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カテゴリ:ロボサムライ駆ける2014版
ロボサムライ駆ける■第53回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ ■第七章 血闘場(2) 「この古代の神殿祭壇の上が勝負どころぞ」 主水は叫んでいた。 「舞台にとって不足なしですね。わたしはこのゲルマンの剣で戦います。我が神に祝福あれ」 ロセンデールの顔も晴れ舞台での戦いであり、上気している。 青い目がキラリと光る。 大空洞の外から、急に稲光がひらめく。ガーンという言葉が後から響いて来た。 「主水君、貴公をこの刀のさびにしてくれましょう。それはとても名誉なことですよ」 ロセンデールは誇りを旨に、戦いに望んでいる。 電磁サーベル、ゲルマンの剣を抜き放つ。 再び、稲光がひらめく。光が回りに満ちた。 剣からは、またクサナギの剣とはことなる威力がある。 「この戦い、望むところ。クサナギの剣の力、お見せする」 主水も、剣を抜く。ぴしーん霊気が放たれた。 「だ、旦那は大丈夫ですかね、ねえさん」 鉄は、びびって隣にいるマリアに尋ねる。マリアは普通に戻っていた。 「私にだってわかるものですか」 ロセンデールはマリアの方を見てにこりとする。 「主水君、君が倒れれば、レイモンもマリアも刀のさびにしてあげましょう。心して打ちかかっていらっしゃい。私は、我が聖騎士団の者ほど、腕は甘くはありませんよ」 サーベルがビュウと唸った。 ロセンデールは、ヨーロッパの剣技大会でもトップレベルの腕だといわれている。 サーベルは突きが基本といわれているが、ロセンデールの技は単調ではない。なぎ、払うもテクニック中に含まれている。 おまけに手にするは、ゲルマンの剣。 古来より伝わる名剣。 神聖ゲルマン帝国の守り神である。 戦いは思わぬ方向に進んでいる。主水は防御の構えに入っている。ロセンデールが攻勢なのだ。 レイモンにしても、マリアにしても気が気ではない。 「えーい、主水ったら、肝心なときに剣技がさえないのですから、だらしがないですわねえ、どうしたのですか」 味方のマリアがいらだち、罵声が飛んでいた。 「うるさい、マリア。サーベルに対しては、お前ほどではないんだ」 そういった主水の頭がグラリと揺れる。 視覚装置がおかしくなった。 体のバランスが取れない。 「ウ、いかん…」 どうしたことか、主水の持病が肝心なときに出てしまった。 「いかん、この大切な時に」 足毛布博士が額に手をあてる。 主水の様子に足毛布博士が気付く。 「主水の様子いかがいたしました」 徳川公廣が尋ねる。 「例の病気がでよった」 「えっ、こんなときに……」 徳川公が唸る。 主水に、意識の空白が襲ってくる。 「どうした、どうした、主水君」 ロセンデールがニヤリと笑っている。 「私の腕に恐れを感じたのかね」 主水はふらふらし、ゆっくりと右腕が止まってしまう。 意識がフェイドアウト。 その姿のままで、主水はぎこちなくバッタリと神殿の床に倒れた。 が、クサナギの剣は、手に握られたままである。 「ほほっ、口ほどにもない人ですね。主水君」 「主水、危ないわ」 後ろからマリアがすくっと立って、自分の愛刀サーベル「ジャンヌ」を手にしていた。 「いい、ロセンデール卿。ヨーロッパの恨みをこの日本で晴らします」 マリアの顔はキッと厳しくなっている。 「おやおや、麗人マリア君。美しい愛の世界の姿ですねえ。が、所詮君は女ロボットです。現在のヨーロッパチャンピオンの私を倒せるとお思いですか。ふふっ、おまけにこれは、ゲルマンの剣ですよ」 「それは勝負してみてからいってほしいですわね」 ロセンデールはあることに気付く。 「そうだ、マリア君、私の目をよく見てごらんなさい」 ロセンデールが声高かに叫んでいた。悪魔の表情である。 「いかん、マリア。ロセンデールの目を見るな」 主水はロセンデールの狙いに気付く。 ころがり、のたうつ主水は、マリアに叫んでいるつもりだ。 が、いかんせん、その声は今マリアには届いていない。 「まずいのう。マリアの別の人格が浮上するかもしれん」 徳川公がポツリとつぶやいた。 マリアは別人になりつつあるのだ。 観戦している人々からどよめきが起こる。 「別の人格ですと」 今度は足毛布が尋ねる。 「そうなのです。マリア=リキュール=リヒテンシュタインは二つの心を持つロボットなのです。もう一つの心はリキュール。マリアの肉体にあるもう一人の人格」 徳川公はボソボソとしゃべる。 「こんな時に…」 ロセンデールの剣が、あっという間にジャンヌの剣をたたきわり、続いてマリアの胸を貫く。 「うっ」 と叫ぶ。 「マ・リ・ア」 主水も叫んでいる。 ロセンデールは、ゲルマンの剣を、瞬間抜き取る。 どっと祭壇上に倒れるマリア。剣はマリアの中枢をついていた。 「ふふん、マリア君も口ほどにもありませんねえ。手応えがありませんねえ。折角の、こんな晴れ舞台なのにねえ」 ロセンデールはゲルマンの剣をビュウと振った。 (続く) ■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(2) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014年07月04日 00時22分41秒
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