■腐敗惑星■第6回
■腐敗惑星■第6回(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第6回「お前、デッキマンだね。それも新米の」占いの巫女がミラーに言った。ここはシティの盛り場だ。5年前、宇宙の中心星ピラトのオクマ・シティだった。ミラーが連邦宇宙大学を卒業した頃だ。配属先は星庁の管轄下にある監視機構であった。「そうだよ、それがどうしたのだ」いぶかしげにミラーは答える。荒手の募金活動じゃないだろうな。ミラーはこの種の募金にうんざりしていた。いわく宇宙戦役募金だの、戦争孤児募金だの、宇宙植民募金だの…「お前にいいことを教えてあげようじゃないか」巫女はにやりと笑う。危ないぞ、こんな奴に限ってオアシが高いのにきまっている。「いらないよ、占いのおし売りはお断りだ」ミラーは足早に立ちさろうとした。が、うしろから巫女がうむをいわさぬ調子で言葉を投げかけてきた。「世界最高の宝を欲しくはないのかい」その言葉にミラーは急に振り向く「それは何だ」興味シンシンの顔だった。「ほほっ、興味を持ったね。教えてあげよう、特別にね」「もったいぶるなよ」「禁断の実だよ。それについての情報だよ」「禁断の実だって、そいつは『新生神書』の『最後の楽園』に出てくる神話じゃないのか」「それくらいしか、知らないのかい。見たところ、星庁に努めているらしいけど。この言葉の深い意味もしらないようじゃたいしたことはないね。お前も、もっと歴史をお知り、そうすれば、私がいった意味もわかるさ」軽蔑するように、首をふりながら彼女は言った。「でも気をおつけ、その禁断の実にさわる時はね」ミラーの方を節くれだった指でさした。「俺は禁断の実を持てるのか」「そうさ。おまけに、お前は古代世界をかいま見ることができるだろうがね」「古代世界?,かいまだと、どういう意味だ」「もう、今日はおしまいさ」気味の悪い占いの終り方だ。「どういう意味だ。俺がそこで死ぬとでもいうのか」「しかたがないね。おまけに、もう1つヒントをあげるよ。腐敗惑星についてお知らべ。これで本当におしまいさ」「なんだって、あの汚染された星か」「いいかい、これで、私の未来の占いは終りだ」 ミラーは10ソブリン銀貨を巫女に投げあたえた。「いい事を聞かせてくれたな、お礼だ」「いらないよ。今夜はサービスだよ」巫女の姿は急に、若い女性に変身する。「あ、おい、待てよ。消えた」 ミラーは体をふるわす。寒気が急に襲ったのだ。「今のは悪い夢じゃなかったのか」が、ミラーの見たのは夢ではなかった。●ミラーは必死で資料を探している。ここは監視機構の研修センターである。「ミラーくん、隣に座っていいかな」スニンがミラーに話しかける。「あ、どうぞ、スニン先輩」「どうだね、勉強は進んでいるかね」「ええ、何とか、監視機構の研修についていこうと必死ですよ」「ところで、君、何の本を読んでいるのかね」スニンは急にミラーの読んでいる本の表紙を持ち上げようとした。慌てて、それを隠そうとするミラー。が、表紙が見えてしまった。「新生神書」である。「おや、おや、君も中々信心深いようだね」「いえ、それほどでもありません」「君は隠れ宗教家ではあるまいな」「まさか、そんなことはありえません」「ミラーくん、率直に聞こう。君は、腐敗惑星へ赴任したいかね」腐敗惑星だと、なぜだ。なぜこいつは知っている。ひょっとして、いやぐうぜんということもあるな。ミラーは、できるだけ平静を装うとした。「続けて聞こう。君は「禁断の実」を探したいかね」ミラーはこの言葉を聞き、顔が青ざめるのが自分でもわかった。なぜ、このスニンが、あの夜の占いを知っているのだ。「ミラーくん、我々は君をスカウトしにきたのだ。安心したまえ」やっと、ミラーの声が出た。いささかかすれていたが。「いったい、あなたは」「ダークサイドの人間だよ。ミラー君」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/