朝になって目が覚めると、
あたしはトモくんに腕枕をされていて、
彼の白い顔がジッとこっちをみていた。
「・・・おはよ。」
寝ぼけたままで彼に挨拶をする。
カーテンの薄い色から溢れる光がとてもまぶしくて、
うまく目を開けることが出来なかった。
怒ったような表情で、身動きをしないトモくんを、
あたしも無言で見つめている。
綺麗な顔。
雑誌のグラビアにでてくるモデルさんみたいだ。
寝癖がついて乱れている髪ですら絵になっていた。
「ひどいよ、小百合ちゃん。」
「・・・え?」
彼の口元がかわいらしくとがる。
「どうしたの?」
いくらか覚めてきた頭が少し動き出して、
まわりの景色がよくみえるようになってきた。
シーツからでているトモくんの上半身は裸みたいだ。
「あの状態で眠くなるなんて、
俺、男として自信なくしちゃうよ。」
あの状態っていうのは、
夕べ一緒の湯船につかって抱っこされたまま、
うとうとしてしまったことだろう。
熟睡したわけじゃなかったけど、
そのあともなんだかふらふらしながら服を着て、
髪も乾かさないままですぐにベットに横になった。
とても眠かった。
「あ・・・ご、ごめんね・・・。」
あたしがそう言っても、
「謝られたって、よけいにヤだ。」
彼は許してくれない。
「俺はあの後、
あなたの寝顔見ながら一人で処理したんだからね?」
「え・・そ、そうなんだ・・。」
あたしの背中にあたっていた異物感がよみがえった。
盛り上がっていた彼の体の反応のことを、
あたしは考えていなかった。
「怒らないの?」
枕をしてくれている彼の、反対側の手がのびてきて、
横になったままあたしの頬を触る。
「だって・・あたしが悪かった・・かもしれないし・・。」
あたしがそう言うと、トモくんは少し真剣な顔になって、
そうだよ、とはっきり言ってから、
「だから、今度はあなたが抜いてくれる?」
頬に触れている指先で、あたしの唇をなぞる。
意味がわかってから出来るだけ早く、
あたしは首を横にふった。
「なんで?お風呂は入れたのに。」
それとこれとは話が違う。
なんで一緒にお風呂なんて入ったんだっけ。
そか、
あたしは昨日つきあっている彼氏と喧嘩したことを思い出した。
疲れはてて眠くなるはずだ、かなり泣いたから。
「あ~、また彼氏のこと考えてんでしょ。」
あたしの心を見透かしたみたいに、
トモくんがまた拗ねた声をだす。
「だって・・・。」
「ちゅーしてくれたら許してあげる。」
少し冗談みたいな口調で、真剣な眼差しをした彼が言った。
「俺がほっぺにしたことあるし一緒だよ。」
ためらうあたしに補足がなされる。そして、
「してくれないなら、
眠ってる間に、俺が勝手にしちゃうかもしれないけど、
いいの?」
おどし半分の強制も加わった。
腕枕をはずして起き上がった彼は、
あたしの体も無理やり起こして、自分の足の間に座らせ、
あたしの腰を両手で抱いてから目を閉じた。
「はい。」
逃れるきっかけを完全に失ったあたしは、
「う、動かないでね。」
ちょん、と彼のおでこにキスをしてみた。
自分の中で許せるギリギリの範囲だった。
「それだけ?」
そっとマブタを開けてトモくんが言った。
「・・・・それだけ。」
なんだか顔があったかくなってしまう。
それ以上を求められたらどうしようと心配になったあたしは、
きっとまた泣きそうな顔をしていたに違いない。
こわばってしまう体を気にしていると、
「そんなに好きなんだ・・・。」
トモくんはそう言って、あたしの体を抱きしめた。