カテゴリ:エッセイ集
「小さなころから、学校嫌いだったけど、この歳になって何だか学校、好きになってきてね」という冗談を、同僚にも生徒にもよく言うのだが、含意は、生徒に対しては「別に学校なんか好きにならなくていいからね。というか、おまえらの歳で学校好きっていうのは、ちょっとね」である。同僚には、特に含意はない。彼らが、学校が好きだろうが嫌だろうが、それは彼らの問題であって、自分の問題ではないからだ。ただ、「好きであっても、仕事をちゃんとやってから言え、オマエ」という気持ちはある。
RCサクセションを初めて聴いたのは『ボクの好きな先生』という歌だった。「煙草を吸いながら、あの部屋にいつも一人。ボクとおんなじなんだ。職員室が嫌いなのさ・・・」というような歌詞だったが、そんな先生が自分にとっても好ましい。 が、もちろんそうはなれるはずもなかった。歌詞のモデルは実在した人物だというが、それは日教組が大きな力を持ち、教育委員会と対峙していた時代に、学校空間のエアポケットのような場所はいくつかあって、特に旧制高校では教員も好きなことをしていられたし、また教科の力も十分あり、管理者である校長も一目置き、生徒に支持されていたからこそ、そういう場所に生息できたのだろうと思う。 学園紛争が一段落したころ、田中角栄が「人材確保法案」によって、教員の待遇を普通の公務員以上のものにして、全国の旧師範学校、つまり教育大学卒業者が幅を利かせるようになり、実力もないのに楽な勤務をし、市役所なんかよりはちょっと高い給料をもらう「教育公務員」が生まれた。件の『ボクの好きな先生』は70年代だったと思うが、日比谷高校など東大合格者が多い都立高の教員だった。「ボクの好きな先生」は、確か芸大卒だった。地方の公立中学や高校にはいるはずもないような人材だったと思う。 が、とにもかくにも自分は教員になってしまったのだが、まるで「志」というものがない教員だったのは確かである。 まあ、こんな話を人生の「終活」の一部として書き綴ってみようか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.04.09 05:26:38
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