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カテゴリ:探訪 [再録]
![]() まず、JR小野駅前にあった案内図の部分図を載せておきます。小野道風神社から小野神社に向かう行程がお解りいただけるでしょう。 [探訪時期:2014年12月] ![]() ![]() ![]() 途中に、石神(いわがみ)古墳群の標識が出ています。 ![]() ![]() ![]() ![]() 石神古墳群は4基の円墳からなり、いずれも横穴式石室で古墳時代後半に築造されたものだとか。ここは昭和49年に発掘調査が行われ、主に須恵器の杯身(つきみ)、杯蓋(つきぶた)、提瓶(ていへい)などが出土したようです。1号墳は7世紀前半ごろの築造、そして2,3,4号墳は6世紀前半にさかのぼる築造と推定されています。(説明板より) ![]() ![]() 1号墳寄りに「石上(いわがみ)神社」が祀られています。すぐ傍に1号墳の石材が見えます。鳥居の左斜め奥の盛り上がった箇所が上掲の2号墳です。 近くには「岩上神社」と刻された石標が立っていました。 ![]() すこし先に進むと、道沿いの少し高いところに、「永富稲荷神社」が祀られています。 ![]() ![]() ![]() 参道脇のこの樹木は、胸高周囲4mを超える県内最大級のムクロジだそうです。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 手水舎の蟇股と木鼻の意匠がちょっと特徴的です。ここまで透かし彫りにしてあるのは初めて見た気がします。 ![]() ![]() ![]() 境内を流れる小川にかかる小さな橋を渡ると、左方向にこの歌碑があります。 ![]() 百人一首の11番に入っている小野篁の有名な歌です。 わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣船 ![]() 参道の石段を歩むと、途中に石造宝塔が見えます。 ![]() ![]() ![]() もう一つ石の鳥居があり、その先に社殿が2つ見えます。 この鳥居の正面に見えるのが「小野神社」で、その右斜め前方に見えるのが「小野篁神社」です。 ![]() 石灯籠の代わりに鏡餅を載せたものが奉納されています。これは初めて見る景色です。 ![]() ![]() ![]() 祭神は天足彦国押人命(あまたらしひこくにおしひとのみこと):孝昭天皇の第一皇子 米餅搗大使主命(たがねつきおほおみのみこと) :上記第一皇子から七代目 『日本書紀』を読むと、孝昭天皇の「29年春1月3日、世襲足媛(よそたらしひめ)を立てて皇后とした。后は天足彦国押人命と、日本足彦国押天皇(やまとたらしひこくにおしひとのすめらみこと孝安天皇)とを生まれた。68年春1月14日、日本足彦国押尊を立てて皇太子とされた。年20。天足彦国押人命は、和珥臣(わにのおみ)らの先祖である」(資料1)と記されています。和珥氏から小野氏が分かれているようですので、小野一族の祖となるのでしょう。 『古事記』を典拠とした内容も説明板に記されています。手許の本では、「兄のアメオシタラシヒコは、春日の臣、大宅の臣、粟田の臣、小野の臣、柿本の臣、壱比韋(いちひい)の臣、大坂の臣、阿那(あな)の臣、多紀(たき)の臣、羽栗の臣、知多の臣、牟耶(むざ)の臣、都怒(つぬ)の臣、伊勢の飯高(いいたか)の君、壱師(いちし)の君、近淡海(ちかつおうみ)の国造(くにのみやつこ)らの祖(おや)になったのじゃ」(資料2)と記されています。 和珥臣が出てこずに、同族とされる「春日、大宅、栗田、小野、柿本、飯高」と枝氏の列挙として出てくるところが興味深いところです。(資料3) 「祭神のうち米餅搗大使主命は、鏨着(たがねつき)大使主とも表記され、鍛冶の神とも考えられるが、『米餅搗』という用字から、いつの頃からか同神は餅や和菓子の神とされ、これにちなんだ祭が行われている」(資料4)のです。また、説明板に記された「小野道風が菓子業の功績者に匠、司の称号を授与する事を勅許されていた」という説明板の記述は、私には興味深くおもしろい発見でした。そういえば、京都には「匠・司」を関する老舗の和菓子屋さんがいくつもあります。 この祭が、毎年秋11月2日に行われる「しとぎ祭」だとか。お菓子の祖神の祭として、全国から菓子業者が集まるそうです。(資料4,5) 社殿の前の鏡餅の形の奉納に、なるほど!です。 小野神社は『続日本紀』の宝亀3年(772)4月の記述から、奈良時代に存在していたことは明かなようです(資料4)。社記によれば延喜式明神大社です。(説明板、資料6) 本殿は、神明造で間口一間二尺、奥行一間一尺。 「平安時代には小野氏の氏神として崇敬され、小野氏のほか、大春日・布瑠・粟田の3氏に対して、小野神社の春秋の祭のおりに、太政官符を待たずに平安京と近江国滋賀郡とを往還することが許可されている」(資料4)状態だったそうです。大春日・布瑠・粟田は同族諸氏として共通の奉斎神としたということなのでしょう。 ![]() ![]() ![]() ![]() この篁神社本殿の方が、一見では小野神社そのものと錯覚しそうです。小野神社より後世に建てられたことから、こちらがある時期はメインに尊崇されたのかも知れませんね。 祭神は小野篁。 私が小野篁で、まず想起するのは京都・東山に所在の六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)境内にある篁堂の「小野篁立像」です。(資料7) それと、拙ブログで既にご紹介しておりますが、小野篁の墓と称されるもの。 「スポット探訪 [再録] 京都・洛中 小野篁・紫式部墓」です。こちらからご覧いただけるとうれしいです。 道風神社の本殿と同様に、こちらも切妻造・平入り・檜皮葺の本殿です。桁行三間、梁間二間、向拝一間。その様式から暦応年間(1338~42)の建築と考えられています。 「社殿は暦応三年に佐々木六角により建立されたと伝えられる。」(資料6)とか、「社伝によれば、暦応2年(1339)に佐々木氏頼が篁・道風の両社を建立したとされており」(資料8)とか、複数の伝えがあるようです。 ![]() ![]() この本殿にも、内部に狛犬像が置かれています。 ![]() ![]() 木鼻はシンプルで、蟇股が素朴というか奇妙な形象です。閻魔大王と繋がる・・・・これがもともとの形なのでしょうか? そうならば、おもしろい発想、奇妙な力強さを秘めている気がします。 道風神社の蟇股と見比べてみてください。 ![]() 小野神社境内にある境内社。八幡神社と松尾神社の木札が掛けられています。 ![]() 正面の鳥居をくぐってきて、順路標識がなく、前方にこの石段とその先の本殿を眺めれば、こちらを小野神社の本殿とつい思いますよね・・・・。 ![]() 境内を流れる小川に沿って石の鳥居から再び白壁の築地塀沿いの参道に出て、「御神田」と木札の立つ水田に気づきました。 ![]() 参道を真っ直ぐに出て来てやっとわかったのですが、白い築地塀に囲まれたのは「上品寺(じょうほんじ)」です。 調べて見ると、天台真盛宗のお寺です。承和4年(849)小野篁開基と伝えるお寺だそうです。JR和邇駅下車徒歩10分と説明が付いていますので、小野神社は和邇駅から来れば15分以内ということになります。(資料8) 天台真盛宗は坂本にある西教寺が総本山です。 ![]() これがJR和邇駅の方から真っ直ぐに来たときの「小野神社」の参道への入口です。 ![]() この「小野周辺史跡案内図」をご覧いただくと、小野周辺に古墳がいかに多いかがおわかりいただけるでしょう。 この後、和邇公園に向かいました。すぐ近くです。 つづく 参照資料 1) 『全現代訳 日本書紀 上』 宇治谷 孟 講談社学術文庫 p116 2) 『口語訳 古事記 [完全版]』 訳・注釈 三浦佑之 文藝春秋 p149 3) 和珥氏 :ウィキペディア 4) 『滋賀県の歴史散歩 下』滋賀県歴史h散歩編集委員会編 山川出版社 p237 5) 当日配付のレジュメ 「和邇~小野地区」 6) 小野神社 (オノ) :「滋賀県神社庁」 7) 六道珍皇寺と小野篁の不思議な伝説 :「六道珍皇寺」 8) 小野篁神社 大津の歴史事典 :「大津市歴史博物館」 9) 上品寺 大津の歴史辞典 :「大津市歴史博物館」 【 付記 】 「遊心六中記」と題しブログを開設していた「eo blog」が2017.3.31で終了しました。 ある日、ある場所を探訪したときの記録です。私の記憶の引き出しを維持したいという目的でこちらに適宜再録を続けています。 再録を兼ねた探訪記等のご紹介です。再読して適宜修正加筆、再編集も加えています。 少しはお役に立つかも・・・・・。他の記録もご一読いただけるとうれしいです。 補遺 ムクロジ :「緑の絵画館 私の植物図鑑」 無患子 (むくろじ) :「季節の花300」 小野 篁 :ウィキペディア 小野篁の地獄通い :「読む・聴く 昔話」 地獄往来、小野篁 :「お話歳時記」 大津の歴史事典 地区:和邇 :「大津市歴史博物館」 しとぎ祭・大津市小野 滋賀伝統文化再発見 :「滋賀文化のススメ」 しとぎ祭り :「大津市歴史博物館」 菓子・餅の祖神 小野神社 :「近江歴史回廊倶楽部」 天台真盛宗総本山 西教寺 ホームページ ネットに情報を掲載された皆様に感謝! (情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。 その点、ご寛恕ください。) 探訪 [再録] 滋賀・湖西 小野氏ゆかりの地 -1 小野妹子神社・唐臼山古墳・小野道風神社ほか へ 探訪 [再録] 滋賀・湖西 小野氏ゆかりの地 -3 和邇公園・天皇神社・「榎」碑 へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.05.05 15:00:09
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