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~《流れ星》~
そして、 僕は何か心に感じて一瞬振り返った。 もう結構遠くに居るその人は、 道のド真ん中で、人目も気にせず、 深々と頭を下げて、 何度も何度も、頭を下げて、 しかも手は、まるで何かを拝むように手のひらを合わせて…。 全身にあった緊張感が突然取れて、 僕はその光景を呆然と見た。 罪悪感すらあった。 身の程知らずの自分と戦ってた…。 でも…。 そうしたかった。 ただそうしたかった。 何度も何度も、 僕が振り返った事を察して今度は、 頭を下げ続ける遠くで輝いて見えるその人は、 拾った一円玉を渡した時にすら、 顔も見ずに、 蒼い顔をしていたその人は、 腕で涙をこするような仕草をしながら、 少し笑った顔で、 僕を見て…手を合わせ頭を下げていた…。 僕はそんな事してない。 そんな事されるような事してない。 でも良かった…。 せめて喜んでくれて良かった。 胸がいっぱいになった。 うどん、早く…。 僕は手で合図をした。 すると、もう一度深々頭を下げたその人は、 僕の渡した小銭を大事に袋に入れて、 蕎麦屋の方向に振り返り、 ゆっくり歩いて行った。 しばらくその後ろ姿を僕は見ていた。 すると、 ~流れ星…。~ あっ…。 空耳だと想った。 でも…また、 ~流れ星…。~ 流れ…星…!? ~少し久しぶりだね。 書きなさいなど言わない。 落ち着いて聞きなさい。 流星…。 お前は、人の心が意図なく純粋に願った時こそ、 伝えられてる多くの伝説は、 神が奇跡を本当に起こせる事がある事を知っているかい…。 お前は、 小さな、小さな…サンタクロースになったんだよ。 お前の名前…。 これからの人生の中で、 流星は、 人にとっての《流れ星》になってあげるんだ…。 そんな人生にするんだ…。~ 僕が…。 ~いいかい。 何の意図もない、 流星の瞬間の切ない想いが、 あの子にサンタクロースを運んだ。 それでいいんだ。 何も言わず、 解らないように、 そっとあの子がこれからどうするのか見ていなさい…。~ えっ!?あの、あの…! もう声は届かなかった。 でも、 そうだ、せっかくだから幸せそうな顔を遠くで見せて貰おうかな。 そしたらなんだか偉そうで、動揺してた僕の中の迷いも消えるかも知れない。 そう、そして、ゲームでもしに行こう。 僕はそう想って、 そっとその人に気付かれないように、 あとを付けた。 あれ…!? 蕎麦屋と違う方向に歩き始めた。 どうして…。 うどん食べないの!? 僕は少し動揺しながら、 そのままこっそり付いて行った。 コンビニだ…。 コンビニに入った。 何か買ってる。 何だろう!? 店員に何度も頭を下げながら、 その人は一円玉を並べていた。 人のよさそうな店員でほっとした。 ドーナツだ…。 ざらっと一円玉はレジに仕舞われた。 僕は、 たふん五十円位の小さなドーナツを買ったその人を見て、 呆然としながら、 それでも、 もう一度袋を取り出して、 大事に手に包み込むようにして、 にっこり笑いながら、 コクンと袋に向かって有難うを言ったようなその人の姿に、 嗚咽する位の涙が噴出した。 止まらない。 身体が揺れる程に、 涙が溢れて我慢できなくなった。 どうして…うどん食べて欲しかったのに…。 あの人…あの人… ~流星の渡したお金が、 有難くて、有難くて…使えなかったんだよ。 あの顔を見てごらん。 至福に包まれている…。 きっとあの子は生きて行くよ…。~ 自分の中に生まれている心を、 言葉にも出来なかった。 僕はわんわん泣きながら、 早足で雑踏に戻った。 泣きじゃくった。 たった何百円かなのに…。 うどん食べればいいのに…。 嗚咽が止まらなかった。 食べて欲しかった。 でも…そんなに…大事に…。 考えれば考えるほど、 そんな大きな事なんかしてないのに…と、 切なくて…切なくて…、 ただ僕は、 泣き続けた…。 ジングルベルが響いていた。 あんなに感謝されるような事してないのに…。 その想いは、 何処を歩いたかも覚えていない程、 遠くまで早足で歩き続けて、 やっと涙枯れた頃ひとつの言葉に辿り着いた。 《有難う…。》 こんな僕の、 最低の僕が、 小さな小さなサンタさんになれた。 有難う。 あの人こそ、 僕の《サンタクロース》かも知れない…。 頑張って生きて欲しい。 心の底からそう想った…。 東京での最後のクリスマスに、 僕はこんなに有難い思い出が刻まれた。 流星…メッセージを思い出した。 そう言う意味だったんだ…。 でも僕には到底、人の願いなんて叶えてあげられない。 そんなの絶対無理だ。 あの声…。 忘れ掛けてた。 でも、まだ、終わってないんだ。 まだ続くんだ…。 お化け…!? お化けさんにしても、 結構優しいんだなぁ…。 そんな事を感じながら、 僕は振り返っていた。 この事の現実だけに、 正面から向き合おとすると、 答えは出ない。 でももう、 錯覚でも、気のせいでもない。 僕の創り出している声でもない。 全くこれからも想定は不可能だ。 だから、 いい。 このままでいい。 何か、とにかく何かを僕は抱えた。 人には理解出来ない何かを。 その言葉だけで今はいい。 今日はクリスマスのイベントの司会。 目の前に覚えのあるファーストフードが見えた。 そう、 このイベントがふいに僕に舞い込んでくるきっかけの電話、 それを僕はあの声との会話の中で受けた。 そうだ…ここだ…。 日払いの割りのいい仕事。 シャキッとして頑張ろう。 この頃大樹は、 念願のCDデビューとなるシングルの打ち合わせをしていた。 納得の行く有名な作詞、作曲家の作ったデビューシングルが、 翌年に発売される事になった。 小さい頃から大樹とは縁深い、 九州の、ベテラン歌手でもあり、 作詞作曲も手掛け、 博多では定着したファンも持つ大樹の恩師、 《吉咲緋春(ひばる)》も、 弟子の《水祈紫穂(みずきしほ)》と共に、 仕事がてら東京を訪れ、 大樹をまず祝おうと、 離れた席で待っていた。 ・。* 。 +゚。・.。* ゚ ・。* 。 +゚。・.。* ゚ ・。* 。 +゚。・.。* ゚ + お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/10/28 08:36:20 AM
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