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駆け出し記者の一期一会

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2007年11月02日
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カテゴリ:パフォーマンス
金曜の夜、横浜までちょっと変わったコンサートに行った。

声とピアノ
「音の間 ことばの魔」
芥川賞作家・多和田葉子の朗読とジャズ・ピアニスト・高瀬アキの即興。
しかも、場所はギャラリーのアート空間の中、という異色のコラボレーション。
ギャラリーにはアーティスト・塩田小春による巨大インスタレーション「沈黙から」を展示中。
3人とも現在ベルリン在住で、国際的に活躍中である。

というチラシを一目見て、絶対行きたいと思った。
そして、エディターに
「こういう面白いパフォーマンスがあるんですけど」と言って
先々週イベント告知欄WEEKEND SCENEに掲載させてもらった。

山下公園の向かいにある神奈川県民ホールギャラリーは
開演30分ほど前にはすでに階段に沿ってもう行列ができていた。
当日券は立見席のみ。完売した前売りは全席自由席。だから並んでいるのだ。

階段を下りていくと、薄暗いギャラリー中央に焼け焦げたピアノが置かれ、
そこから噴き上げられたような糸が天井に達し、それが壁に続いて一面に張り巡らされている。
蜘蛛の巣につかまってしまったような感じだ。
その隣にもう一台のピアノが。これを高瀬アキさんが弾く。
客席はアート作品を取り囲むように並べられたパイプ椅子がざっと300ばかり。
ピアノの傍らに立った多和田葉子さんの朗々たる声が響いた。

「あなたはピアノという恐ろしく長い廊下を与えられ、素足でその上を歩いて行く。
足の裏には音を読み取る目玉が無数についている。・・・」

焼け焦げたピアノというアートにインスピレーションを得て、
今夜のために書き下ろしたテキストは、言葉を自在に操って戯れ、
言おうとして言えなかった感じをうまく言い当てるような
気づいてもいなかった違った断面から真実を暴き出すような
刺激的なものだった。

「唐風」という作品には、「からっからっ」というリズムが何度も出てくる。
「卵のからっ」とか、「喉がからからっ」とか。

「四字熟語」では、高瀬さんが熟語を言うたびに、多和田さんが突っ込む。
漫才のような楽しいノリに客席から時折笑いもおこる。
「馬耳東風」
「馬は違った考え方をするので、こっちの話にうなずいたりしません」
「天涯孤独」
「案外孤独じゃない」
「海千山千」
「昆布みたいな人、熊みたいな人」
「千差万別」「魑魅魍魎」
「いろんな人がいますねえ」
・・・といった具合に。

「もの、がたりない」から「ものがたり」をする。
「ドレミファソラシを月火水木金度日に当てはめてみてください。
日曜日の太陽の明るさはどんな音?日曜日と月曜日を並べた明るさは?」
「鬼が酒を飲むと醜い。鬼がなにか云うのが魂です。
額から角がはえてないと鬼じゃないというのは偏見ではないでしょうか?
赤鬼も青鬼もいい人なんです。悪いのは桃太郎だけ」

・・・うろおぼえだ。違っているところもいっぱいあるだろう。
とにかく終始こういう感じ。
活字じゃなくて、耳から入る言葉は聴いた端から消えて行くのだが、
もっと言って!もっと何か言って!と思わずにはいられない。
言葉の魔力に引き込まれるのだった。

その言葉に感応してダイナミックにピアノを弾く高瀬さん。
楽譜通りに弾くのとは全然違ったジャズピアノの即興演奏は、
憑依状態の巫女のようで、時に軽快なリズムだったり、時に美しいメロディだったり、
あるいは、激しくたたきつけられる不協和音。
次に何が出てくるかわからない。合ってるのかミスタッチだったのかもわからない。
そんな音たちが、多和田さんの紡ぐ言霊と絡み合って踊り狂う。

ちょっとコワかったのは、変な音大の話。

・・・教室のグランドピアノを決して弾いてはならないことになっていた。ある夢遊病の学生が夜中に寮からさまよい歩いて、教室のピアノの鍵盤を触ってしまった。翌日、彼はグランドピアノの上に縛りつけられ、ほかの学生達は実家に帰され、先生達は休講になった。学長はピアノにガソリンをぶっかけて火をつけた・・・

ええーっ!? その時だったか? 高瀬さんが弾いているグランドピアノのフタの下の
ピアノ線が並んでいるところに20個ぐらいピンポン球が投げ込まれた。
ピアノを弾くと、球が触れ合ってカシャカシャカシャカシャーーーと鳴る。
高瀬さんのソロが続く。勢いよく鍵盤をたたくと、ピョーーン!
白い球が飛び出してくる。

言葉でこんなに遊べるんだ。。。
あるまとまった内容をきちんと説明する道具として
なるべく正確に言葉を使おうとする、のとは違って、
言葉自体から出発しているように感じた。
まず一つの言葉を発してみることで、次の言葉が呼び出され、
次々に出てくる言葉の連なりが、豊かなイメージを呼び覚ます。
そういう言葉の使い方が新鮮である。

終演後、お二人に会いに行った。大勢のファンに取り囲まれているのを気長に待って、
持参した新聞記事にサインしてもらった。ミーハーだな。。ま、記念記念!!

ベルリン時代の友人でドイツから発信しているライターがいる。
息子達を通わせていた日本語補習校の、長男の同級生のお母さんである。
彼女が親しくしている多和田葉子さんの話をしてくれたのをまぶしく聞いたものだ。
今日お会いできて嬉しかった。文章や朗読のときには毒を含んだ鋭さに魅了されるのだが、
お話してみると、気さくで明朗なしっかり者という印象を受けた。
「がんばってくださいね」
なんて励まされてしまった。
あらためて、言葉に目覚めさせてくれたことに感謝しよう。






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最終更新日  2007年11月05日 23時21分42秒
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