ケーキの切れない非行少年たちのカルテ
『ケーキの切れない非行少年たち』の宮口教授による一冊。 非行少年たちの実態は、ストーリー展開した方が伝わりやすいのではとの思いから、 コミック版を、2023年9月時点で第7巻まで刊行されていますが、 2022年9月に刊行された本著は、その小説版ということになります。 登場するのは、振り込め詐欺の片棒を担ぎ、借金をしていた女友達を殺害した少年、 中学校の担任女性教諭を、失明の恐れがあるほど殴った妊娠8カ月の少女、 父親を困らそうと自宅に灯油をまいて放火し、隣家に住んでいた女性を焼死させた少年、 近所に住む7歳の女子児童にいたずらして入院するも、出院後に再犯してしまった少年。これらの少年たちについて、その家庭環境や生育歴、犯行に至る経過やその後、さらには、主人公の精神科医が医療少年院や女子少年院で関わった様子が描かれていきます。お話は架空のものとされていますが、著者の宮口教授の実体験がベースになっているでしょう。主人公の家庭や職場、特に異動についての描写は興味深いものがありました。