Ｂａｕｃａｆｅ　　　　　　

そのうちに、ボディワークと現象学とを結びつけて、何かきちんとしたものを書きたいと思う。それによって、ボディワーカー、クライアント双方の、セッションへの「参加」に関わる問題（〈主体的／客体的〉参加の問題）について考えたいと思っている。
今日は、以前に読んだ現象学の入門書を引っ張り出してきて、少し目を通した。最初に読んだときもそう思ったが、やはりこれは、なかなか良い本だと思う。ありがたいことにヒントが浮かんだので、途中で本を閉じ、ノートに４ページちょっとの走り書きをした。後でそれを（読み取れなくなる前に！）清書しようと思うが、その前にこの本をぜひ紹介しておきたい（途中までの解説で、ごめんなさい）。ノートのほうは、だいぶ溜まってきた。


竹田青嗣　著　『現象学入門』　NHK ブックス

近代の実証主義は、自然科学の成果（ガリレイ、コペルニクス、ニュートンらが活躍した）に支えられ、「人間の理性は世界の〈客観〉を正しく捉えることができる」という確信を打ち出した。ところが、フッサールによると、時代が移行して１９世紀の後半になると、ヨーロッパにおいて諸科学がおびただしい学説の対立によって混乱し、科学に対する人々の信頼が深刻な危機に陥った。
フッサールによると、この事態の根本原因は、近代哲学（デカルト、カント、ヘーゲル、ニーチェら）が〈主観／客観〉の問題を十分に解けずにきたためである。すなわち、「主観的に見た世界と実在する客観的世界とは同じものなのか？」という問題である。

フッサールはこの問題を解くために、以下のような設定によって、問いの方向を変える。〈主観〉は自分の外へ出て、〈主観〉と〈客観〉の一致を確認することができないので、まず〈主観／客観〉（相互に対称）図式そのものを取り払う。そして次に、〈主観〉の中に閉じ込められているにも関わらず、世界の存在、現実の事物の存在、他者の存在などを「疑いないもの」として、私たちに確信させる条件が何かを問う。
これに対して、フッサールは以下のように答えていく。人間の〈主観〉は４つの意識表象をもっている。すなわち、〈知覚〉〈想起〉〈記憶〉〈想像〉の４つである。このうち〈知覚〉だけが、意識の自由にならない。たとえば他のものは、意識の志向力によって遠ざけたり呼び寄せたりできるが、〈知覚〉だけは、「身体の働き」によらなくてはそれができない。したがって〈知覚〉だけが、その外の存在を「疑えないもの」として指し示す、唯一の正当な「源泉」であると見なされる（ただし、〈主観〉は自己の外にあるものを〈主観／客観〉の「一致」という仕方で得ているわけではない）。つまり、〈知覚〉が様々な判断の基礎となるのである（知覚直観）。