カテゴリ:Day
明るい日差しの下、春の絵の具をのせた風が休日の公園を走り、芝生や花壇は鮮やかに彩られていく。
約束の場所に着くと、まだ少し時間があった。 ただ電車の接続の関係でこの時間になったんだと、誰に向かってのものか分からない言い訳を呟く。 念のためと思って着てきた薄手のコートを脱いで左手にかけてから、ハンカチを取り出して眼鏡を拭く。一応出がけにレンズを洗ってきたのだが、よく見ると縁にほんの僅かな油汚れが残っていて、何度となく強めにこすってもなかなか落ちない。 諦めてハンカチをしまい、替わって今度はHDDプレーヤーを取り出した。 『なに聞いてるんですか?』 そう聞かれた時のために用意した曲を確認してからHDDプレーヤーをしまった。耳にはゆずの歌声が聞こえている。いつもの槇原敬之やジャズは、現在封印中。 HDDプレーヤーをしまうと、途端にやることがなくなった。 一応読みかけの本はカバンの中にあるのだが、開く気にならない。 ぼんやりと公園を行き交う人たちを眺めていた。 どの顔も笑顔で、まるで春の訪れを祝うためにここに集っているように見えた。ふと、「日曜日の電車はみんな優しく見えて、どんなに混んでても穏やかに揺れている」という槇原敬之のフレーズが頭の中を流れる。 いつもは苦手な人混みも、今日はそれほどいやに思わずに済みそうだな、なんて思った。 そんな風にぼんやりしていると、約束の時間が近づいてきた。 駅に続く道のほうに目をやる。 春の公園に新しい色を添えるように、 見慣れたものとは違った服を身に纏って、 彼女が駆けてくる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.03.26 03:36:43
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