辻村深月 「冷たい校舎の時は止まる」
ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない、時が止まった校舎。不可解な現象の謎を追ううちに彼らは2ヵ月前に起きた学園祭での自殺事件を思い出す。しかし8人は死んだ級友の名前が思い出せない。死んだのは誰!?誰もが過ぎる青春という一時代をリアルに切なく描いた長編傑作。辻村深月さんの「冷たい校舎の時は止まる」を読みました。第31回メフィスト賞受賞作品ですが、ノベルスで3分冊したものを3ヶ月掛けて刊行と珍しいデビューの仕方ですね。私は上巻を読んだ時点で特に理由なく半年以上放置し、数日前に中・下と一気に読みましたw今作でのデビュー後もコンスタントに活躍しているのも頷ける程に文章も読み易く、作品から受ける雰囲気は恩田陸さんの学園ものに近いものがあります。ミステリとしても大筋以外にも仕掛けがあったり、後半で明かされる謎解きは中々に楽しめました。その仕掛けは「ホスト」の正体が予想通りだっただけに尚良かったのですが、フェア過ぎて最初のヒントで鋭い人なら十分に見抜けるかと思います。ただ、作品の根幹となる登場人物8人を語り手として順々に描いているのですが、語られる内面が少しステレオタイプ過ぎる気がします。如何にもなキャラの如何にもな悩みが多く、どこかで聞いた事があるエピソードと思ってしまいます。最も気になったのは作者と同名の登場人物・辻村深月の存在で、このキャラに対する他キャラの気に掛け方は異様に感じました。全体的な描写も大胆と言うか何と言うか、同名の名探偵が快刀乱麻に事件を解決する方が何倍も描き易いと思います。意味合い的にも必要なキャラなのは分かりますが・・・。人物描写的には合わないものがありましたが、特異な設定やミステリとしての面白さは感じました。とりあえず、他の作品も読んでみたいですね。