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2006/09/29
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~《流れ星》~

そして、
僕は何か心に感じて一瞬振り返った。

もう結構遠くに居るその人は、
道のド真ん中で、人目も気にせず、
深々と頭を下げて、
何度も何度も、頭を下げて、
しかも手は、まるで何かを拝むように手のひらを合わせて…。

全身にあった緊張感が突然取れて、
僕はその光景を呆然と見た。

罪悪感すらあった。
身の程知らずの自分と戦ってた…。
でも…。
そうしたかった。
ただそうしたかった。

何度も何度も、
僕が振り返った事を察して今度は、
頭を下げ続ける遠くで輝いて見えるその人は、
拾った一円玉を渡した時にすら、
顔も見ずに、
蒼い顔をしていたその人は、
腕で涙をこするような仕草をしながら、
少し笑った顔で、
僕を見て…手を合わせ頭を下げていた…。

僕はそんな事してない。
そんな事されるような事してない。

でも良かった…。
せめて喜んでくれて良かった。
胸がいっぱいになった。

うどん、早く…。
僕は手で合図をした。

すると、もう一度深々頭を下げたその人は、
僕の渡した小銭を大事に袋に入れて、
蕎麦屋の方向に振り返り、
ゆっくり歩いて行った。

しばらくその後ろ姿を僕は見ていた。

すると、

~流れ星…。~

あっ…。

空耳だと想った。

でも…また、
~流れ星…。~

流れ…星…!?

~少し久しぶりだね。

  書きなさいなど言わない。
  落ち着いて聞きなさい。

  流星…。

  お前は、人の心が意図なく純粋に願った時こそ、
  伝えられてる多くの伝説は、
  神が奇跡を本当に起こせる事がある事を知っているかい…。

  お前は、
  小さな、小さな…サンタクロースになったんだよ。

  お前の名前…。
  これからの人生の中で、
  流星は、
  人にとっての《流れ星》になってあげるんだ…。
  そんな人生にするんだ…。~


僕が…。

~いいかい。
  何の意図もない、
  流星の瞬間の切ない想いが、
  あの子にサンタクロースを運んだ。

  それでいいんだ。

  何も言わず、
  解らないように、
  そっとあの子がこれからどうするのか見ていなさい…。~


えっ!?あの、あの…!

もう声は届かなかった。
でも、
そうだ、せっかくだから幸せそうな顔を遠くで見せて貰おうかな。
そしたらなんだか偉そうで、動揺してた僕の中の迷いも消えるかも知れない。
そう、そして、ゲームでもしに行こう。

僕はそう想って、
そっとその人に気付かれないように、
あとを付けた。

あれ…!?

蕎麦屋と違う方向に歩き始めた。
どうして…。
うどん食べないの!?
僕は少し動揺しながら、
そのままこっそり付いて行った。

コンビニだ…。
コンビニに入った。

何か買ってる。

何だろう!?
店員に何度も頭を下げながら、
その人は一円玉を並べていた。
人のよさそうな店員でほっとした。
ドーナツだ…。

ざらっと一円玉はレジに仕舞われた。

僕は、
たふん五十円位の小さなドーナツを買ったその人を見て、
呆然としながら、
それでも、
もう一度袋を取り出して、
大事に手に包み込むようにして、
にっこり笑いながら、
コクンと袋に向かって有難うを言ったようなその人の姿に、

嗚咽する位の涙が噴出した。

止まらない。
身体が揺れる程に、
涙が溢れて我慢できなくなった。
どうして…うどん食べて欲しかったのに…。
あの人…あの人…

~流星の渡したお金が、
  有難くて、有難くて…使えなかったんだよ。
  あの顔を見てごらん。

  至福に包まれている…。

  きっとあの子は生きて行くよ…。~


自分の中に生まれている心を、
言葉にも出来なかった。
僕はわんわん泣きながら、
早足で雑踏に戻った。
泣きじゃくった。

たった何百円かなのに…。
うどん食べればいいのに…。

嗚咽が止まらなかった。

食べて欲しかった。

でも…そんなに…大事に…。

考えれば考えるほど、
そんな大きな事なんかしてないのに…と、
切なくて…切なくて…、

ただ僕は、
泣き続けた…。

ジングルベルが響いていた。

あんなに感謝されるような事してないのに…。
その想いは、
何処を歩いたかも覚えていない程、
遠くまで早足で歩き続けて、
やっと涙枯れた頃ひとつの言葉に辿り着いた。

《有難う…。》

こんな僕の、
最低の僕が、
小さな小さなサンタさんになれた。

有難う。

あの人こそ、
僕の《サンタクロース》かも知れない…。

頑張って生きて欲しい。
心の底からそう想った…。

東京での最後のクリスマスに、
僕はこんなに有難い思い出が刻まれた。

流星…メッセージを思い出した。
そう言う意味だったんだ…。
でも僕には到底、人の願いなんて叶えてあげられない。
そんなの絶対無理だ。

あの声…。

忘れ掛けてた。
でも、まだ、終わってないんだ。
まだ続くんだ…。

お化け…!?

お化けさんにしても、
結構優しいんだなぁ…。

そんな事を感じながら、
僕は振り返っていた。

この事の現実だけに、
正面から向き合おとすると、
答えは出ない。
でももう、
錯覚でも、気のせいでもない。
僕の創り出している声でもない。
全くこれからも想定は不可能だ。

だから、
いい。
このままでいい。
何か、とにかく何かを僕は抱えた。

人には理解出来ない何かを。

その言葉だけで今はいい。

今日はクリスマスのイベントの司会。
目の前に覚えのあるファーストフードが見えた。
そう、
このイベントがふいに僕に舞い込んでくるきっかけの電話、
それを僕はあの声との会話の中で受けた。
そうだ…ここだ…。

日払いの割りのいい仕事。
シャキッとして頑張ろう。

 この頃大樹は、
 念願のCDデビューとなるシングルの打ち合わせをしていた。
 納得の行く有名な作詞、作曲家の作ったデビューシングルが、
 翌年に発売される事になった。

 小さい頃から大樹とは縁深い、
 九州の、ベテラン歌手でもあり、
 作詞作曲も手掛け、
 博多では定着したファンも持つ大樹の恩師、
 《吉咲緋春(ひばる)》も、
 弟子の《水祈紫穂(みずきしほ)》と共に、
 仕事がてら東京を訪れ、
 大樹をまず祝おうと、
 離れた席で待っていた。

 
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Last updated  2006/10/28 08:36:20 AM



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