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2017/02/26(日)11:08

3.ただの物理的な反射に過ぎない

只今読書中、実況中継!(172)

​​ 小田原郊外山頂の新しい住処に移る前、  家に置いたままになっていた身の回りのものを引き上げるため、  私は妻のユズに電話を掛ける。  その時、最初のデートで私がスケッチした彼女の顔が話題に。  彼女は、素晴らしくよく描けていて、  ほんとの自分を見ているような気がする。  鏡で見る自分は、ただの物理的な反射に過ぎないと言う。  電話を終え、私は洗面所で鏡に映る自分を見る。   でもそこに映っている私の顔は、   どこかで二つに枝分かれしてしまった自分の、   仮想的な片割れに過ぎないように見えた。   そこにいるのは、私が選択しなかった方の自分だった。   それは物理的な反射ですらなかった。(p.56) 大学時代の友人・雨田政彦のボルボに乗って小田原へ。 著名な日本画家である彼の父・具彦が住んでいたのは、人里離れた山の中。 肖像画を描くことをやめた私は、雨田政彦の勧めで、 週に二日、小田原駅前のカルチャースクールの絵画教室で教え始めたのだった。    *** 「鏡」についての部分は、難しいですね。 でも、このお話の根幹ともなる部分だと思います。 そして、この新しい住処で数カ月過ごした頃に、 「私」は、雨田具彦の作品『騎士団長殺し』を見つけるのです。

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