テーマ:国際恋愛(198)
カテゴリ:恋愛について
L'amour fou ~私を最も愛した男~ 1 の続きです。
横断歩道の手前に立つ彼と、その彼にゆっくりと近づいていく私。 青の信号が、早く赤に変わってくれないかと念じていた。 横断歩道に差しかかる寸前、上手い具合に信号が赤になってくれた。 私は微笑を浮かべて、再度彼のほうをチラッと見て彼の横に並んだ。 「Bonjour.」 すると、その男性が私に挨拶してきた。 「Bonjour.」 私はチャンス、とばかりに笑顔で訊いた。 「ここで、どなたか待っているのですか?」 彼は、私の質問には答えず、 「さっき日本食スーパーにいた方ですよね?」 と聞いてきた。 「はい、そうです。あなたもいらっしゃったのですか?」 としらじらしく聞いてみた。 「うん。買いたいものがあったのだけど、見つからなくて。 僕、日本食が好きなんです。 あなた、日本人ですよね?」 「そうです。」 「僕はノアール。あなたは?」 「プルメリアです。」 私達はその場で10分くらい立ち話をした。 その間、信号は何度も青に変わり、何人もの人が通り過ぎていった。 「よかったら、コーヒーでも一緒にいかがですか? 時間ありますか?」 「ええ、少しなら大丈夫ですけど。」 私は腕時計を見ながら、もったいぶってこたえた。 内心、 『時間ならありますとも、ありますとも、何時間でも!!』 と狂喜の声をあげながら。 彼はすぐ側にある、ドイツ系の小さな会社で働いている人だった。 パリ生まれのパリ育ちのパリジャンで、今は私とは逆側のパリの西、 16区に住んでいた。 日本の映画が大好きだったり、日本の歴史に詳しいことに驚いた。 日本に1ヶ月間ホームステイをして、日本語学校に行ったことが あるそうで、少しだけ日本語も話せた。 アメリカにも仕事で5年ほど住んだことがある彼は、 流暢な英語が話せることが分かった。 私達は、英語4割、フランス語4割、残り1割簡単な 日本語の単語を織り交ぜながら、長い間会話を楽しんだ。 いつの間にか、すっかり日も暮れてしまっていた。 私達はお互いの電話番号を交換し、カフェを後にした。 私は、久しぶりに地に足がつかない感触を覚えた。 メトロの中で、顔がにやけないようにするのが大変だった。 フランスに来て以来、何人かのフランス人男性とデートをしたが、 彼らときたら、会ってすぐに手をつないできたり、すぐにキスを しようとしてくる。挨拶の空気へのキスではなく、唇にだ。 パリの男性ときたら、こっちの気持ちなどお構いなしなのだろうか、 といつも思っていた。 でも、ノアールは最寄の駅まで送ってくれた後、握手をして別れた。 それから、フランス人はナンパをしておきながら、お茶代すら出して くれない人が多かった。テーブルチェックの時に、自分の分のお金だけを 置くのだ。 『私って、安い女だと思われている?』 心配になって、他の日本人女性に聞いてみたところ、ナンパをして きたにも関わらず、やはりお茶代や食事代は、割り勘にされることが 多いともらしていた。 フランス人は、恋人になったり奥さんになったりするまでは、 割り勘にする男性が多いのでは、という結論にいたった。 『なんだ、私だけじゃなかったのか。』 安心すると共に、『フランス人=ケチ』 という公式ができていた。 でも、ノアールは私の分も支払ってくれた。 外見が私の好みで、話が弾んだ。 それに加えて、この2つは非常にポイントが高かった。 絶対に彼をものにしてやる。彼の恋人になってやる。 そう決心した私は、家に帰るなりノートにメモをした。 ・彼から電話があるまで、自分からは連絡しない。 ・電話があっても、長引かせないで用件を終えたら切る。 ・自分からデートに誘わない。でも誘ってくれたら、できるだけ 間を置かないで、他の予定を変えてでも早めに会う。 ・もしその後付き合うようなことになったら、彼から2回電話が あれば、私から1回かけてあげるくらいの割合にする。 ・彼が強く誘ってきても、最初の1ヶ月は絶対に部屋に泊まらない。 ・私はきれい、私は愛されるに値すると毎日唱える。 この頃は『The Rules』のことは知らなかったが、今まで何度も辛い恋を 繰り返してきた私は、自分の失敗を基に、体で覚えたルールを作っていた。 そのメモを目に付く所に貼って、彼の電話番号は机にしまった。 つづく 国際恋愛・結婚の人気blogランキングに参加しています お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[恋愛について] カテゴリの最新記事
|
|