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2006年02月13日
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カテゴリ:短編
「キミの瞳が映す人」2 (昨日のつづき)




バレンタインデーの放課後。
静かな教室で、キミは口を開いた。

「あの、それじゃあ……これ、アツシ君に渡して……」

そう言ってキミは、チョコの包みを前に差し出した。

「お、おうっ。わかった。任せとけ」

俺がチョコを受け取ると、キミはよろしくと言って走って去っていった。


……予想通り、キミはアツシへのチョコを俺に渡した。
……こうなることは、わかっていた。

キミのことが、気になっていた。
いつもちらちらとこっちを見ていたキミのこと。

たとえキミが見ているのが、俺でなくても。
キミの瞳に俺が映ってることが、嬉しくて……。
嬉しくて……。

……嘘だ。
そんなの、ただの強がりだった。
本当は、それだけじゃ、ツライ……。

赤いラッピングがされたチョコの箱をぼんやりと眺めて、俺は、ため息をついた。

「よー、待たせたな」

教室にアツシが戻ってきた。
俺は、キミからのチョコをアツシの前に差し出した。

「……これ。チョコ。……お前に」

俺は、キミのことが好きだ。
本当はこんなチョコ、アツシには渡したくなかった。

けど、それじゃあキミがかわいそうだ。
キミのことが好きなら、キミのことを応援するべきだ。

「お、おまえ……そうだったのか。……ごめん、俺にはそういう趣味は……」

アツシはふざけて、そんな冗談を言った
いつもなら俺も一緒になってふざけるところだけれど、今はそんな気分じゃなかった。

「バカやろう。違げぇーよ」
「なんだよ、のってくれても良いのに。……で、誰から?」
「佐藤」

俺がキミの名前を告げると、アツシはきょとんとした。

「え?誰?」
「だから、佐藤だって」
「うちのクラスの?」
「ああ、そうだよ」
「……俺に?」
「ああ、お前に渡してくれって」

アツシは、今までへらへらと笑っていたのに、急に真顔になった。
そして、少し黙って何かを考えてから、言った。

「あー、要らないや」
「……は?」
「要らない」
「なんでだよ?」

要らない?せっかく女の子がくれたチョコを、要らないって?

アツシは、また少し間を空けてから、今度は笑顔を浮かべながら、困ったような口調で言った。

「俺、あーいう暗い女苦手なんだよね。……そうだ、そのチョコお前にやるよ」
「……てめえっ!ふざけんな!」

俺は、そう怒鳴って、アツシの頬を殴った。




つづく








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最終更新日  2006年02月13日 16時44分04秒
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