カテゴリ:書く
さて、そろそろ帰ろうかと思ったところで、原稿の手直しが入ってしまった。
「現代の工芸は、長い歴史と伝統をふまえつつも、時代や社会の変化、さらには既存の造形芸術の影響を受けながら、工芸としての自立と拡張を目指して発展してきました」 やっぱり引っかかった! こういう抽象的なリリースは要注意だ。 しばらく美術館に行けなかったもので、資料に基づいて書くしかない。 「造形芸術の影響を受けながら発展してきました」 ぐらいの言い方は大丈夫かな…と思い、 「造形芸術」を和英で引いてみたらplastic artsという語。 英和で逆に引いたら「造形芸術」とちゃんと書いてあるので、それを使ったら、 エディターからチェックが入る。 「“plastic arts”ってなんだ?」 そんな言葉知らんと言うのだ。 「そう言ってもイングリッシュ・スピーカーにはなんら意味をなさない」 とばっさり斬られ、さらに、 「ちょっとその席代わって」 と椅子を乗っ取られ、カシャカシャカシャカシャと書き直すではないか。 「伝統的なメソッドに基づきながらも、工芸は時代と共に変化し、 新しいテクノロジーによって古い素材を扱いながら発展してきた」 えーっ!新しいテクノロジーとか古い素材なんてどこにも書いてないじゃん。 彼だって、その展覧会を見たわけでもないし、日本語を読めないので リリースの内容だって知らないというのに、なんでそんな自信たっぷりに作文できるわけ?! (どんだけ~) 「リリースに書いてあることとだいぶ違いますが」 と言ったら、彼は作品の画像を指差しながら、 「僕はこういうモノを作る工芸作家と話したことがあるし、リリースに何と書いてあろうが、 だいたいこういう感じで正しいと確信しているよ」 と答えた。はーー ・・・この不毛なやりとりの後、会社を出て電車の中でどよーーんと落ち込んでた。。 確かに何のことやら日本語でも微妙なリリースだった。 その書きぶりを私がことさら弁護するなんてヘンだよねー そういう話にならないように、「突っ込まれない原稿」を組み立てるのが賢明というもんだなあ… 本日の教訓 1.そもそも日本語でもわかりにくい文章をそのまま英語に訳そうとするな。 2.リリースにとらわれすぎず、自分にもガイジンにもわかりやすいシンプルな説明をする。 3.和英辞典に載っていても実際に使われる言い方かどうかネイティブに確認すること。 和英辞典の例文をそのまま真似するのはキケン ということぐらいはわかっているつもりだったが、 語法の「適切さ」を判断するのは、母国語でないとなかなか難しい。 それにしても、「造形芸術」ってなんだ? 「造形芸術」について英語で語りたい場合には何と言うのだろう? ただのartでいいのかな。。fine artとか。 それはそうと…やっぱり実物を観なきゃ。 リリースだけが頼りだと反論もできない。 展覧会めぐりを再開しよう。 美術館へ行こう! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年01月09日 23時53分11秒
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