文芸評論と漫画評論

2007/11/02(金)22:59

老人と海、ヘミングウェイ著

文芸評論(194)

執念 特に好きな作品で、日本語翻訳版(本書)と英語版原書とを何度も読み比べてみた。 結果として、日本語翻訳版の方が、心の中に、その神髄を真摯に訴えてくる様にも感じる。 英語版原書の英語は、表現がかなり口語的だが、翻訳は、その部分もうまく補正してくれていると言える。 老人とかじきまぐろとの死闘が繰り広げられるが、その臨場感に汗まで噴き出す思いだ。 そして、意外かつ哀愁に満ちてはいるものの、こんな結末であっても、爽やかだ。 私はこの作品を、中学生の時に一度読んだ。 しかしその時は、老人をこの死闘に駆り立てるものが何か?という事を読み取れなかった。 その後、色々な事に挑戦してきた今になって、じっくりと読んでみると、無性にこの作品が愛おしい。 執念とは、こういうものなのだ。 重要なのは、結果ではなく課程と強い想いだ。 老人の闘志は、次第に友情に変化したのではなく、当初から友情だったのかも知れない。 そうでなければ、老人は、この様な強い執念を維持出来ただろうか? 執念を「情念」と言い換える事も出来る。 人生の節目節目で読み返したい作品だ。

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