カテゴリ:Nostalgia Sketch
気温は氷点下だったはずだけれど、朝から降り注いだ日の光のせいか、学生服だけで外にいても寒さを感じず、見上げた空には次の季節の気配が漂っているようにも見えた。
内の学校の卒業式では、式が終わった後廊下の両端に並ぶ2年生(体育館の大きさの関係で1年生は出席しない)のアーチをくぐって生徒昇降口を出る。そしてそのまま外で卒業生同士、あるいは先生や後輩たちとしばし歓談するというのが伝統だった。 寒がりで厚手のコートなしには冬は外を一歩も歩けない僕でも、この日は寒さも忘れて目について友人、恩師たちに声をかけ、無事卒業を祝福し合い、今だから言えるわびを入れ、未来へのエールを送りあった。 ずっと気になっていたけれど声もかけられなかった同級生を目で追い、ずっと僕のほうを見ている後輩の姿を認めつつも、申し訳なく思いながら背中を向けたりもした。 しばらくそんなさざ波が続いたが、やがて少しずつ校舎に吸収されていく。 僕も教室に戻ろうかと思ったところで空を見上げた。 水色に少し白を混ぜたような空に、辺り一面覆った雪と同じくらい白い雲が浮かんでいた。 その雲は冬の間ずっと空を隠していたどんよりしたものではなく、ちょっと気の早い春の雲ように見えた。 そんな青空を見ていたら、視界の端で誰かが手を振ったように見えた。 額に手をかざしながら見ると、図書館の窓から支所の先生が僕のほうを見ていた。 3年間ずっと入り浸り、ひょっとしたらこの学校で一番僕のことをよく知っている先生。 大事な人に挨拶するのを忘れてた。 僕は慌てて校舎に戻ると、図書館への階段を2段とばしに駆け上がっていった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.03.15 01:13:13
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