#1 いつか、どこかの町で
かつて、僕は詩人として、あるいは小説家として取材活動を行っていました。文末は過去形ですが、いまだ、辞めたつもりはありません。僕はまだ、どこかへ行けるし、何かを思うことが出来る。そのうちにきっとまた、何かを書きます。「いつか、どこかの町で」では、当時取材で撮影した写真を公開いたします。2015.07 京成立石駅付近2015.07 同上2015.07 同上 立石に何らかの思い入れがあるのかと問われれば答えはノーである。僕は江戸川区の小岩に生まれ、育った。近いといえば近いが歩いていく距離かと言われれば、ちょっと微妙だ。 小岩生まれにとって、立石はいつも通り過ぎる場所だった。奥戸街道でまっすぐ一本。あるいは京成線で……いずれにしても、用事があって立ち寄るような先を持っていなかった僕にとっては心理的に遠い場所。だから、写真を撮りにいった。 2015年の僕は、社内の人事異動で管理職になった直後だった。歩きながら何かを考えたい、そんな気持ちになることも多かったし、この頃、理由があまり思い当たらないが、無性に「どこか」に行きたかった。行ったことのない場所。あるいは行く理由のない場所。とにかく、「ここ」ではない場所。それはつまり、自分の属する世界とは異なる場所。だから、そんな気分や環境の中で、立石が選ばれたのはある意味では必然性があったのかもしれない。平日休みの日。七月下旬の午後。立石はとても静かで、とても暑かった。