京都 梅咲菖蒲の嫁ぎ先<2>
『京都 梅咲菖蒲の嫁ぎ先』の続巻。 副題は、「~百鬼夜行と鵺の声~」。 前巻に比べると、250頁とボリュームは軽め。 <続>ではなく<2>とあるので<3>以降の刊行も期待できそうです。 ***妖たちが列をなして闊歩する『百鬼夜行』。京都市内でその目撃談相次ぐとの記事が、時雨書院が発行する雑誌『時世』に掲載された。審神者・梅咲藤馬は、立夏が笛を吹いて妖を集め、秋成たち白虎班が滅する計画を立てる。しかし、鵺(ぬえ)が現れたことで作戦に乱れが生じ、新斎王・綾小路蓉子が姿を消してしまう。明治時代に百鬼夜行を滅した伝説の斎王・犬童桔梗。斎王は未婚の内親王でなくとも特別な力があれば既婚者でも良いと仕組みを改めた人物。その桔梗の遣いが、かつて鵺を封じた西福寺の薬師如来像を、1か月前にどこかへ移したという。さらに、桔梗は時雨書院社長として菖蒲たちの前に姿を現すと、鵺について語り始める。 「鵺は世の中の『魔』や『膿』を自分の中に溜め込み、 抱えきれない状態になった時に世に現れる。 そして、そんな鵺を討った者は、特別な力を得ることができるそうだ。(中略) 鵜は災厄の化身と言われているが、そうではない。 災厄が起こらないよう、自分の体に悪しき感情を溜め込んで民を護り、 それを抱えきれなくなった時、自分を射てほしいと鳴いて空を飛ぶのだ」(p.177)鵜を放ち、その力を求める妖たちをが集め、百鬼夜行を引き起こす。そして、その鵺を射ることで、自分が力を得ようとしていた者がいる。作戦決行の夜、不自然な動きを見せた者は……犬童家と共に賀茂家を護る八家の二大勢力の一つ、犬居家にも疑惑が生じる。犬居家の新年の宴、菖蒲が箏を立夏が三味線を奏でる中、菖蒲は蓉子の意識と繋がることに成功。蓉子を連れ去った人物が明らかとなり、舞殿上空に現れた鵺を蓉子が放った矢が射止める。そして、幼い頃『神童』と呼ばれた男の悲恋と喪失、そして今回の一件の経緯が記されていく。そんな男に、斎王・蓉子が処分を下すと共に、男の兄からの手紙を手渡したのだった。 ***菖蒲と立夏の関係も進展を見せましたが、それ以上に撫子と玄武の力を持つ冬生との関係が急速に進展しました。次巻は、時雨書院を舞台としたお話が始まり、時雨書院社長・犬童桔梗や『時世』編集長・草壁徹も、また絡んできそうですね。