カテゴリ:書評
久しぶりに、心動かされる小説を読んだ。
読んだばかりで、まだ、内容についてコメントできるほど、 きちんと作品を咀嚼できていない。 けれど、きちんと咀嚼したい、と感じさせる小説であることは確かだ。 そして、ひとつはっきりと気づく。 私にとって、小説とは、「問いを投げかけてくるもの」だ。 私が心動かされる文学は、物語の形をとった哲学である。 作者が答えをあらかじめわかって書いている文学、 作者の価値判断がはっきりと感じられる文学、 作者が啓蒙的な文学には、私は心惹かれない。 それらが、どれほど美しく、どれほど素晴らしくても、 それらはただ美しく、素晴らしく、完成形としてそこにあるもの、だ。 文学というよりも、むしろ美術であり、鑑賞の対象なのである。 だから、私の好きな文学は、基本的に暗い。 遠藤周作が好きで、ドストエフスキーが好きで、初期の藤沢周平が好き。 どこをどう切り取っても、サガンとか出てこないのである(苦笑。 (いやサガンはサガンで異常に切ないので、この例えは間違っているかも。) 茂木健一郎によると、「感動する」とは「脳に傷をつけられる」ことなのだという。 私が『朗読者』から受けた感覚を、感動と呼べるのかどうかはわからない。 けれど、「脳に傷を付けられた」ことは間違いない。 お勧めの本です。 重くて暗いけど(w。 しかし、『海辺のカフカ』にしろこの『朗読者』にしろ、 15歳ってのは、男子にとってどんな意味があるんだ? うーむ。。。。 以下備忘で、いくつか、気になった文章を。 「黙殺というのは、数ある裏切りのヴァリエーションの中ではあまり、目立たないものかもしれない。(略)この黙殺行為は、派手な裏切りと同じくらい、二人の関係の基礎を揺るがすものなのだ」 「彼女は常に戦ってきたのだ。何ができるかを見せるためではなく、何ができないかを隠すために」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[書評] カテゴリの最新記事
お久しぶりです、お元気ですか?
しばらく「読書ばなれ」していた私ですが、 久しぶりにブログにお邪魔して、刺激されました。 私の読書歴ではあまり参考にならないかもしれませんが・・・ 最後に読んだ本は The Glass Castle (Jeannette Walls)(洋書)、 暗いけど、おもしろかったです。 江國香織はたくさん読みましたが、 「きらきらひかる」がオススメです。 古いものでは、 「悪女について」(有吉佐和子) 「こころ」(夏目漱石)は 今でも何年かに一度、読み返します。 偶然にも、昨日、うちの主人が 「僕は読んで学べる読み物が好きだ。小説からは学ぶものがない」と言い、私は 「それは違うと思う。文章やコトバという、 人間にとって、限られた、不自由な道具を使って、他者に感覚や、気持ちや、経験を伝える、という意味では小説にも学ぶところはたくさんある」と言いました。 心に残る(引っかかる)文章を見つけたときは、 その本のことを忘れませんよね。 (August 23, 2006 12:09:36 AM)
miffyさん
お久しぶりです。 私も「こころ」は大好きです。 近代日本文学の最高峰をなす作品だと思っています。 有吉佐和子といえば『華岡青洲の妻』が凄みがあって好きです。 「悪女について」は読んだことなかったので、今度読んでみます。 江國香織はねえ・・・嫌いじゃないんですが、 「んもう、繊細すぎるよ!!アンタ!」と言いたくなってしまうのです(w。 >「僕は読んで学べる読み物が好きだ。小説からは学ぶものがない」 ・・・うーむ。もちろん何を「学び」と呼ぶかは、人それぞれだと思うのですが、 端的に言えば、小説からは「人の心」というものを学べると思います。 そして、それ以上に「自分」というものを学ぶ機会になると思います。 特に「自分だったらどうするか」ということを考えながら読むと、思っていなかった自分を発見したり、「あのときわからなかったあの人の行動の意味」がわかったりするものです。 ぜひ、小説をおすすめしてあげてください。 昔嫌いだったものでも、年とともにその良さがわかってきたりしますから。 (August 31, 2006 02:50:22 AM)
おひさしぶり。お元気してますか?アタマは暇ヒマなalphanuです。
最近読了したのでハマったのは「フェルマーの最終定理」です。 簡単ではないですが、数学の素人でもおもしろく読めると思います。 あと、意外なところでは宮本常一著「忘れられた日本人」とか、 鷺沢萌著「ありがとう。」とか。趣味じゃないかも知れませんが、 とりあえず本屋で手に取るのはいかが?神風怪盗ジャンルより。 「フェルマーの最終定理」 http://item.rakuten.co.jp/book/4049400/ 「忘れられた日本人」 http://item.rakuten.co.jp/book/146355/ 「ありがとう。」 http://item.rakuten.co.jp/book/3625366/ (September 10, 2006 10:23:43 PM)
alphanuさん
>おひさしぶり。お元気してますか?アタマは暇ヒマなalphanuです。 >最近読了したのでハマったのは「フェルマーの最終定理」です。 ----- わたしもこの本、好き! 最近、「文学がわかる理系の人」が、いいのではないかと思っております(w。 (September 18, 2006 10:39:54 PM)
「科学者の業績とは。。。」Karl Popperの考えはちょっと違うです。。。
どう思う? http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%91%E3%83%BC (September 19, 2006 01:20:39 PM) |
|