カテゴリ:Midnight
鈍色の空の下、夜半から降り出した雪は白く道を覆い、白はやがて色を失い大地を凍てつかせる。
サク、サク、サク、ベチョ、サク、ベチョ、ベチョ…… 鈍色の空を映した場所に足を踏み入れるたびに体は冷え、学校に戻った頃には足の指先が痺れていた。 ストーブの側で凍った足の指をゆっくり溶かしながら、保険の先生が淹れてくれたコーヒーを飲む。冷え切った手は差し出された温かいものを思わず突き放そうとするが、温かさに身を任せているとやがてその温かさに馴染んでいき、手だけでなく体全体も和んでくる。 季節はずれともいえる突然の大雪は、あとは春を待つばかりと思っていた身にはとてもつらい。ただ、どこかにある温かさを感じながら、じっと去るのを待つだけだ。 翌日、すっきり晴れ渡った空には昨日のような暗い雲はなく、空の青には春の色が増していた。一面覆っていた雪も今はほとんどなく、日陰に残ったわずかなものだけが昨日の寒さの名残を留めていた。 まるであの鈍色の空が、人の心を凍てつかせるためではなく、やがて来る春の温かさがより心に染みいるよう、大切に思えるよう、最後の雪を降らせたのではないか。 そんなことを考えながら、駅への道を歩く。 最後の雪がとける頃、あの寒々とした日は遠い彼方へ消え、やがて春の温もりに包まれる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.03.07 03:27:32
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