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テーマ:夢*日記(5)
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よく晴れた日でした。
空がぬけるように青いっていうんですか? 私の好きな、暖色の水色の空。 日差しがまぶしくて、日影と日向の境は思わず目を細めてしまうような。 そんな中を赤い色をした風情のあるバスが、走っています。 静かな、派手ではないこじんまりとした街中を。 私はそのバスに乗っているのです。 ふだん観ることのない景観を楽しみながら、私はバスの窓辺に頬杖をついて、吹き込んでくる爽やかな風を吸い込んでいました。 すると、私の後ろの席のふたりの話し声が聞こえてきたんです。 「見て、あの建物。あの場所にはね、時間があるのよ。」 と、少し年のいった女性が言います。 ふと後ろを振り返ってみると、女性はまっすぐに通り際に建つひとつの建物を指差しています。 眩しい、眩しい、日光の光の中に、それは建っていて・・・ 淡いベージュとモスグリーンの色がところどころに入った、数階建てのこじんまりした・・・あれはアパートなのでしょうか。 バスが止まったので、私はその停留場で思わず下車していました。 建物はごくごく普通のものだけど、木造でいい感じに古ぼけていました。古いのにこんなに可愛らしく見えるのは、ベージュとモスグリーンの淡いコントラストのおかげかな?なんて想いながら、私はとても幸せな感覚に包まれていました。 入り口は大きな扉が2枚。きしむ音を立てて、私はそのドアを開けて、引き寄せられるように建物に入ってゆきました。 中もものすごく明るかったです。 夏の日の一番暑い日のような日差しが燦々と窓から差し込んできているんです。 二階へあがると、すぐに部屋があって、私はそのドアを開けて部屋の中へ進みました。 そこには、母が立っていて、部屋の様子は実家の二階の部屋そのものでした。 昔、母が寝室に使っていたときのままです。日差しはまだ燦々とふたつの窓からさしこんでいて、部屋も暖かかった。 私がだまって母のそばに立つと、 「一時、持ってたお金が650万まで減ってね。でも、なんとかがんばってまたもとにもどしたんだよ。」 母はそう言ってから、手のひらを開いて、 「いまじゃ65円しか持たないけどね。」 と微笑んだ。 私はそのまま母の顔がよく見える位置に数歩進んで、母の手を見た。 なつかしい母の手。あの、握り締めた感触が甦る。母が、亡くなった日の。 でも、今見る母の手はとても暖かそうで・・・やわらかそうだ。 苦労してる手ではなく、癒された手になっている。 そこに、たった数枚の小銭が握られていた。 でも私はその言葉にこめられている母の想いを聞いたような気がしました。 「それでもことたりる場所に、いまはいるのよ。」 と。 母は、そう伝えたかったのだと想う。 「そうだ。」 母がまた話し始める。 「寝巻きがねぇ、ばあちゃん(私の祖母)のがあると想ったら、なかったんだよ。聞いてみたんだけど、とっくに処分したって、係りの人が言うんだ。ばあちゃんのがあると想ったから、持たずに来たのに。持ってくればよかったねぇ。」 私は、どうすれば、母のもとに寝巻きを届けることができるのかを静かに考えた。 そして、目が覚めた。 あの建物の中には、バスの中の女性が言ったように、「時間」があった。 それはとても大切な、母との時間でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
June 5, 2005 02:39:33 PM
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