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駆け出し記者の一期一会

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2007年11月09日
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カテゴリ:展覧会
「私達を取り巻く自然や社会に対して、デザインはどのような方向性を示すことができるでしょうか?」

六本木の東京ミッドタウンと合わせて2007年3月にオープンした
デザイン専門施設21_21DESIGN SIGHT。
日常生活に根ざしたテーマを取り上げて、デザインについて考える場所。
それも、単に「デザインを見せる」展示ではなく、
「デザインによってテーマを示す」という新しい視点の実験なのだ。

オープン第2弾はのテーマは「水」。
「おいしい牛乳」や「ロッテのガム」のデザインで知られる
グラフィックデザイナーの佐藤卓をディレクターに、
文化人類学者、写真家、照明デザイナー、デザインエンジニアなど、
多分野で活躍する人々でチームを結成し、
さまざまな角度から人と水との関係を考える。

まず、建物の外観が独特なのだ。

CIMG0459.JPG

安藤忠雄設計の低くて横長で屋根が地面に向かって傾斜する基地のような建物が、
ミッドタウンのメインの建物の脇に作った緑地帯に寝そべっている。
え?これだけ?と一瞬思うが、中に入ると、下へずんずん降りていく階段があり、
地下に不思議な空間が広がる。ほーお、迷宮探検のようだ。

階段から続く通路の壁に並ぶちょっと太目の試験管に顔を近づけると、
中に妖しい文字が浮かび上がった。
「涙は水棲動物の証し」
試験管1本1本に違うことが書いてあり、次は次は?と読みたくなる。
「日本の上空には常に100億トンの水が浮かぶ」
「誰もが誰かの川下であり、川上である」
「近代は水に背を向けた文明である」
「すべての人生は水の中で始まる」
「スローな水のデザイン」

ふーん。誰の言葉なんですか?と聞いたら、係のお姉さんは、
「今回のコンセプト・スーパーバイザーの文化人類学者 竹村真一先生が中心になって出した
ムック『water [水:mizu]』の中に出てくる言葉なんです」
と答えた。そうか。その本、買って帰ろう。

その竹村先生の言葉が地下一階の真ん中の壁にあった。

「この世で最もありふれた存在でありながら、最も“有り難い”物質である水――。」

その先の薄暗い空間を探検していると、いろいろな仕掛けがあって、
水と人間との関わりをいろいろ考えさせられるようになっている。

食堂のメニュー見本が並び、券売機で、たとえば牛丼のボタンを押すと
ジャーッと水の流れる音がして食券が出てくる。
「2000リットル」という印字。牛丼一杯を作るのに必要な水の量だ!
牛の餌を育てる水、牛が飲む水、米を育てる水…などなど。
牛肉を大量に輸入するということは、大量の水を他国に頼るということでもあったのだ。

こんなふうに水で世界を眺めてみると、どんな世界が見えてくるのか?

メインギャラリーには遊園地のコーヒーカップのような形の水盤が10個ほど並び、
覗き込むと、昔話に出てくる魔法の泉のように「何かが見える」ようになっている。
台風の目だったり、雪の結晶だったり、水没した村の映像だったり。
「さらさら」とか「ぴちゃぴちゃ」という水の擬態語。乱舞する文字を思わず追ってしまう。
水の分子構造の水素と酸素の動きは、社会における人と人の結びつきにとても似ていて、
今こっちと手をつないだかと思えば、次の瞬間には違うヤツとつながっていったり。

「水の問題はいまに始まったことではなく、むしろ人類史は、
水の確保と共生のシステムを絶えずデザインしなおしてゆく歴史でもありました。」

竹村先生のコメントが興味深い。

「日本も、実は水が豊かな国ではありませんでした。
急峻な地形ゆえに、降った雨はあっという間に海へと流れだし、洪水と渇水をくり返す…。
このファストな水を日本人は何百年もかけて、川のつけ替えや水田という自然のダムを使った
「もたせ」の技術によって、スローな水にデザインしなおしてきたのです。」

ここで「デザイン」という言葉が使われていることにハッとした。
そうか。「デザイン」というのは、何もモノの形をいうだけではなく、
ある対象との関わり方を形作ること、というもっと広い意味があったのか…!

「…現在の水道システムや水との疎遠な関係も、リデザインしうる対象として意識しなおせる。」

今回のプロジェクトのシンボルマークは、佐藤卓のデザインによる「さかさかさ」。
人が逆さに傘を持っている姿。白のバックにブルーのマークが映える。

コピー ~ CIMG0450.JPG

「雨水利用を呼びかけるマーク」として世界で共通に使用されることを願って制作された。

「雨をよける傘は、逆さにすれば雨を集める道具にもなる」

なんと!素晴しい発想の転換に拍手!!

様々な国の人が傘を逆さに掲げて立っている写真が並んでいた。
ドイツ、ブラジル、ネパール、ケニア、中国…老若男女が逆さの傘を手に、
にっこり笑っている顔は力強いメッセージで心を温かくしてくれる。
こんな簡単なことで、地球の水を守れるかもしれない。
こんな簡単なことで、世界を少し変えられるかもしれない。
こんな簡単なことなら自分にもできるかもしれない。
こんな簡単なことなら呼びかけることができるかもしれない。
賛成する人の輪ががいろいろな国に広がって行くかもしれない。

会場入り口の天井から傘が吊り下げられている。
自分がその下に立ち、写メで送れるようになっているのだ。

傘を逆さにしてみる。
こういう発想の柔軟さが大切なんだな・・・!

私達を取り巻く自然や社会に対して、
デザインはこのように発想の転換や方向性を目に見える形で示すことができる。

冒頭の問いに対する回答とメッセージが伝わってきた。

遊び心もいっぱいの不思議空間で、水のイメージと戯れ、
母の子宮にいた頃の水の記憶を呼び覚ますような水音にしばし目を閉じる。

この大切な地球の水をぜひとも守らねば。
そのために私には何ができるか?
考えてみようと思えるのだった。

「water」
21_21 DESIGN SIGHTにて、1月14日まで。






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最終更新日  2007年11月10日 17時15分28秒
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