083:害虫
滲む視界の星空は今日も澄み渡ってとても綺麗だった。もうないまぜになって押し寄せてくる感情の波はだいぶおさまって吐き出した息で煙った空はいつになく白くて不透明だった。手が冷たいとか寒いとかそんな感覚はとっくになくて頬だけがこするたびにチクと痛んだ。足をとめず、白波から逃げるようにいつもよりずっと速い回転のコンパスと回路。それでも捉まってしまうたびに上を向いたり首を振ったりしていた。何度も浮かんでくるゴメンナサイとアリガトウが届くことも伝わることもないのだと街並みのキラめきを滲ませる。きっと言ってはいけない言葉がこみ上げてはごめんなさいに変わった。今日も明日も明後日も何事もない風で平和に過ぎて誰も傷つけないという自我は結局エゴの塊だってわかっていたはずなのに。その笑顔を奪うのはいつだって僕だ。