トレブリンカ叛乱
『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編 』の最後を飾る 「32.彼の専門技能は大いに重宝された」は、本著からの一部引用だけの節。 ちょっと、というかかなり気になったので、早速読んでみました。 『騎士団長殺し 第2部を』読み終える前に、何とか読了。 1942年10月、19歳の青年だった本著の著者・ヴィレンベルクが、 トレブリンカ第2収容所に到着したところからお話は始まります。 当日収容所に移送されてきたのは約7,000名。 その中で虐殺を免れることが出来たのは、彼ただ一人でした。それは、収容所の特別労務班員として働いていた幼馴染のアルフレッドに偶然出会い、「お前、大工だって言わなくちゃだめだぞ」と声をかけてもらえたから。それから始まった収容所内での生活や、10か月後に起こった叛乱に乗じての脱出、さらに、その後加わったワルシャワ蜂起での行動がつぶさに描かれています。『騎士団長殺し』に登場したワルシャワ出身のプロの画家は、ドイツ兵から看板描きも命令されていた囚人です。「彼との間には暖かい友情が生じ始めていた」と記されていますが、それは、著者の父も画家で、彼と話すと子どもの頃を思い出すからでした。ところで、このお話を読み進めるのにはかなり骨が折れました。よく分からない人名、地名、言葉が唐突に出てきたりすることもありますが、文字を追っているうちに、頻繁に頭の中がゴチャゴチャしてしまうのです。原文のせいなのか、それとも原文に即して翻訳を進めすぎたせいなのか……それでも、当時のユダヤ人がどのような扱いを受けていたのかは、嫌と言うほど、痛烈に伝わってきます。それは、ドイツ人による信じ難い虐待、虐殺だけでなく、その支配下に置かれていたポーランド人によるものも含めて。