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遊心六中記

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2017.02.20
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カテゴリ:観照
 京都・三条大橋

     
京都・三条大橋西詰の南側に、この弥次さん・喜多さんのちょっと小振りな銅像が立っています。
数え切れないほどこの傍を通り過ぎながら、今までほとんど気にかけませんでした。

ところが、1月17日に「観照 先斗町歌舞練場・観劇と鴨川畔」というブログ記事を載せたときに、この写真を記事の一環としてご紹介しました。そして、ふと気になったのです。
弥次さん、喜多さんは、十返舍一九の『東海道中膝栗毛』の主人公で、失敗を繰り返しつつ東海道を旅する滑稽な道中話の続き物です。さて、この京都にはどこからこの三条大橋まで来て、どこを見物した話になっているのか? これって、どの時点でここにいる話なのか? そんな疑問というか、好奇心が湧きました。

考えたことがない疑問点。
『広辞苑』(初版、岩波書店)で「東海道中膝栗毛」を引くと、こう説明してあります。「滑稽本。十返舎一九作。十八冊。享和二年-文化六年刊。弥次郎兵衛と北八が道中随所に失敗や滑稽を演じつつ東海道・京・大坂を旅する紀行文学。後二十年にわたる続編を出す。道中膝栗毛。膝栗毛」
『日本語大辞典』(講談社)、『大辞林』(三省堂)も似たような説明です。それは当然のことですが・・・・。

学校の歴史だったか、国語だったかで、作者と書名とあと少し、辞書的な内容をテストのために記憶したようなもの。それ以上でも、それ以下でもなかった・・・・・。
ふと思った疑問の答えは得られません。

学習参考書の一例として、手許の本にはどう記されているか? (資料1)
「十返舍一九(1765~1831)作。1802年刊。以下続刊。江戸時代の弥次郎兵衛と喜多八が愚かな行動を重ねながら東海道を旅していく話。好評を博し、続編も20年間書かれ、旅は金比羅から宮島、木曽街道から善光寺まで続けられた」
近世の主要作品の小説の項で、「滑稽本」として式亭三馬作『浮世風呂』と併せて代表二作品の一つとしてです。「滑稽本」については、「江戸時代中~後期。会話体で話を進める笑いの文学」と説明しています。
つまり、最小限ここまでの知識を持てば(記憶すれば)義務教育レベル、試験対策としてはOKということなのでしょう。

私の疑問はやはり解決できません。ウィキペディアで「東海道中膝栗毛」を検索してもその点は変わりません。国語辞書や学習参考書よりも、詳しい説明にはなっています。
おもしろいことに、ウィキペディアが載せているのも、京都三条大橋傍にある銅像写真です。駿府城の傍にも銅像があるようで、写真が載っています。
ほかの土地にも銅像が造られているのでしょうか? 別の好奇心が湧きました。
ということで、行きつくところは原典を読むしかないか・・・・・。

『東海道中膝栗毛 日本古典文学体系62』(麻生磯次校注、岩波書店刊行)を市の図書館で借りだして、目的志向で読むことにしました。
       (このブログ記事をまとめた後、ネットで原文が読めるサイトを遂に見つけました! 補遺をご覧ください)

調べてみると、「道中膝栗毛六編」の上編・下編と同七編の上編・下編が京見物に関係するところでした。

本題のご紹介に入る前に、前座として新発見(?)をいくつかご紹介しておきます。

1.編の構成は、最初に「序」があり、その続きに「凡例」あるいは「附言・凡例」が簡潔に記されていて、会話体中心の本文が始まるスタイルです。序と凡例は、文章として書かれています。本文は会話体。これは江戸時代の話コトバで記されているのでしょうね。

2. 主人公の名前です。「膝栗毛発端序」を読むと、十返舎一九は「弥次郎兵衛喜多八」とまず記しています。そして、本文の会話体では、誰が話しているのかという話者を示すときに、弥次郎兵衛を「弥次」、喜多八を「北八」と明記しているのです。
これで、上記の説明引用の中で、喜多八、北八が出てきていることが納得できます。まあ、かつては、音に対して漢字を当てはめるとき、いろんな書き方をしているのが普通だったようですので、こだわる必要がないのかもしれませんが・・・・。

  たとえば、京都は「祇王寺」で、滋賀には「妓王寺」「祇王井川」と表記されています。妓王、祇王、義王という3通りの表記を今までに見ています。『平家物語』では「妓王の事」、妓王御前、という表記で出て来ます。(資料2)

3. 一番おもしろいと思ったこと。これじゃ、義務教育では触れることはないわなあ・・・という、主人公のキャラクター設定です。
冒頭の「累解」及び「道中膝栗毛発端(どうちゅうひざくりげのはじまり)」の冒頭で明確に記述しています。今風にいえば、弥次郎兵衛と喜多八はホモの関係だったという設定です。このキャラクター設定でベストセラー、ロングセラーになったのですから、江戸時代までは、あたりまえにありえる人間関係として、おおらかに受け入れていたのでしょうね。十返舍一九の書きぶりがまさに滑稽です。

  「累解」の冒頭からおもしろい! (資料3)
 「或人問う、弥次郎兵衛喜多八は原(もと)何者ぞや。答曰(こたへていはく)、何でもなし、弥治唯(ただ)の親仁(おやじ)なり」と。喜多八については、駿州江尻の生まれで、「旅役者花水多羅四郎が弟子として、串童(かげま)となる」と記すのです。
 そして、「道中膝栗毛発端」で、弥次郎兵衛について、「生国は駿州府中、栃面屋弥治郎兵衛といふもの、親の代より相応の商人にして、百二百の小判には、何時でも困らぬほどの身代なりし」という境遇だったのです。それが安倍川町の色酒にはまり、そのうえに、「旅役者華水多羅四郎が抱えの鼻之助」に打ち込んで、衆道にひどく熱心になり、身代をなくすという結果になるのです。鼻之助という若衆と府中から逃げ出して、江戸に行くという次第。鼻之助を元服させて、喜多八と名乗らせるに至るのです。ここで、弥次・喜多コンビの誕生となる次第。
 この冒頭まででも、弥次郎兵衛が弥治郎兵衛と表記されたり、花水多羅四郎が華水多羅四郎と表記されていたりと、大らかです。
        
4. 本文の構成は会話のやりとりが基本で話が語られて行きます。そして弥次喜多の失敗談、滑稽なエピソードのワンシーン、一話が一段落すると、そのエッセンスが和歌の形式、三十一文字で詠まれるのです。これがまた巧みな要約になっているという面白さです。上記3項の絡みで例示しますと、一番最初のまとめの歌は、
   借金は富士の山ほどあるゆへにそこで夜逃げを駿河ものかな
です。生国駿州(駿河)の人間が借金で夜逃げすると掛詞で洒落てもいます。

5. 十返舍一九のペンネームの由来です。「続膝栗毛」五編の末に、一九の伝記として簡潔に記されているなかに、由来を見いだせるようです。
 姓が重田、字は貞一(さだかつ)と言い、幼名が市(いち)九。市九から一九としたようです。大坂に移住した折、志野流の香道で有名になったようですが、何らかの事情で香道を自ら禁じたとか。十返舍の号は香からのもじりのようです。「十返舍之号黄熱香の十返しを全ひてここにいづる」つまり、「黄熱香」は十度焚いても香を失わないという名香で、「十返しの香」と呼ばれるそうです。ここから発想されたもじりとか。(資料3,4)

  
『道中膝栗毛』(栄邑堂版 1802-1814出版)に登場する弥次さん、喜多さんを引用させてもらいます(資料5)。いよいよ迷コンビ、ご登場!

次回から弥次さん喜多さんの京見物経路を私の覚書を兼ねて、簡略にご紹介します。
つづく

参照資料
1)『クリアカラー 国語便覧』 監修:青木・武久・坪内・浜本  数研出版
2)『平家物語 上巻』 佐藤謙三校注 角川文庫ソフィア
3)『東海道中膝栗毛 日本古典文学体系62』 麻生磯次校注、岩波書店刊行
4) 十返舍一九 :ウィキペディア
5) 道中膝栗毛. 発端,初,後,3-8編 / 十返舎一九 著 第1冊の2コマ、3コマ目
      :「古典籍総合データベース」(早稲田大学図書館)
補遺
東海道中膝栗毛 :ウィキペディア
東海道中膝栗毛  新本 発端 序 :「浮世絵 東海道中膝栗毛」
  これが遂に見つけた原文を活字形式で読めるサイトです。
祇王寺 ホームページ
妓王寺 :「滋賀・びわ湖 観光情報」
一級河川妓王井川に架かる橋梁について 野洲市資料提供 pdfファイル 

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

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Last updated  2017.02.27 14:45:43
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