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遊心六中記

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2017.05.04
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カテゴリ:探訪 [再録]
 
                           JR湖西線・小野駅と近辺の景色です
2014年12月23日(火・祝日)に「小野妹子ゆかりの地をめぐる健康ウォーキング」に参加しました。NPO法人「ライティング心と未来」が企画され、「古都おおつ観光ボランティアガイドの会」の方がご案内くださいました。小野地域は、行政的には大津市ですが、イメージのしやすさから滋賀・湖西と記すことにします。

この時の探訪まとめたものを再録し、ご紹介します。一度訪れてみたいと思っていた所なので、私には絶好の機会となりました。ボランティアの皆さんに感謝!です。

当日の探訪ルートは大凡、
 JR小野駅→小野妹子公園→道風神社→石神古墳群→小野神社・小野篁神社→JR和邇駅
という行程です。実質2時間半程度の探訪ウォーキングでした。
    
JR小野駅前に、今回の探訪ルートをほぼ明示した詳しい案内板が設置されています。それをご覧になると便利だと思います。その部分図を切り出してみます。
今回の近辺の地図(Mapion)はこちらをご覧ください。

小野駅前の広場から駅前の道路を右折して北に向かいます。湖青1丁目のバス停の先の交差点で左折し、びわ湖ローズタウンの住宅地の中に残された丘陵に向かいます。水明1丁目です。

丘陵地は「小野妹子公園」として整備されています。丘陵の西側に回り込んで行くと、

「小野妹子神社」の石標と石の鳥居が見えます。ここから丘陵を上がって行きます。
 

ここは遣隋使として有名なあの小野妹子のゆかりの地です。
     
なぜここに小野妹子を祀る神社があるのか。実は、この場所が「唐臼山古墳」と称される地点で、「小野妹子墓」という伝承があるのです。
 

 
この地域は古くは和邇部氏が支配していたところです京都洛北の愛宕郡小野郷(左京区上高野)に居た小野氏が後にこちらに進出してきて、8世紀の初めにはこの地域の主流になって行ったようです。(資料1)
小野妹子の母は和邇部氏の出身であり、妹子は近江国滋賀郡小野で生まれたそうです。小野村を本拠とした小野氏の一族。『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』には、妹子が小野村に居住したことにより、小野を氏の名としたと記されているとか。(資料2)
 

    
小さな本殿の後にこの写真のように封土が流出し石室の一部が露出した状態になっています。「近年の研究では、墳丘は方墳で、主体部は南側に開口する横口式石槨と考えられている。床には玉石が敷かれていたらしく、南端にわずかに小石が露出し、この上面から7世紀前半頃の須恵器の坏身(つきみ)、坏蓋(つきふた)各1点が発見されており、築造年代が推定できる」(資料2)ようです。

『日本書紀』を繙きますと、推古天皇の15年に「秋7月3日、大礼小野臣妹子を大唐(もろこし隋)に遣わされた。鞍作福利を通訳とした」「16年夏4月、小野妹子は大唐から帰朝した。大唐の国では妹子臣を名づけて、蘇因高(そいんこう)とよんだ。大唐の使人裴世清(つかいはいせいせい)と下客(しもべ)12人が、妹子に従って筑紫についた。・・・・」と記されています。さらに、同年9月、「11日、客人裴世清たちは帰ることになった。また小野妹子を大使(おおつかい)とし、吉士雄成(きしのおなり)を小使(そいつかい)とした。鞍作福利を通訳として、随行させた。」そして、17年「9月、小野妹子らが大唐(隋)から帰った。ただ通訳の福利だけは帰らなかった。」と記しています。小野妹子は第2次遣隋使として607年7月~608年4月に、608年9月~609年9月は送使として渡海したのです。(資料3)

小野妹子の任務には「仏教を学ぶ」「書物を購入する」「礼制を導入する」という3つの目的があったようです。(資料1)

小野妹子神社自体は、唐臼山古墳の存在が明らかになり小野妹子の墓という見解が生じた後、明治以降に創祀されたようです。1882年(明治15年)の『近江国滋賀郡小野村誌』には、唐臼山古墳の所伝は記載がないそうです。一方、1919(大正8)年には、「外交始祖大徳小野妹子」と刻まれた唐臼山古墳への道標が建立されてたと言います。(現在あるのは復元品)(資料2)

なお、余談ですが、小野妹子墓と称されるのは、大阪府南河内郡太子町山田の所在の科長(しなが)神社の南側の小高い丘の上にもあるそうです。(資料4)

唐臼山古墳のある残された丘陵の東端は琵琶湖の展望所になっています。
                     
対岸に三上山が見え、彼岸と此岸を繋ぐ琵琶湖大橋・レインボーロードが眺められます。

この後、北側・小学校のある方に下って行きます。
 
目指すのは「道風神社」です。道標が整備されていますので、わかりやすいです。
この湖西にも古墳群が数多く在り、「曼陀羅山古墳群」への表示が出ています。進んで行く道の傍に、右画像の「小野古墳群」という石標を見かけました。
  さらに、「小野道風神社」への道路標識

 
              「小野道風神社」 祭神は小野道風(おののとうふう)
 
               
この小野神社の飛地にある境内社という位置づけです。
本殿は切妻造檜皮葺。一重で、桁行三間・梁間二間、向拝一間です。南北朝時代・暦応4年(1341)の建立だとか。
                 
小野道風と聞くと、柳の枝に蛙が飛びつくイメージ、花札の絵柄にもなっている場面が想起されます。その姿を眺めて、小野道風が発奮し文筆の極致を極めるようになったというあの逸話です。
道風は小野篁の孫であり、平安時代中期の書家。「日本三蹟」の一人として有名です。後の二人は、藤原佐理(すけまさ)と藤原行成(ゆきなり)です。小野道風は和様の書の創始者として有名(資料1、説明板)
余談ですが、それより先、9世紀の唐風文化の隆盛した時代に能書家で知られた人が、嵯峨天皇・空海・橘逸勢(はやなり)の3人で、「日本三筆」と称されています。(資料5)
江戸時代には篁神社を大宮とするのに対して、こちらを二宮大権現などと称されたとか。また、道風神社は奈良~室町時代の大般若経を所蔵し、神社の南にある観音堂で転読されているようです。(資料2)

本殿の左斜め前の樹木の傍にある境内社は「文殊神社」
本殿に向かって左側が「八坂神社」で、右側が「樹下神社」です。
 
本堂の格子扉の向こうに、狛犬が配置されています。
                   
向拝の木鼻はシンプルですが、蟇股の透かし彫りの彫刻はなかなか堂々としています。
向拝柱の上部の手挟みにもしっかり草花文様が彫刻されています。
 
                

そして、この後小野神社の方に向かいます。

つづく

参照資料
1) 当日は配付のレジュメ 「和邇~小野地区」
2) 『滋賀県の歴史散歩 下』滋賀県歴史h散歩編集委員会編 山川出版社 p238-239
3) 『全現代訳 日本書紀 下』 宇治谷 孟  講談社学術文庫
4) 小野妹子墓  :「太子町」
5) 『詳説 日本史研究』 五味・高埜・鳥海 編  山川出版社 p95

【 付記 】 
「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。
ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。
再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。
少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。

補遺
小野氏  :ウィキペディア
和珥氏  :ウィキペディア
小野妹子 :ウィキペディア
小野妹子と華道  :「小野妹子.org」
いけばな発祥の地 六角堂と池坊  :「池坊」
小野妹子の子孫たち  その1  :「小野妹子の子孫たち」
小野道風 :ウィキペディア
小野道風  :「古典書法」
玉泉帖(ぎょくせんじょう) :「宮内庁」
玉泉帖:伝小野道風筆  :「近代デジタルライブラリー」
春日井市道風記念館  :「春日井市」
道風神社 :「京都観光Navi」
道風神社(北区) :「京都風光」
花札の謎シリーズ  11月札『柳に小野道風』  :「京都 大石天狗堂」
琵琶湖大橋  :ウィキペディア
琵琶湖大橋有料道路  :「滋賀県道路公社」
小野妹子墓  :「聖徳太子ゆかりの古墳」

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

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Last updated  2017.05.05 14:59:14
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