カテゴリ:Night
学年末試験が終わる頃から、クラス担任を持つ先生の動きが慌ただしくなる。
何度となく外線に繋がる電話の受話器を取り、深刻な顔で話をしたり、つま先をゆかに打ち鳴らし、ある時は舌打ちやため息とともに受話器を置く。 学年末で生徒たちの進級や留年を決めなければならない時期になり、長期欠席や休学している生徒の保護者に今後どうするか話し合わなければならないからだ。 1年や2年には、全日制なら学校全体とほぼ同数かそれ以上の休学者や長期欠席者がそれぞれいるから、その担任の先生たちは1日に十回以上電話をかけることもある。 もちろん、そうした生徒の保護者とはこれまでも連絡を取ってきている。 だが、学年末となると、それまでは様子を見たりらちのあかない話を続けていたようには行かず、ある程度の結論を迫らないといけないからだ。 そうした生徒が全員留年ということになったら、次年度にその学年の担任となる先生に全部受け継がれる。 「○○さんには迷惑かけられないからな」 4月から別の学校に異動になる先生がポツリと呟いた。 電話をかけ、保護者と面談しても、4月から生徒が学校に通うようになるケースはほとんどない。電話や面談で改善されるなら、とうに学校に来ているだろう。 つまり、決断を迫るということは、そういうことだ。 夕方、大粒の雨が窓や屋根や地面を打つ音が聞こえる中、2年の担任の先生が受話器を置いた。 「教頭。明日の8時に××が親と一緒に挨拶に来るそうです」 一瞬静まりかえった職員室に、雨の音が一層強く響いた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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