大和書房さんはシナリオを復刊してほしいです)。だから、テレビドラマというと、階段の手すりの影からからのぞき見したり、布団の中にも聞こえてくるテレビの音で勝手に画面を妄想した記憶ばかりで、あまり正確な画面の記憶がありません。で、聖母たちのララバイ。火サスのテーマ曲ですね。2時間ドラマなんて絶対見せて貰えなかったから、こっそり覗いたり音楽だけ聴いていました。普通のドラマだとテーマ曲なんて覚えていないのですが、この歌はとにかく好きで、歌詞を聴き取ってはいっしょうけんめい書き出した覚えがあります(うちは歌番組禁止な上「明星」とかも一切買って貰えなかったから、流行歌は流れてくるのを耳にしては全部書き出していたのですよ～とほほ。チェッカーズも書き出した覚えあり…かなしい思い出だ)。今聞いてもそうですが、不思議なインパクトがあります。唯一無二な感じの歌。すごく力強いと同時に、情緒的な曲なんですけど、ヒロインの女性の意志にまよいがなく日本独特の湿度をあまり感じさせない歌詞です。きょうだいと遊ぶ時は、よくカーテンを暗幕に見立ててお芝居ごっこをしていたのですが、とにかくこの歌をよく歌っていました。ベースのストーリーは好きだった江戸川乱歩、それを独自にアレンジして2時間ドラマ風に仕立てていくのです。20面相ものではなく、ちょっと大人風のを中心にチョイスしていました。時間忘れる楽しさでした。だから、たまにこの曲が流れてくると、カーテンにくるまって「どんなお話にしよう…」とわくわくしていた頃を思い出します。乱歩が基盤だから、考えてみると実際に放映されていたのより子供の頭の中の方がよっぽどエログロ(笑)でしたけどね…。「聖母たちのララバイ殺人事件」作れるといいなあ??　シナリオなら書きます。正真正銘構想20年。面白いと思うのですが、いかがでしょう。(江戸川乱歩全集ポプラ社版はのちに京大に行った秀才Nちゃんの影響で当時ほぼ暗記していました。Nちゃんはなぜか私が全巻暗記しているかテストしてくれてたからなあ…Nちゃん、賢い子だったなあ)

June 9, 2005

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ガラスの白鳥

高校生の時、化学部に在籍していました。この部に入って、まず覚えることはガスバーナーを使ってのガラス加工です。どんな実験器具も自分で作れるように、細いガラスを熱して、吹いて、折り曲げて…それをマスターしなければいけないのでした。大人びたきれいな先輩達が一つ一つ丁寧に教えてくれました(どうでもいいけどこの部活は美女が多かったなあ…地方の県立特有の女子が極端に少ない高校だったのですが)。一番はじめの課題は白鳥。胴体をふっくらさせ、首を細くして優美に折り曲げるのはなかなか熟練のワザが必要です。これさえ出来れば器具のほとんどは作れるという、最初のわりにはなかなか高いハードルでした。私は、15歳の春に、山のてっぺんの木造校舎でガラス棒を吹きまくる女の子だったわけです。はじめのうちは白鳥を作ろうとしたとはとても思えない、謎の生物を量産していました。だんだんそれがキウイ?? とかダチョウ?? とか鳥類のみ産出できるようになり、やがて好意的細目かつ遠目で見れば白鳥かな…というものが出来るようになります。まあまあのスワンたちは、集めておき文化祭で景品として配ることになっていました。夏になるころにはかなりの野宮スワンも誕生して、それぞれに表情を持ちきらきらとダンボールの中でばたついていました。ある日、ぼろぼろの校舎の改築があるので部室のものを分散して、部員達がそれぞれ一時的に預かることになるなりました。「○ちゃん○くんは貴重書庫の本、○さんは白衣、○くんは標本関係、他は学校の倉庫に入るから。あ、野宮は…白鳥ね、ダンボールの全部」「えーー(先輩にたてついてはいけない校風)ど、どうやってはこぶんですか??」「んーー、案外丈夫だからくるまないで、ほらそこのクーラーボックスにいれて、うちまで持ってって」「…(先輩にたてついてはいけない校風)…はい」確かに家は比較的近くだけど(でも歩いて30分はかかる)、なぜ私だけ巨大クーラーボックスにガラスの白鳥を大量に入れてそろそろ歩くはめになったのか。これは多分調子に乗って謎の生物をつくりまくったからだろうな…と反省しつつ、釣り好きの先生から冗談のような巨大クーラーボックスをかりるとガラスの白鳥達をつめて山をとぼとぼ下りました。夕陽で出来た影は、私が箱を持っているのか、箱が私を抱えているのかさえ謎のなんともまぬけなもの。この学校は辞書類も毎日持ち帰りという校則だったので(そんなことをしていたのは私だけだったと後年判明するが…)学生鞄も重くて百メートル歩いただけでもへとへとです。でも身体が揺れて割れたりしたら、大変。私のだけでなく、たくさんの人の白鳥だし。あえて信号をさけ、田舎道を静かに静かにすり足すり足。箱の中にはたくさんの白鳥型のガラス。絶対変形しない、するのは壊れるときだけの美しい生物達がかたこと。絶対まじりあわない孤独な鳥さん達。その時ふと、あーそーかー、この白鳥みたいに人と人はずーっと解け合うことは出来ないのだな。意志がほんとうに届くこともないのだな。肉体に隔てられているとはこういうことか。と思ったのです。ここで大きくジャンプ一回したら白鳥が全部割れて、ガラス片がとけあって、なんだかとても楽しいかも…でもそういうことも、生きている人間には起こり得ないんだな。とても爽やかに、そう思ったのです。しゃべっている人達を見ていて、ふとガラスの白鳥どうしが、こつこつぶつかりあっている絵が思い浮かぶのはそのせいだと思います。ほんの少しずつ表情の違うスワンが数羽、分かりたくて分かってほしくて、でもお互いを割らないようにこつこつこつこつ、つつき合っている姿。バーナーがあれば溶かしてくっつけてあげるんだけど、この世にそんなバーナーはなくて。

June 6, 2005

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いつもの顔

人は鏡を覗くとき「自分の一番いい顔」を見るそうです。確かに。鏡にむかって、めちゃめちゃにだらけた顔ってあんまりしないものですよね。人前ではしちゃうけど。人は自分の「いつもの顔」をほとんど知らないものなのかもしれません。普段の私の顔を一番知っていると思われる同居人に言わせると、平素の、うちにいる時の私はけっこうヤな顔をしまくっているらしいです。私は考え事をし出すと所構わず自分の世界にモグリこむ性質で、同居人と食事していても突然黙り込んだり(ごめ～ん)、生返事を繰り返したり(悪いねっ!!)、なんかよく分からないことをつぶやいているそうで(不気味っす!!)。そんな時の顔は「なんともいえず怖い、そのくせかなりマヌケ」なものらしい。その上、考えこみ出すと長い。つまり不気味な顔と所業が小一時間続いたりするわけです。彼も、ある意味災難です。自分で選んだ道とはいえ、かわいそうに…。でも、ま、私は見ないからいいや(笑)などと思っていました。しかし最近お会いしたメイクさんに言わせると「普段の顔をきちんと出来ない人に、よそいきの顔は絶対きまらない」のだとか。たしかに普段だらしなく暮らしている人が、突然きちんとした場で美しい所作が出来るとは思えない。顔も同じなんですね。いつも顔がだらしない人は、顔の筋肉が「だらしない状態」で固定されてしまう、そしてそれは一朝一夕には戻らないらしいのです。こわいなあ。やはりいいのはテレビや映画の女優さんの微笑みを、とにかく真似ること。さりげない微笑みですが、彼女達のそれはきちんと計算、訓練されているそうなのです。というわけで、アドバイスを伺ってからというもの筋肉を鍛えるためにも家の中でお茶を飲みつつ「松嶋菜々子」風笑顔をつくったり、飴をなめては「チェ・ジウ」の真似などをしていたのです。が、テレビを見ているとついつい「死にそうなヒラリー・スワンク」とか「チキンラーメンCFの仲間由紀恵」の真似までしちゃうのですね。さっきは「ガンにおののきつつも不安をこらえて娘に微笑む長塚京三」とか…。結局へんな筋肉をつけまくっているこのごろです。

May 26, 2005

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全国主宰者の会の主宰

私はフリーでどこの劇団にも属していません。でも劇作家というのは劇団主宰をしている人が多く、そしてその苦労はほんとうにもう並大抵でなく「オレ前世で何かしたのかなあ…」というメールを深夜一行だけ打ってしまったりするほど辛い時もあるようです。好きでやっているとはいえ、なーんにもないところから舞台空間の設計図である台本をひねり出す作業に加え、金銭問題、人間関係、健康問題がややこしく絡まってきますからね。貧しいからお米が買えず、お米を食べられないから気持ちもすさみ、すさんだ心で言い合いがはじまり(劇団員との対立だけでなく彼氏彼女家族も敵になることがある)、孤立して気持ちが余計落ち込んでバイトも出来なくなる。じゃあ家でワープロを打ってりゃいいと思うが、電気をとめられててワープロのスイッチが入らない。劇団なんて常時人手不足だから、台本が出来たとしてもすぐに演出をしなきゃいけなかったり(書きつつ演出というのもよくある話)、チラシ撒きDM発送やチケット販売等の制作作業が入ってきたり…。冗談ではなく全部実話です。以上は私ですらかなり経験があります。「稽古から初日までに全身の穴という穴から血が出た」「疲労骨折に二月まるまる気がつかなかった」「栄養失調になり『難民並』と診断された」「ヤクルト目当てで献血に行ったら、顔を見ただけで断られた」「バイトに行こうとしたら電車賃が無く、歩いていったら遅刻して、その遅刻を理由にクビを言い渡された。不当解雇だがでも抗議する体力が無かった」「ストレスで耳が聞こえなくなった」「まだらにはげた」「後戻りできない深刻な病気に…」「疲労のあまり交番前の一通を逆走して捕まった」これらは私は経験していませんが、身近な主宰さん達が実際に経験しています。創作活動、というより、人が集まって何かするというのはかくも大変なのですね。先月から「戯曲を読む会」というのに関わっていて、私も主宰者のかたわれなのですが、とにかくいろいろな人がいろいろな希望を持っていらっしゃる…ということに疲れたこともありました。みんなに有意義な時間にしたいなあ…と欲張りすぎてしまって。自分の器量以上のことをしなければいけない気もしてしまって。非常にぬるいレベルではあるものの、遅ればせながらしみじみと「主宰の苦労」を体験しました。単純に電話やメールの数も増えるしね～(頂くとめちゃめちゃ嬉しいんですけどね)。今は「試行錯誤しつつじりじり前進していこう。失敗も不手際も意見の相違もあって当たり前。謙虚で大胆に暗中模索してきゃいいや…」というえらそーなのかそうでないのかよく分からないスタンスで進んでいくことに決定したのでかなり気楽になったのですが、前回が終わってからはしばらくもんもんとし続けていたのです。で、冗談で「全国主宰者の会」を作って、たまに主宰者が集っては涙を流しあう気味の悪い空間を作ろうか…なんて言っていたのですが、これもその会の主宰が大変ですからねえ(笑)。実際に「社長の会」とかは、あるんでしょうね。どんな空気なんだろう…。それはともかく主宰は大変です。子沢山の親のごとく苦労します。でもどんなに辛いことが多くても主宰や親にしか味わえない蜜も多々あり、Mなわけではないけれども、哀れむ必要はまったくないのです(お手伝いしてくれる方は大歓迎ですが)。難しいけど、すごく楽しい。「読む会」が有意義な会になるよう、これからもちょこちょこ努力したいと思うこのごろです。

May 22, 2005

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爪をたてる

C・W・ニコルさんの本を読んだことがありません。自然派のひと、黒姫にいるひと(友だちの別荘のすぐ近くに住んでいらっしゃるらしいけど…)、なんだか穏やかそうな風貌のひと、椎名誠と仲良し??。そんな断片的な情報だけあって、でも著書を買おうとは思いませんでした。その風貌の何とも言えないあたたかさ、サンタさんのような「安定感」が、書くという業を背負い込んだ作家にはどうしても見えなかった、というのもあったと思います。人を見た目で判断しているなあ、野宮。今週号のヤンサンで、ニコルさんが子供時代は学校になじめずいじめられっ子だったこと、北極に憧れ、そこに行っては見たけれどその地で事故に遭い記憶喪失になったこと、しばらく記憶がもどらず自分が誰かも分からなくなり自殺未遂したことを知りました(銃口を口に含み引き金を引いたが、偶然が重なり弾が出なかった)。そしてイヌイットのシャーマンに助けられたとのこと。!!彼の作品を読んでみようと思いました。ミーハーな動機ではあるけど、こういう知識が何かをはじめるとっかかりになることってわりとあります。今までつかみ所がなかった彼の魂に、やっと爪を立てることが出来た感じ…。あとは読むだけです。あ、でも、彼って日本語で書いているのかなあ、英語かな。そのあたりは気になりますね。でもとにかく、手に入れてみます。彼のオススメの作品がありましたら、教えて頂けると嬉しいです。

May 20, 2005

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下らない反発(笑)

通っていた大学はわりと自由な校風でした。というか、ほおっておくと毎日文化祭をやりかねない、いや出来れば一生文化祭をしていたいタイプを集めたいような場所だったのです(伝統ある古い学校だけど、考えてみればよく大学として認可されていますな…)。だから、そこに集う人達の服装も派手だったり奇抜だったりが多くて、けっこう見飽きないものがありました。おしゃれしている人を見るのが大好きな私。自身は口紅もきちんとひけないようなお子様だったくせに、当初はいっぱしのファション評論家気取りでスクールバスの中で、きょろきょろしまくっていたのです。が、入学して一ヶ月、急に観察がいやになってしまいました。「この人達派手な服を着たいから着てるんじゃなくて、『おれって、私ってこんなに変わっているの』と言いたいがため着ているんじゃ…」と感じてしまったのです。「そう思う感性自体が陳腐なんだよなあ」なんて考えてしまったのです。「人と違う私」を主張するなんて、恥ずかしすぎる…と思ったのです。なんだか無性に反発したくなりました。派手で変わってる服なんて、つまらないよ。私はあえて派手でも変わってもいない服こそ、いいと思うね!!というわけで「極力フツーの格好」にこだわるようになってしまったのです(大バカです～)。ある意味つまらない格好。目立たない、そのまま公務員試験を受けに行けるような格好をつきつめることにしました。つきつめようもないのですが、まあ紺のスーツとか着てみました。そしてメイクは(以前も書きましたが)ばっちりして…。浮いてましたね。めちゃめちゃ老けて見えていたと思います。実際奇異に見えたらしく、「今日これからなんかあるの??」とよく聞かれたりしていました。それに飽きると今度はジーンズにシャツという普通きわまる大学生スタイルにしてみました。本人もつまらんなあ…と心底思っているのですが、なにか工夫するのも悔しい気がしていたのです。そんなわけで、思い出に残る服も数枚はあるものの、基本的に大学時代の服は「自意識過剰のあまり平凡すぎ」で記憶に残るものが多くありません。もしかたら人生で一番綺麗な時期だったかもしれないのに、劇アホですね。この事を思い出すと悔やんでも悔やみきれず、自分の愚かさ加減にくらくらしてしまいます。美大受験予備校に勤めだしてのびやかに服とのつきあう人を多く見たり、光野桃さんのエッセイに出会ったりして「くだらないこだわりなんてバカみたい、自分が着たい服を着よう…」と思うまでの時間は本当に無駄でした。自分の着たい服、落ち着く雰囲気にしよう。バリに旅行した時買った現地の布で巻きスカートを作り、アウトレットで買った白いぺなぺなのシャツに変形カーディガン、黒いしっかりしたサンダルという格好を見つけたときは本当に心の底からほっとしました。そっか、ずっとこんな格好がしたかったんだ…。なぜかかなりの率で東南アジア出身留学生と間違われるリスクはあるのですが、これを着ていると不思議と明るい気持ちで仕事が出来、人とも自然に話せるのでした。ただこのスタイルは夏だけしか通用せず、ここから「アジアっぽい冬服」を探す旅がはじまるのですがそれはまた別の物語です。話は戻りますが、他人に反発することはあっても、それを原動力にするとかなりの確率で人生を踏み誤ります。あー、なんか違う意見だなあ、よーし絶対ああはなるまい(結局否定したものとつきあいまくっている)。あー、なんか違う意見だけど、でもあの意見はあの人の人生の流れから生まれたもので仕方がなくて、私は私の流儀でしたいようにしようっと～(否定したものとは、さほどねっとりおつきあいしていない)。後者の方がわりといい気がします。第一、派手な格好してたからって陳腐な発想がベースになっているという確証はどこにもなかったのです。もちろん、多少は「変わってる自分」を演出するために衣装を使っていた人もいたとは思う。でもそれだっていいではないですか。本人が楽しいのだもの。そうしたいのだもの。要するに当時の私、自分自身のつまらなさに辟易していたのですね。今になって理解できるのです。自分の気持ちに忠実な服を着ること(本当は作りたいけど今はそこまで手をひろげられないな)…難しいけれど楽しい、楽しいけれど難しい課題です。

May 18, 2005

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美しいラジオ

えらそーに劇作家などと名乗っていますが(本当は肩書きを外したいと思いつつ、しかし便利なので今だ劇作家と名乗っている私…)要するに「受信業」だと思っています。アイデアや、物語をひょいと受信し、それをまとめて文章にしているだけ。だから「劇作家?? 本好きだもんねえ」と言われても、本を読むのは単なる趣味で、別に体内に蓄積した知識をもとに何かを作っているのではないつもりです。っていうかそれやったらアウトだと思う。第一本をしっかり読む事なんて、学者さんにかなうはずもありませんしね(もちろん市井にだってものすごい読書家や哲学者、研究者はうじゃうじゃいるし…)。たくさん芝居見たり本を読んだら即いい作家になれるはずもなく、もの書きはアンテナ勝負だと思うのですが、いかがでしょう…。誤解を恐れずに言えば、宗教家とか預言者とか、そんなカテゴライズしにくい職業の一派なのかもしれません。もちろん受信以外にも、受信したものを整理したり、「あ、これは以前だれかもやってたアイデアだ」と選別したり、整合性があるように練り上げたり、そんな知的地味作業、根気と体力のちからワザも必要ではありますが。毎日ぴかぴかにアンテナを磨いておかないと…と思います。本質的なものを受け止める受信機、誰からも拾われないような電波からいい音をつくれるラジオになりたいなあ…と思うこのごろです。

May 17, 2005

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作文課

なんとなくいろいろ考えすぎて書きそびれていましたが…福知山線での大事故、亡くなった方々のご冥福をお祈りします。電車に乗っていてお怪我をなさった方、ご遺族やマンションに住んでいた方、多くの関係者の方々のご心痛もいかばかりかと思います。同情しようにも当事者でないと決して分からない御心情でしょうが、しかし、このニュースを見るたび胸が苦しくなります。上手く書けなくてごめんなさい。ただ、私は(他の場合も全部そうしているのですが)「お祈りします」と書いたときは、本当にワープロを打つ手をとめて、実際お祈りしています。それくらいしか出来ません。あとはきちんと仕事することしか無いと思っています。★それにしても今回もしみじみ思うのは、謝る人達の言葉の貧弱さ。JR西日本の社長さん、彼だけが悪いわけではないし(もちろん責任はありますが)、上層部や部下達の楯になってぼろぼろなのは分かるけど、今日の国会での答弁はほんとうに頂けなかった。「率直な気持ちをお聞かせ下さい」という自民党の議員に「(前略)痛恨の極みです」。今JR西日本に一番問われているのは、「こころある会社」なのかどうか。本当に腐りきっているのか。実際に大胆な体質改革、構造改革できるのか。ですよね。私はこの答弁を聞いて感じました。「どうもこころはないように見えるよ～改革は難しいだろうねえ」。だって言葉が貧困だと、心も貧困だと思われても仕方ないですもの。彼の答弁は、申し訳ないんだな…という気持ちは汲み取れたけど(わたしは汲み取ってあげすぎる傾向はあるけれど)、しかしとても血の通った人間の言葉とは思えなかった。マニュアルみたいな言葉だった。「ちょっとでもヘンなことを言ってつっこまれたくない」その一心なのかな??たとえば少し変かもしれないけど「痛恨の極みです…毎日生爪をはがされるような気持ちでいます」と言えば、聞く人も彼の謝罪をもう少し違うニュアンスで受け止められる気がする。「…私が、ここに生きていること自体が申し訳ない気がします。お詫びするしか能がなくて、すみません」と言われれば、会社の責任は変わらないけれど、しかしそこに立っている社長は人間で、失敗もする一人の男で、確かに今まで儲けの上にあぐらをかいていた大バカだけど、しかし反省しているらしいと思えるかもしれない。言葉だけ、遺族が納得するようにキレイにコーティングしろ、というわけではないのです。お客様相談室の謝罪担当みたいな演技が上手い人がいるのも、知ってます(実際その周辺で働いていたこともあるので)。そういうことでなく、今思うのは日頃から自分の言葉を探す、ある程度の訓練は必要ではないかと思うのです。言葉担当の部署があって、社長をふくめた社員教育をするとか(笑)。言葉が訓練されることって、客観的論理的になるばかりでなく、感受性の訓練(へんな言い方だけど)にもなるわけで、彼らに必要なのはまさにこの作業ではないでしょうか。言葉ときちんと向き合うことが、常識を取り戻す第一歩じゃないかしら。もちろん書くだけじゃなくて、話して、聞いて貰って、言葉を双方向に使うことが必要ですけど(そうしたらお怪我した人から事故当日のチケット料金を徴収するようなことはしなくなると思いますよ～)。会社の下にロボットみたいな人間がいるんじゃなくて、常識を備えそれぞれの言葉を持った人達の集まりが会社であるという風になるのは難しいのかなあ。小さなこじんまりした所でしか働いてこなかったから、大企業の病についてはどうも感覚的には分からないのですが。長期にわたって、自分の非を認め、かつ前向きに謝罪するには、そして実際に改革をおこなうには真実の心と言葉が不可欠だと思うのです。言葉の訓練、してほしいなあ。ブログやるだけでも(笑)、違うと思うんだけどなあ。

May 13, 2005

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演劇の鉄人

http://news.goo.ne.jp/news/wired/it/20050512/20050512i05.htmlそれほど真剣に見ていなかったのですが「料理の鉄人」っていう番組がありましたよね。ある一定の短い時間で、料理対決するというもの。それの映画版が↑だそうです。撮影時間、作品の長さ、一部に必ずキーワードを使うことなど、縛りがあるなかでの製作。けっこう大がかりで、しかもとても楽しそうです。もちろん長編はとれないし、粗製濫造の可能性もありますけど、反面思いがけない表現が飛び出してもいるようです。見てみたいなあ。批判するのは簡単だと思うのですが、極めて限られた条件の中でにかをするというの、面白いではないですか。やってみたくありませんか??これの演劇バージョンできないかしら??

May 13, 2005

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あまり役に立たない口内炎情報

やっと、やっと口内炎が治りました。5/3からだから、随分治癒に時間がかかったなあ…これも年齢??とにかくここしばらくは好きな梅干しやお酢はもちろん、ありとあらゆるものが食べにくかったのです。でも今日からまた普通の日々。心配してコメントを下さった方々、どうもありがとうございました。今回はあまりにも巨大な炎症、そして長い闘病(笑)だったので、せっかくなら…といろいろな療法を試してその効果を発表したい、と考えていました。★明らかに効いたもの・粉末ビタミンC・ビタミンB錠剤・ハイシーホワイト(語ると長くなるのですが、地黒の私は小学生時代「あまりにも黒い」とクラスメイトに笑われたのを機に美白に目覚めたのでした。地黒がどこまで白くなれるか、やってやろう、戦ってやろうと思ったのです。帽子日傘ビタミンC、成人してからはビール化粧品お茶パック。そして良いと言われることはほとんどやり、目標はほぼ達成されました。最近は少し焼けたいと思うことすらあります。がしかし習慣とは恐ろしいものでついついこんなものが常備されているのですね。下らない話ですが)・中華コース料理(法事のお陰でありつくことが出来ました。コラーゲンたっぷりの料理。おいしかった)・薬(デキサルチン。見かねた母が治りかけに送ってくれました)・3食きちんと食べる★勧められたけれど高価だったり見つからなかったりで買わなかったもの・液体プロポリス・セラミド錠剤・アフタパッチ★勧められたけど怖くて出来なかったこと・患部を線香で焼く★どうもあまり効かなかったもの・睡眠(よほど睡眠の質が悪いのか、毎日8時間寝ても起きると傷が塞がるどころか痛んでいた)私は辛いことや悩み事があると食事が喉を通らなくなる性質です。あと考え事をしていると文字通り胸が塞がって呼吸が困難になる(見ていると結構笑えるらしいけど)。こういう身体の悪癖があると自覚しているので、食事は無理矢理にでも3度、深呼吸も定期的にするのですが、しかし癖は一朝一夕にはなおらず、何かあるとすぐ4、5キロは痩せます。今回もいろいろあって、かなり痩せてきていました。でもまあなんとかなるだろう…と思っていた矢先口内炎が出来たのです。もし口内炎が出来なかったら、きちんと休養をとることもなく、もっと身体は弱っていった気もします。口内炎はSOSの信号だったのでした。病気がちの私は、友達にも病気がちの子が多く、そのうちの一人がこんなことを言っていました。「病気ってしないほうがいいとは思うけど、することによってショートカットでいろいろなことに気づいたりも出来るのよ。たまに…病気のおかげでここまでこれたと思う」そういう側面はありますね。また彼女は「病気って、次の自分になるために用意されてるんだよね。病気の前と後じゃ、違う人だもの」なんか登山のようですが。病気の捉え方について考えると、面白いものです。彼女は「雪折れしまくる柳」としてとても有名な美女で、現在は優しい夫君とマイペースに暮らしています。完治した患部を鏡で眺めつつ、ふとこんなことを思い出しました。口内炎ごときで大げさですけど(笑)。

May 10, 2005

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情報募集・与謝野晶子について

与謝野晶子についての資料(膨大…)を読んでいます。調べたいのは渡仏以降の晶子、中年期の晶子とその周辺の情報なのですが、どなたか「中年期の晶子についてとえばこれ!!」という書籍をご存知の方がいらしたら、教えて下さい。書店で手に入るものについてはほぼあたったつもりなのですが、まだまだ穴があるようです…。田辺聖子さんが「千すじの黒髪」(集英社文庫)という名作を書かれているのですが、これは渡仏までに焦点があたっています。あとがきで、チャンスがあったら続編を書きたい、と書かれているのですが、その後書かれたのでしょうか。野宮なりに調べたのですがよく分かりませんでした。田辺さんの本は史実に忠実な上文章が練れていて面白いので、続きがあったら絶対読みたいと思っています。これについても情報をお持ちの方がいらしたら是非教えて頂けると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。♪晶子については実像をかなり歪曲したと思われる作品が多く出回っているので「こりゃパチもの」というのを集めて読んでみたいなあ…とも思っています。今はそんな暇ないけど。

May 7, 2005

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分からない物たちの国で

私は迷うのが好きだ。海外旅行はツアーより一人旅。大して言葉も分からないのにロサンジェルス空港に行き、なぜか従業員用エレベーターに乗っていたりするのが面白い(国内線に乗り換えようとして迷いました。モップを持った老従業員さんにスペイン語でこんこんと諭されたっけ…)。日本にいて日本人に取り囲まれるのより、何人だか何語を話しているのか分からない人達の街にいるのが好き。有名でない(ということはどう理解するかが広く知れ渡っていない)作家の絵を見たり、書き手自身どうオチをつけていいのか悩んでいる作文を読むのも、よほど弱っている時でないかぎり大好物。いや、弱っている時の方がやりたくなるかもしれない。ツアーも参加したことはあるし、お約束のある作品(たとえばコロンボとか)も好きなのは多いけれど、でも毎回それだとかなり辛い。多分♪体内の「ぴんち…いつものパターン使えませんぜ」というスイッチが入って、普段怠けまくっている細胞が活動するのが快感。なのだと思う。脳味噌はいつも普段4％しか働いていないらしいから(どこからはじき出した数字かは知らないが)たまに働いた細胞さん達が「いいねっ! 労働」と汗ふきふきにこにこするのだろう。♪自分が今まで知らなかったもの、状態を見聞出来るという単純な楽しさ。♪心底「分からない～」「ひとりだなあ」と思う爽快。というのもある。迷うと、全身がいきいきする。いろいろな危険も孕んではいるし予想も対策もするけれど、しかし困ったり迷ったりしなかつたら大概のイベントの楽しさは半減なのだ。とまあ究極の「真の危機を知らないのほほんでバカな日本人」な私だ。が、演劇をしていているとこの「迷い好き」で本当に良かったと思うことが多い。「実験的な作品」「難解な作品」もままある演劇界。というか大半がそんなものな小劇場。テレビや大劇場のように「万人に理解できない」ものが多々ある(テレビや大劇場だからといって万人が作品を理解しているわけではないと思うけど、ここではそれについては置いておく)。不可解が山のように溢れ、川のように流れてくる。時には「役者にすら理解できない作品(作・演出だけ理解している)」なこともあるし、「作・演出すら作品を上手く説明出来ない」場合もあり、あんまりないが「テーマは照明さんだけが精確に把握していた」ことだってあると思う。そんな濁流の中になんとかいられるのは、「迷うのが好き」だからとしか思えない。もちろん彼ら、私達は別に観客さんにいぢわるをしようとしているわけではなく・新しいテーマを語るときは既成の言葉ややり方では語れない・新しい手法自体を模索している格好良く言えば、世界を語る言語を豊かにしようと悪戦苦闘していることも多いのですね。もちろん「単に練れて無くて難解になっちゃった」こともままあるのは事実ですが。今までのスタイルも知ってるけど、この語り方だとあれよりずっと面白くなるはず。こんな気持ちになるシーンは、いままで誰も作っていないはず。別に自分達が楽しいだけでなく、そういう「いいもの、新しいもの」をお届けしたいという純粋でお節介な気持ちがあり、いろいろ苦闘もしているのです。そんなわけで、「わかんないなあ」と思っても、その裏には美味しいものが詰まってる場合も多く、「わからない」をただ避け続けるのはつまらないんじゃないかなあ…と思うこのごろです。っていうか、「分からない」と感じること自体儲けもので、そのふらふらしたよりどころのない場所だと、全身の細胞を働かせて何かつかむことが出来やすい気がするのですが、いかがでしょうか。「野宮～、この前の芝居のアンケート、『わからん』『難解』『一人よがり』としか書かれんかった～」という知人からの電話があり、その時は「それはさ、要するにさ、一人よがりだったんじゃないの(笑)見てないけど」と言ってみたものの、以上のようにも考えるのでした。私もよく「分からない」「難解」「暗い」とか言われるから、ルサンチマンと思われるとイヤなんだけどねえ(ぶつぶつ)。これはつきつめて考えるともっと長くなりますね。とりあえずここまでに。

May 5, 2005

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非電化製品

小学校2年生の時、読書感想文用に「川は生きている　自然と人間」富山和子(講談社青い鳥文庫) を読みました。以来素朴に「人間は自然とどういう形でつきあっていけばいいのだろう、日本に住みつつどうすればいいんだろう」と思っていた私に、十数年後(小さなサバは泳がせてやって下さい…)ひとつの答が与えられました。今週のヤングサンデー(相武紗季ちゃんが表紙)です。またですかい…と言わずに315ページを開いてください。山田玲司先生の「絶望に効く薬　第78夜　発明家藤村靖之さん」。電気を使わない「非電化製品」を作っている方です。製品も、作っている人も、すごくいい。電気を使わない冷蔵庫があるなんて思いもしませんでした。欲しいと思いませんか??私は(今のを使いきってから)めちゃくちゃ欲しいです!!藤村さんの言葉が面白いのです。「私は『電気が悪い、非電化がいい』だから非電化を使いなさい…なんてことは、言いたくもないし言ってもいないんです。『愉しいと思う方を選んだらいい』という提案なんです」それを聞いた山田先生が「まだるっこしいなあ、そんなこと言うより『深夜の買い物や自販機を止めようよ、電気の無駄遣い反対!! 非電化製品を使おう』って激しく主張しましょうよ」というニュアンスのことを言うのですが、藤村さんは「それを言ってもしかたないですよ。『共感』からはじめるしかないんです」。共感。私はこのページをはじめるにあたり、ブログ作成の講座を受けました。その講師のりりま*まま。さん(http://plaza.rakuten.co.jp/mamatanken/)もおっしゃっていましたっけ。共感があると人は本当の意味でつながっていく。共感が人を動かす。プログ開始から一月たった今、彼女の言葉の確かさ、ありがたさをしみじみ感じるこの頃ですが、ここでもやはりキーワードになっていましたね。「共感」を丁寧に作っていく。それに尽きるのだ。「『共感』がエネルギーになる時代になってきたわけですよ」一流大学の大学院を出て、入った某大企業の研究室長の座を捨てて、自分の子供のぜんそくを治すため「発明家」になった人。私の父と同世代の藤村さんの言葉は、温かく重く、しかし確かに希望の匂いがするのでした。

May 2, 2005

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とらばいゆ

打ち合わせをしていた時、雑談でなんとなくアルバイトの話題が出ました。「バイトってイヤイヤやってましたよね??　芝居のため仕方なくだから、そりゃ辛いっすよね～」と言われて。確かに体力的にはかなり辛かったです。バイト2つを掛け持ちしている時期も長かったし、単発でもコールセンターとか入力業務とかいろいろやっているし。アルバイトに行きたいけどアルバイト先まで行く電車賃が無い、なんていう貧乏な時期もあったし(歩きました…)。でもすごく好きで長く続けたアルバイトもありました。それについて書こうと思います。「就職」「仕事」というものを考えはじめたのは大学4年になってからでした。のんびり屋の私もさすがに「大学卒業以降の人生どうしよう…むむ…」と思い、仲良くしていたラップ好きの青年に相談しました。「どうしたらよいのかな??」。しかし二人とも「出来れば就職したくないなあ、芝居してたいなあ(あるいはラッパーになりたいなあ))」と思っており、周囲もそれほど就職にがつがつしているようには見えなく、「就職」に具体的なビジョンは一切ありませんでした。とりあえず来年学校が終わるので、一人で食べていかないといけない。家賃、食費、そこをなんとかクリアしたい。それくらいの考えしかなかったと思います。とりあえず二人でしたのは「職業別電話帳をめくる」ことでした。今思ってもかなりバカです。しかしその時の私達は、ここには世の中の職業が全部載っているので便利!! と真剣に思ったのでした。そこで「演劇しつつ」「絵を描きつつ」「文章をかきつつ」出来る仕事を探しました。すぐにそれは見つかりました。職種を決めたら、電話帳なので連絡先もすぐ分かります。その職業のある所?? 　にはしから電話していいわけです。電話して、面接に行って、採用されました。というわけで大学4年の春から、私は美大受験予備校の非常勤講師をしていたのです。(ちなみに青年も同じ方法で有名なゲーム製作会社に入社しました。決して真似しないでください)。激務ではありましたがなんとか芝居もできるし、文章を書く時間も捻出出来る。周囲は絵がたくさんあり、絵描きさんもまわりにたくさんいる。思っていた通りの環境でした。唯一予想が外れたのは、生徒さんがみんなむちゃくちゃにかわいかったこと(かなりの覚悟をしていたのですが、拍子抜けなほどイヤな目に遭いませんでした)、小論文添削がもう癖になるほど楽しかったことです。他人の、それも受験用の作文なんて、つまらないだけだと思っていました。作文添削、小論文添削は苦行だろう…でもこれも仕事と諦めていたのです。が、これがもう大好物になりました。今でもやりたいです。美大受験生で見て欲しいという方がいらっしゃいましたら、見ます(無料でというと無責任なのでちょっと料金は頂きますが)。いや本気で。生徒さんが書き終えた原稿用紙。まず直筆の文字が、すでに沢山物語っています。書き手の好不調、安定しているかあるいは上の空なのか、その課題が好きか嫌いか、なにか悩みがあるのか。また字体自体で、その人の本質的な性格もかなり想像できます(想像でしかないのは分かっているけど)。そして内容。様々な課題に対するそれぞれの反応、話し方(文体)、論理の組み立て方、例の出し方、結論をどこに置くかという個性。うーん、一枚一枚本当に見飽きないのです。小論文は大雑把な善し悪しはあるけれど「正解」がない分野なので、コツさえ掴めれば誰でもかなりのびのび表現が出来ます。その思いがけない書き方や発想が楽しみで、私もいっしょに書いたりして、毎週この授業が本当に楽しみでした。添削してる私自身超未熟なヤツなので、また結構趣味も偏っているので、大先輩の先生にチェックして頂いたり、いろいろとご迷惑もおかけしました。勉強が足りないなあ…と暗くなることも多々ありました。でも添削自体はとにかく楽しくて、家に持ち帰ってまでも赤ペンを入れていたのです。「奇特な人ですよね」「っていうか、かなり変人です」と同僚に言われつつも。この仕事、引越や体調悪化で止めざるをえませんでしたが、忘れられません。本当に面白かったです。同僚にも恵まれていて…これは書くと長くなるのでまたにしますが。以上アルバイトの楽しい側面でした。

May 1, 2005

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愛の行方

こんにゃくゼリーってありますよね。私大好きなのです。好きというより、たぶん心底、愛しています。子供のころから「ぷるぷる」あるいは「ぶるんぶるん」する食べ物になぜかとてつもなく惹かれていて、ゼラチンや寒天でいろいろな食物を作ることに情熱を傾けてきました。だから「ゼリー」「寒天料理」「葛きり」などはもちろん肉料理をしばらくほっておくとできる「ぷるぷる」あるいは、「刺身蒟蒻」も大好きで、「子供がどうしてこんな味の無いものを…」と怪しまれつつも親に刺身蒟蒻をねだる謎の小学生でした。ですから好きな蒟蒻とゼリーが合体した食べ物なんて、夢のよう。働き初めてお金が自由になると、早速買い込んで、ぶるぶるぱくっ、ぷるぷるぱくっ、せっせと食べ始めたのです。くどくない甘さ、ちょっと固めの食感、口いっぱいにほおばれる大きさ、すべてが理想的でした。何より噛みごたえのあるぶるぶる感がたまりません。ところが、食べると暫くしてものすごくお腹が痛くなるのですよ。毎回(私は、です。普通の人は大丈夫ですので)。のたうちまわって苦しみ、挙げ句意識を失って救急車で運ばれてしまいました。計3回。ここまで読んで「あのなー、お前みたいなヤツがいるから有料化されるんだよ、救急車」と思う方も多いと思います。「だったらそんなもの2度と食うな!! 1度で学べ !!」というご意見ももっともだと思います。救急隊員の方にも、お医者さん、看護師さん、居合わせた人々にも謝りたい。皆さんごめんなさい。しかし、1回目、2回目は原因が不明だったのです。私はもともと胃潰瘍持ちで胃がトラブルを起こしがち、腸炎を頻発させた前歴があるし、その他いろいろな科にもお世話になっています。先生もまさか原因がゼリーとは思わず、私も「最も私を癒すもの」が私の意識を無くさせたとはとても思えず「ストレスでしょう(便利に使われてしまう言葉だにゃ)」という曖昧な結論に落ち着いていたのでした。しかし流石に3回目に「意識を失う前、かならずこんにゃくゼリーを食べている…」ことに気づいたのです。ショックでした。実際食べるのを止めたら、本当にひどい腹痛はぴたりと無くなったのです。なにか、元気にすらなったのです。それからはお店でも極力お菓子売り場に近づかないようにしました。これってアル中さんとか、愛煙家、ギャンブル狂や女好きの気持ちと同じかしら…と思いつつ、あえて色街を迂回する遊び人のような気持ちで?? こんにゃくゼリーのことは忘れようとつとめていたのです。しかし、人は本当に愛しているものを断つことなど、でき…。「マンゴー味」新登場。お菓子売り場でなく、スーパーの入り口に山積みされていたのでした。愛しい、愛しい私のぷるぷるちゃん。魔法にかかったようにふらふらと買い物かごに入れ、レジに直行。うちでしばらく、パッケージを睨んでいました。必ず、意識を失うわけです。そして失うまでにも、のたうちまわります。腹部の痛みとか、吐き気とか(吐ければいいけど吐くことも出来ないし)、その他もろもろの痛みに脂汗を流して耐えなければいけない。その上、人迷惑大迷惑であります。しかしこの魅惑のぷるぷるちゃん…。マンゴーも大好物…。嫌いな物を断ってまで生きていたくない、というのはまっとうな論理でもあり…。パッケージを空けて、それからスプーンで薄くひとひらすくってみました。いい匂いです。ひとひらをナイフで細かく切り刻んでみました。ますますいい匂いが広がります。それを一片ずつ、少しずつ、口に含んでみます。おいしーい…。食感に若干問題あるけど、でもおいしーい…。つるつる感、ぷるぷる感はちょっとだけど健在です。一つのカップを300片くらいに切断して(ほぼジェル状…)、少しずつ少しずつ、時間をかけて食べたのでした。本当に幸せでした。暫くして、意識は失わないけど、むしろ意識を失いたいレベルの腹痛に襲われました。救急車は呼びませんでした。原因分かっているし、死なないでしょうし。迷惑だし。朦朧とした頭で思っていました、とにかく冷蔵庫の中にある、あれ…あれを捨てなきゃ…。今日も捨てられないでいる、あれ、捨てなきゃ…。

April 28, 2005

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初心を忘れる人

私のことですね。昨夜ふと「どうしてブログやろうと思ったんだっけ…」と思い返していたのです。そう言えば、ブログを立ち上げた大きな理由の一つが・毎日一つ戯曲を読む、その記録をつけるためだったのだ。うーん。すっかり忘れていました。とりあえず初日4/1は大好きな鈴江俊郎さんの「靴のかかとの月」も読んでいたのに、それを日記に書くことすら忘れてるし…。目的はまだあって、それは・語学記録をつけること、洋書を読んだら書いておくことでした。これはカテゴリを見ると「語学」というものがあり(笑)当初もほんの少しは記憶していたものと見受けますが、しかし最近は忘却のかなたに…。人は生まれてくるとき、生まれることの(出産の)あまりの大変さに「今生の目的」を忘れてしまいがちだといいます。気が付くと「うわー、何のために生まれてきたんだっけ??!!」とあたふた。まさにそれに似た状態。深く反省しました。明日から「戯曲記録」「語学記録」をつけようと思います。

April 23, 2005

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もしも書けなくなったなら・１

うちは同居人がフリーのライター稼業。私は劇作のお仕事。意外かもしれませんが、バブル崩壊も平気、不況の波を被ることもまったくありませんでした。とにかく常に不況で低め安定の経済状態のため、浮き沈みをまったく感じることなく落ち着いて暮らして来られたのです。ある意味、毎日呑気で愉しい生活です。(沈みようがないとか、そういうトドメはささないでくださいね。既に何度もさされてますから)。でも、老後の安定とか、ローンを組んで確実な幸せを…などと考えるまっとうな人が見たら発狂しそうな通帳、カラッポの貯金箱に囲まれても「まあなんとかなるさ」と暮らして来れたのにはやはり理由があります。それは食事のたび「書けなくなったらどうするか??」を常に話し合い、考えているのです。私は外で働くことが出来ないし、同居人も病院にお世話になり続けている繊細さん。とにかくいざという時のために備えておかないといけません。そこで先日思いついたビジネス。「犬散歩屋」。体力が無いので、散歩させるのは無理。でも「うちの犬、誰か散歩させてくれないかな」という人と「うちに犬いないけど、たまには犬と散歩したいな」という人を結びつけることは出来る。両方を仲介して手数料を取ろう(あこぎー)。場合によっては車の運転手が必要だが、免許はいちおう持っている。万が一犬による事故が起こっても「うちは仲介しただけです、すいません」という契約書を作っておけば良い。飼い主は犬を散歩させてもらって幸せ、犬と歩けて幸せ、犬も幸せ、我が家も幸せ、素晴らしいではないか。というわけで、いざ書けなくなってもこんな方法で生き延びようかと思います。もしも書けなくなったなら・２　に続く

April 22, 2005

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世界は参考文献で溢れてる

リンクさせて頂いている、マンガ家山田玲司先生のサイトで「BBS、日記」が一時的に閉鎖されることになってしまいました。素敵な日記であり、楽しみにしていた掲示板だったのでとても残念。とりあえず管理人さんに応援メールを出してしまいました(単に「がんばって下さい」だと意味が少ないと思ったので、お節介を承知で具体的に提案などを書かせて頂きました)。実はちょっと心配はしていたのです。最近BBSで中国の反日デモのことなどが話題となり、それ自体はいいことだと思うのですが、過激な発言も増えていたので…。発言が過激になって有効なことがあればいいのですが、ただただ強く大きい言葉の応酬になると、耳をふさぐ人が増えるだけではないかしら、とどきどきしていました。また話題が話題だけに「これが事実」「いやこれを読め」「この本は嘘」「こっちのサイトを見て」という参考文献の羅列が始まっちゃうのですね。誠実に議論しようと思ったらそうせざるをえないのは理解できるし、書籍や調査無視の感情的なやりとりよりは全然好感を持てるのですが。でも、それらを全部読むのは物理的に不可能だし、もし可能だとしても専門家でさえ議論が分かれているという事実もあり、歴史という「事実」と「認識(物語づけ)」の両方の要素が入り込むジャンルにおいて、自分なりの「方向性」「意見」を導き出すことの難しさについては考え込んでしまいます。素人が有名人の言葉を安易に借りず、自分の言葉、自分の意見を探そうとすると、そのための勉強は並大抵のものではないのです(どんな人を、著者を「信用する」のか決めるだけでも難しいでしょう)。世界は広くて、自分の感覚で分かる事なんてちょっと。出かけられもするけど、昔のことはどうしたって「体験」できない。だからあれこれ本を読んで、調べてみる。人の話も聞いてみる。でも資料は膨大で、増えていく一方で、死ぬまでその調査やお勉強にをしているわけにはいかなくて…。世界には参考文献が多すぎて、私達それに溺れているようにも見えます。「勉強は必要。勉強がきちんと出来てる人はそれを倫理にまで練り上げられる。倫理というと大げさだけど、要するに学んだ知識を自分なりの言葉や物語に落としこんでる。だからそれを誰にでも分かる易しい言葉で話せる。ちなみに中途半端な勉強者は知識をぶんぶん振り回すだけ(笑)」と素朴に考えていました。今も基本はそう思うけど、でも「勉強をきちんとする」って至難の業ですね。一生かかるかも。自分自身まったく出来てないし…。「未熟」で「不確定」でありつつも、人の意見に流されず、感情的にならず、限られた時間の中で自分の意見持つにはどうしたらいいのか…。情報を吸収しつつ、考えています。

April 20, 2005

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恋をすると電車に乗ってばかりいる

舞台関係の人とお話していると「お客さん入らないよね～。わざわざ家を出て劇場に行くのって、面倒だもん。今の日本にはゲームもテレビもDVDも本もあるし、やっぱ舞台は斜陽産業よね。とほほ～」というぼやきがご挨拶代わりなのですが、好きな人がいたら、やっぱり写真や映像じゃちょっと満足できないわけで。「生」をつかみに電車にもバスにも乗るわけで。「好き」で「必要」なら人は必ず動くもの。シンプルにそう思うのです。唯一無二のオーラある役者になり、どうしても体感したくなる物語を紡ぎ、目撃したい照明、音響、美術を作れば、いいだけ。それだけ。最近気づいたのです。ぼやいてる人ってモてません。

April 18, 2005

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化粧迷宮

すっぴんの私の顔は、すごい。シミがあってそばかすがあって水疱瘡のあとがあって、唇はむけてる。目は常に充血し、眉毛は半分しか無く、たまには大人にきびも発生。その様子を見たら、ちょっと想像力がある人なら、とにかくいろいろ考えてしまうだろう。「このシミ…苦労してるのかな。いやにきびもあるから食事をきちんと取っていないだらしない人なのかも。水疱瘡のあとって、要するに痒くてひっかいちゃったわけでしょ、我慢できないタイプだな。眉がないってことは子持ち??　そのわりには苦労してない手をしてるけど。目が赤いってことは目の酷使と睡眠不足。多分慢性的な肩こりだな。座職かな…」このくらい一分で推理できる。私に限らずなんだけど、女性の素顔は物語過多だ。以前の私は、これがたまらなくイヤだった。20代前半なんて薄化粧でいいと思うのだが、ちょっとでもシミが見えたりして初対面の人にあれこれ考えさせるのが申し訳なくてたまらない。だから、ついつい化粧が濃くなっていった。大切な相手の時間を、私なんかの無駄情報を処理するのに使うべきではない。要するにシミ、ソバカス、水疱瘡のあとが目にはいるからいけないのだ…。「お化粧とは自分情報の削減なり」という謎のスローガンを掲げて、優秀なコンシーラーやファウンデーションでシミやそばかすを隠し、充血止めの目薬をさし、オリーブオイル配合のリップスティクで唇をなめらかにさせた。眉毛は毎日きっちり書き込む。それでも気になるところは免税店で買ったゲランの七色パウダーで光を乱反射させよう、ごまかせごまかせ(書くと長くなるのだが、以前懸賞でイタリア旅行が当たり、その時成田で買ったのだ)。時間がある時はアイシャドウもマスカラもさりげなくしかしきっちり仕込んだ。私の地の情報が少なければ少ないほど、他人は楽なのだ。負担をかけるまい。目指せひっかかりを産まない顔、推理の働かない、ありきたりでキレイ目の外見!!「苦労」とか「疲れてそう」とか「貧困(とほ)」とか、そういう発想を呼び覚まさないように、楽しい感じを演出しないと。地が素晴らしいならともかく、私の地は「疲労困憊したブス。根暗でバカ」、それが生きていくためには周囲に気ぐらい遣わないと…。今なら思う。なんちゅう、イヤな発想の女であろうか。そんないじけた考えだから「バイトに行く交通費すらない」貧しい時も化粧品だけは欠かさない、変な生活を送ることになるのだ。しかしあきれたことに、そんな生活をえんえんと続けていたのだ…、が…。きっかけなんてない。最近、ただ突然「こりゃだめだ」とふと気づいた。そういう風に作り上げた自分の顔が、私自身ぜーんぜん好きでないことに突然気づいてしまった。いや、正確には好きになれないと気づく所までたどり着いたわけで、その苦労は認めてあげたいのだが、しかしあまりにも回り道だったと思う。本当に下らない迷路の中を、ぐるぐるしていた。そもそも、私は人の素顔がすごく好きなのだ。作りこまない「まんま」の顔がかなり好き。情報量の多い、物語過多の、一般的には美しく無い顔も好き。見飽きない顔が大好き。化粧してない男の人の顔、イケメンでない顔。女性でもモデルさんとか女優さんばかりじゃなくて、近所の商店街にいる人の顔もかなり夢中で見ている。不細工な犬も、ハゲのある猫も、骨が奇形で障害のある自分の足すらわりと好きだ。だったら自分の顔も、アニメみたいなつるつるにする必要、ないじゃん…。鏡に映る私の「情報を削減された」顔、冷静に見ると、ものすごくつまらなかった。どうしようもない箸にも棒にもひっかからない感じ、芯のない、自信の無い雰囲気。「疲労」「苦労」「貧困(笑)」を丁寧に取り除いていたはずなのに、顔全体から「自分や周囲への不安感」が立ち上ってる。原因は子供のころ、前の席の子がわざわざ振り返って「すっごく変な顔だね。気持ち悪い」と言われた、そのショックかもしれないし、おおもとに「自分の美意識と自分の顔がまったくあっていない」誰でもある苦痛が横たわってるのも事実。他にも容姿のことで「つらいな」と思ったことは多々ある。写真は今だに大嫌いだ。でもみんなそれをふまえた上で試行錯誤していて、それが面白いわけで。与えられた容姿をどう受け止めるか、どう良くしていくか戦っているわけで。化粧だけじゃなくて、心の持ちようを変えようとしたり、健康に注意したり、医療技術を使うこともある。髪型の工夫とか服装とか細かい計算が出来る人もいる。いくらでも工夫はできる。ただただ「自分の凹凸を隠そう」とするなんて間違ってるし、本当につまらない…。というわけでお化粧への考えが最近180度換わってしまった。換わった途端、義務感のつきまとっていた朝の時間がすごく楽しくなった。これからどういう方針でメイクするかは模索中だけれど、とにかく「地を活かした」方向でいこうと思う。自分の否定を繰り返すより、ありきたりだけど、良さを活かして。良さが少なくても、良さを探して。あと「羅針盤になる化粧」。要するにこうなりたいな、という方向に自分をひっぱっていってくれるお化粧をしていくと楽しいのではないかな、と思う。技術が伴うかは別問題だけど「ここではないどこかへ」ではなく「ここから地続きのどこかへ」自分をひっぱっていく力がメイクにはあるみたい。いろんな画集や藤原美智子さん光野桃さん佐伯チズさんの本を読み返そうと思う。そうそう伊丹十三さんのエッセイも参考になるな(こうして本に頼るところが美点であり欠点だなあ…)。ここまで読んで「うだうだ言ってないで、そんなに『まんま』の顔が好きなら大体の男みたいにすっぴんで勝負したら?? お金もかからないし」と考える方もいらっしゃるでしょうが・作家なのでどうにもフィクションが好き、虚実皮膜な感じが大好き。フィクション(化粧)が内面を作ってくれる面もあると思う・私は人の素顔が好きでも、他人が私の素顔をどう思うか分からないという冷静な(笑)判断から死ぬまでお化粧はしていきたいな、と思うのです。

April 17, 2005

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審査について

こういうことって、賞に縁遠い時は言いづらいので、今書いちゃいます。私は言いたい。「ラーメン屋の店主に、ラーメンの格付けさせちゃいけないよね!!」要するに、クリエイターに作品の審査させちゃいけないんじゃないかな、と思うのです。作家である審査員さんが芥川賞とか様々な賞を決定してるけど、そしてそれなりに沢山のご苦労はあるだろうけど、でも「創り出す力」と「評価したり審査する力」ってまったく違うと思うんですよね…。どうなんだろう。しょうゆラーメン屋の大将は、やっぱりしょうゆが一番と思うからしょうゆのみにしてるわけで、味噌やトンコツの深さについて熟知しているのでしょうか?? あるいは様々な味を分析できる味覚があり知識が豊富だったとしても、好みの問題が出てこないでしょうか（「うん、このトンコツは凄いね。でも僕は自分に正直だからどうしてもこっちのしょうゆの方に好感を持ってしまうんだ。こっちが一番!!」…とか平気で言われそう）??やっぱり格付けは「料理ライター・編集者」さんとか、「テレビチャンピオンのラーメン王」とか「良く知らないけどミシュランの人」とかがいいような気がする。中島らもさんが「なれずもの」(イーストプレス)という対談集の中で、ご自分が「直木賞」をとれなかったことについて語られています。聞きようによっては「何で今さら…女々しいなあ」と言われかねない内容なのですが、でも私は「グチ」ではないと思うのです。実際に問題あると思うの、作家による小説の審査。小説だけでなく、絵を描く人が絵の審査すること。写真を撮る人が写真の審査をすること、エトセトラ。もちろん創る人にしかわかり得ないこともある、それは確かだけれど。せめて審査員に「創る人」だけじゃなく「批評を専門とする人」を混ぜ込んで、同等の力をあげるっていうのはどうなのかなあ。まあ、「創り出す人」は極力マイペースで創作をして、当落は気にしないのが（たとえ「当」であっても一切気にしないのが）一番とは思うのですが。なんとなくいつも疑問に思ってたことを書いてみました。

April 14, 2005

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ごめんね、という気持ち

先日、うちに「社会保険庁」の人が来た。突然でびっくり。「野宮さん、年金保険払ってないですよね。困りますねえ」と言うのだ。いや、払ってる。絶対払ってる。なぜなら、以前住んでいた町では「払わないと電話で催促が来た」から。夜遅くまでの予備校の仕事で疲れて果てて朝寝ていると、ベルが鳴るのだ。「払ってくれないと困りますよ…」。滞納って言っても、それまでずっと払っていて、2ヶ月払いに行けなかっただけなのに…。一人暮らしでこれ払うのはほんと大変で、それに私達の世代にきちんと保障があるか超怪しいのに…。電話催促までして、あの無駄遣いなのに…。とは思っても、私は「お世話になった人達が困るでしょうし」という男気だけでそれまでも払い続けていたし、朝の電話催促にうんざりしてその後は滞納していない。というわけで、毎月律儀に払っているから、その領収書を見せた。きちんと郵便局の担当者印もついてますよ。「ね?!」「ふうむ」電話確認。すぐに書類のミスだと判明。ところが…謝らないんです…彼。別にすごく時間とったわけではない、それに書類作ったのは別の人で彼も「被害者」なのかもしれない、家々を回る部署なんて泣きたいことだらけなのかもしれない…でも、もしかしたらそうかもしれないけど、無実なのに「困りますねえ」って言われた私はどうなってしまうのかなあ…。彼は「いやあ…」とか最後までごにょごにょ言うだけで帰っていきました。いろいろと考えさせられました。ありがとう、ごめんね、っていう気持ちを表す訓練は、大人になってからこそ必要なのかも知れませんにゃあ。

April 13, 2005

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風を着るひと

(長文であることを予めお断りしておきます。すみません。それからさらっと読むと誤解を招くかもしれませんが、「女性は主婦になった方がいいよ」なんて一言も言っていません。あえて言えば「主婦の再評価を、主婦って芸術家に近いものがあるよ」みたいな内容です。「主夫」についてはこの場では言及できなかったこともお断りしておきます。なんだか文章が散漫なので、あとでまとめなおし、更新する予定です)今日は朝からボツ原稿の整理をしていました。これ夜にやるとかなり本気で落ち込むのです。だけど朝だと平気。むしろ乗り気。　　「よし、悪い所を反省し、問題点を次に活かそう!!」と不気味なほど前向きになる自分がいます。まあ10分くらいですぐもとの人格に戻りますが、そのくらいの勢いがないとぼこぼこに凹んでしまう、地味だけど深い作業でして…。ファイルや原稿用紙(私は手書きもたまにやるのです)を片づけていくうち、インタヴューをもとにしたエッセイのようなものが一つ見つかりました。タイトルは「美しいひと」。もう十年くらい前なのでここに書いてもいいでしょう。それは、かなり強烈な理由でお蔵入りにされたので、とてもよく覚えている一編でした。知人の代打で、とある女性の取材に行きました。「地域に貢献する素敵な女性を訪ねる」という企画です。食あたりを起こし緊急入院した知人からのFAXには住所と最寄り駅と電話番号、お話してくださる方のお名前だけ。ぶるぶると震える文字で「とりあえずトークを、テープに録音すればいいです～」とのこと。私は一抹の不安を抱えつつもマンションのチャイムを押したのです。その方は80歳。現在はなくなられていますが、当時はまだまだお元気で実際60歳くらいに見えました。肌は白くなめらかで服のセンスは品がありキュート、口調は温かいけれど実にてきぱきとしていて頭の回転の速さに舌を巻きます。座布団と香ばしいお茶を出して下さり、向かい合うとすぐにご自分の一生を語り出しました。よくある(たまにはそれがえんえんと続く)季節の挨拶も無駄話も一切無し。取材者の心を見透かすかのように、すっと核心に入って行かれます。「要するに、ずっと主婦だったのですよ」と微笑みつつおっしゃるのです。「子供の時から賢くて、学校で一番の兄よりずっと頭がきれる…なんて言われていたんです。恥ずかしいわね。生まれつき活発で知識欲が旺盛だったの。だから、結婚し子供を五人産んで一段落すると、夫に『近所で働きたい』って言いました。働きたくて、自分の力というのかしら、能力を試したくて仕方なかったんです」「まだ家電も普及していない頃ね。夫は当時にしては女性を大事にする人だったし、家庭を重んじる現代的なタイプでした。勝ち気で行動的な私を、どこか誇りに思っていたくらい。そんな人だから、妻のたっての願いに否定的であるはずがない…そう思っていたのね。だから返事を聞く前に働く準備を始めてたくらいなんだけど…夫の答はノーだった」「『家のことの大概は私がやりますし、子供達も何でも出来るように躾てあります』『あなたのように朝から晩まで働かない、労働は数時間でいいです』って交渉しても、やはりガンとして首を縦に振らない。私はがっかりしたわ。でも、すぐに諦めて引き下がる性分じゃないの(笑)。今度は自分の考えを手紙にして、彼に渡すことにした。まず夫の稼ぎには何の不満もないこと、ずっと夫に感謝していること。でも家の仕事以外のこともしてみたいって。それから、女性でも社会に出て立派にやっている人は大勢いること。自分も、女だからと甘えたりはしない。娘達が勤める頃、女性が活躍しやすい社会になるための基盤も作りたい。丁寧にそう綴ったの。また、近所で働くことで、お世話になってる町の人達にご恩返しもできるでしょ。戦中戦後って、子供を育てるのに周りの人がいろいろ手伝ってくれた。色々世話してもらった。今よりずっと絆が深かったのね。それに対してお礼らしいお礼もできてない…ってずっと思っていた。それでは申し訳ない。だから是非、町に役立ちたいって書いたの。そしてそれを、夫の文机に置いた」「その日の夜、夫は帰宅してすぐの私を呼んでくれてね、彼は柔らかくしゃべり出したの。『私は、お前が給料に不満を持つような主婦ではないと分かっている。それから、働く女性を認めないわけではない。職場にも、職務を全うする女性達はいる。私は、手早く心のこもった仕事をする彼女たちは、もっと大事な部署を任されてもいいとさえ考えている』って。ね、素敵でしょ。あの時代ここまではっきり言える人は少なかったのよ。でもそんな人がなんで私が働くことには反対なんだろう ??」　「『しかし、今お前が外に出たら、やはり家の中は混乱するだろう。それが分かっているのに、働いてもいいとは言えない。どうしてもというなら、相手様に迷惑でない期間試しに働いてもいいが、やはり続かないような気がする。続かないと分かっていて、働いてもいいというのは、変だろう。考えてほしい。三度の食事を心をこめて作ることが出来なくなるぞ。そうじも洗濯も、とにかく急いでやるようになる。家の中の仕事は尊く奥が深い。しかしお前の心くばりや身体には限りがある。働きだしたら家に残す心は減らないか??子供達の躾も、まだまだ途中だ。子供を甘やかすつもりはないが、教えることがまだあるうちに親が家にいないのはどうだろう。私だってやれることはする。それはやぶさかではないが、仕事がある以上それにだって限りがあることは忘れないで欲しい。日頃を見ていて、お前ならその仕事はきちんと出来ると思う。ただそのために、自分にしか出来ない仕事が、おろそかになるかもしれない」「『それから、恩返しはうちに居てもできる。家で、お前一人でできる恩返し。それは、この土地の人と愛情をもって接し、ここのものをおいしく料理して食べ、この土地に似合う装いをして暮らし、生活を慎ましくも深く楽しむ事だ。その気持ち、たたずまいを人に伝える。これを続けるのは大変で、そして大切なことだ。でもお前ならそれが出来るはずだよ』」　「次の日から、私は家の中でまた働きだしたんです。質素な中でも装いを気にかけ、台所では土地の作物を使い続け、子供といろいろ話すようにしました。それ以降は親戚や義理の両親の介護もあって外に出ることも少なかったけれど、いろいろあってもすごく幸せでしたよ」私は地域に貢献した人、ということで環境、教育、老人問題などに取り組んできた人を想像していた。あるいはお店を出店したとか、郷土史の作家さんとか。なんて浅はかな考えだったんだろう。家にいたって、地域に貢献することはできるのだ。さまざまな事情がありとくに際だった活動はできず、表向きは「そこに住んでいる」だけでも、その土地なりの品のある暮らしを営むことはできる。かっこ良く言えば、その土地に吹く風を美しく纏うこと、と言い換えることもできるだろう。これはめったに言及されることはないけれど、誰もができる、大切な地域貢献ではないだろうか。　人は、自分なりにそこに「いる」楽しさや豊かさを、表現することができる。その人のスタイル、オリジナリティーを日々の暮らしの中で鍛えれば、その人の存在自体が非常に洗練された形で人の心になにものかを届けることができると思うのだ。それはあえて分野を分ければ「芸術」に近い行為かもしれない。昔の人は、みなさりげなくそれを実践していたのかも知れない。人間は、文字や形以外の情報からも強い影響を受ける。ことに、現代のように直感に訴えかける物が大きな力を持つ時代、地域に数人いる粋な人、品格のある人の存在は大きい。もちろん、その言語になりにくい雰囲気や存在感を評価し、言語化してくれる人間もとても重要だけれど、その「人」の存在は他のものでは補えない。お金にも形にもならないが、その人がいることで、その町が好ましくなる、ということが確かにある。この女性はわけもわからず夫に服従していたわけではないと思う。夫のせりふには確かに「古いなあ」と思わせられる節もあるが、彼は「言いくるめよう」なんてみじんも思っていなかったのではないか。第一彼は家の仕事の大切さを、きちんと認めている。夫の一言から彼女が何をくみ取ったのか正確に推測はできないが、彼女は外には出なかったけれど、結局非常に地域に貢献した。彼女がいたことで、町に住むことを喜び、またそこを離れた今も町や彼女を懐かしむ人は何人もいるという(これは食あたりから生還した知人が教えてくれた)。そしてそういう人たちは、一度好きになり、愛着を持った町に何度も来て、店などを利用し、その風景やたたずまいを人に伝えていくという。地域とは、単なる居住空間ではなく、土地と人の匂いとがあいまったものだ。そしてその匂いが馥郁と薫り高いほど、やはり人は集うし、懐かしく思われ続ける。この女性は死ぬまで地域のためになる人なのかもしれない…いつでも自分にはできることがある、それを忘れないでいたい。なーんてことをまとめた文章なのだ。しかし私が録音し、結局ひとりでまとめた文章は活字になることはなかった(知人の食あたりはかなりひどく、まとめ作業に参加できなかったのだ)。そのフリーペーパーが突然なくなることになったのだ。原稿は使い道がない…うーむ、誰を恨んだらいいのか。話してくれた方は「あらあら～仕方ないじゃない。あなたも大変だったのにね」なんて微笑んでくださったけど、本当に申し訳なかった。彼女に話しを聞きたい!!　と取材を申し込んだ慧眼の知人も、本当に悔しがっていた。私は働いている女の人、お母さんが大好きだ。大体私自身も、子供はいないが、働いている。その家にはその家のスタイルがあり、正解なんてないから取材した女性のようにしよう!! なんて全然思わない(時代や生活環境だって今と四十年前では大違いだしね)。ただ最近、働いている人の方が「威張れる」雰囲気があるような気がするのだ。実際職業欄に「主婦」と書くことの辛さを相談されたこともある。でもそれってヘンではないですか。いわゆる「夫」はもちろん、主婦に頼りまくっている人ってすごく多い気がするのに。大切なことをしているのに、その実体はきちんと評価されていない(あまりにも主婦に多様性があって「評価が困難」でもあるのだろうが)。評価されないと、ついつい自己卑下がはじまってしまう。その難しい立場を、可能なかぎり「言語化」して正統に評価できないと、なんかやばいのかもしれないな…と最近思う。まあ芸術家なんていつも「なんか上手く表現できない生き物」ではあって、主婦もそれに似ているのかも…とも思うのですが。一方で「ゼブラーマン」(小学館)を読みつつ、「自分のうちさえよければいい」という発想に陥りがちな主婦、女性の危険性についても考えるのですけどね(人のことは言えないよね)。結論としては、思考をひとまかせにしないできちんと考えようよ(野宮もね)!! っていう月並みなものですけど。でもこれって本当に難しくて。長くなりました。まだまだ原稿整理は続きます。とほ。

April 12, 2005

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