327442 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

七生子のお買い物日記

七生子のお買い物日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Category

Recent Posts

Archives

Oct , 2024
Sep , 2024
Aug , 2024
Jul , 2024
Jun , 2024

Free Space

七生子の最近読んだ本
Mar 2, 2004
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
* 本日の読み終わり *
中山可穂『弱法師』文藝春秋 bk1楽天

  “かなわぬ恋のためいき かなわぬ恋こそ、美しい”
  能をモチーフに現代の不可能な愛のかたちを描く、
  著者初の中篇小説集。(~帯より~)
  
1年ぶりの可穂さんの新刊を読了。
一気に読み終えて…その研ぎ澄まされ結晶化したかのような愛の姿に
すっかり魂を持っていかれちゃった私である。ほよ~ん。うっとり。

人を愛することにより、人は豊かになる。そう、それは真実かもしれない。
だけど可穂さんが描く愛とは、愛することにより自身の身を切り、血が噴きだすような激しい愛だ。
待ちに待った新刊は、「能」をモチーフにしているせいか、今までのお話とは少し違う。
「運命のひとりの相手との、永遠に終わらない愛」「狂おしいほどに激しい愛」の姿を描いてはいるが、
それはあくまでも「片思い」。
願うようには受け止められず、報われないゆえ純粋な3つの愛の姿が、切々と描かれているのだ。 
そして3編とも、作品全体を死の影が色濃く覆っているのもポイント。

弱法師

  患者として訪れた難病の美少年朔也に、心惹かれてしまった医師鷹之。
  いつしか、主治医の立場を超えた愛情を朔也に抱くようになる。
  そして妻を捨て、医者としての安泰な生活を捨て、朔也の義父となり治療に没頭。
  しかし懸命な治療の甲斐もなく朔也の病気は、一向に良くならないのだった。
  そして…。

可穂さんには珍しい男同士の同性の愛。
描き方こそ違うが、まるでいにしえの“耽美小説”のようで、ちょっと驚く。
(義理の父親が美しい息子に過剰な愛情を抱く。ぢつは息子も義父を愛してしまい…とか)
行く手にある死がくっきりと見えるからこそ、いっそう激しく深まる愛。
しっかしよくよく読むと、鷹之と朔也の愛では、愛の種類が違うのに気づく。
「ぼくは朔也のことが好きだ」そう口走るものの、決して朔也が望むような愛ではなくて。
鷹之の視点で物語が語られるのだが、ふとした拍子に表れる鷹之へ向かう朔也のひたむきな愛が…
切なくて切なくてたまらない(なんて鈍いんだ!この男は!!ぷんすか)。

朔也の病気はどうなるのか?朔也の愛の行方は?張り詰めた空気のまま、物語は進む。そして。
「永遠」に繋ぎとめるため、愛に殉じたのだろうか。純粋な想いに切々と胸を打たれる。
絵画のように静かで美しいラストシーンが、とても印象的だった。

卒塔婆小町

  小説家志望の青年が墓地で出会ったのは、薄汚いホームレスの老婆百合子。
  しかし彼女は、かつては小町と絶賛される美女で、しかも敏腕の編集者だったのだ。
  彼女の口から、かつての新鋭気鋭の小説家深町との愛が、語られる。

小野小町と深草少将の伝説を下敷きにしている能の「卒塔婆小町」がベースになっているのだが、
可穂さんらしい解釈が施されているのがポイント。
可穂版小町では、百合子が深町の愛を受け入れないのは傲慢ゆえではなく、
自らのセクシュアリティゆえ、なのである。
いくら愛されてもそのセクシュアリティゆえ、捧げられる愛を拒絶する百合子。
いくら愛しても男ゆえ、愛を受け入れてもらえない深町。
決して重なり合うことはないと分かっていても、残酷な美しいミューズへの愛のために
愛の証の百篇の短編を、命を削りながら捧げ続ける深町の姿に、胸が熱くなる。
(百合子へ宛てた深町の手紙がまたいいのだ。その美しさに、またまた胸が熱くなる)

愛を拒絶しながらも編集者の立場として、作品を書かせねばならないという大きな矛盾。
その矛盾を自覚し、心を痛めながらも、そうさせずにはいられない業の深さを抱える百合子に
どうしても心惹かれてしまう。
(作家深町にも編集者百合子にも、可穂さんが投影されているんじゃないかしら)

最初から破たんが透けてみえている愛。だけど求める愛とは違う形ながらも、
百合子と深町の2人の孤高の魂同士が共鳴し合い、
どこか深いところで、固く結ばれていたように思えてならない。
かなわない愛の切なさ、純粋さゆえに、とても美しい作品である。

浮舟

  薫子おばさんと母、父が不可思議な関係にあるとは
  物心ついた頃から薄々は感じていた。
  ある日、娘である碧生は決定的な証拠に気づいてしまう。  

いかにも可穂さんらしい作品かも。
薫大将と匂宮の2人に言い寄られる浮舟の物語を、舞台をごく自然に現代の鎌倉へと移し、
“娘から見た両親たちの秘め事”として描く。
すべてを知り、母親もまた生身の女であったと気づくシーン

“ふたりのきょうだいに熱烈に愛され続け、からだを引き裂かれ続けるにひとしい
母の人生の苛烈さを、私はようやく思い知ったのである”   (p.277)

胸が思わず熱くなる。
娘として母親の生を理解し肯定すること。それは同時に自分をも肯定することで。
碧生がこれから歩む先に、唯一人の人を一生かけて、馬鹿みたいに愛する愛が訪れるのだろうかと
ふと思いを馳せてしまう。
愛しつづけることの深い悲しみと喜びを内に秘めながら、
ひたむきな愛を注ぎつづけるハンサムな薫子さんがイチオシ(*^^*)。

ライン2

3編のうちでは「卒塔婆小町」「浮舟」が好き。
収録された3編それぞれ、中山可穂だからこそ、彼女しか書けない作品だと思う。
中編にも係わらず、長編を読んだ後のようなずっしりした重量感を感じる。はぁ。
百聞は一見にしかず。ぜひ小説を読んで可穂さん描く愛の世界に、魂を浮遊させていただきたい。

それにしても。感じたことを言葉にして表現することって、なんと難しいのだろう。
心が打ち震えた小説の素晴らしさの半分も、言い表せていない気がするわ(号泣)。
(可穂さんの小説を読んだ直後は「ああ、私もこんな風な恋がしてみたい!」と思うけど、
実際、血が噴きだすような激しい愛に魂も身体も翻弄されるのは、シンドそう。
軟弱モノの私は、パス。可穂さんの小説さえあればいいわ^^;)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Mar 4, 2004 09:44:40 AM


Profile

七生子☆

七生子☆

Favorite Blog

2024年9月の読書ま… ばあチャルさん

ネコの気のむくまま… ネーパ07さん
夕焼け雲 朱音!さん
ちょろいも裏日記 ちょろいもさん
福内鬼外(月日が往… 123maoさん
本格ミステリと旅の… ☆かよさん
眩暈堂書店繁盛記 眩暈堂さん
うたたね通信社 ~… 山村まひろさん

Comments

七生子☆@ Re:ケータイにメールしちゃったよ!!(07/18) ■ あみぴさん 代用機があるので、そち…
あみぴ@ ケータイにメールしちゃったよ!! 昨日、携帯にメールしちゃいましたよ!! …
七生子☆@ Re[1]:トイレトレーニングを始めるかな。(07/12) >なかさんさん そうなんですよー。 …
なかさん@ Re:トイレトレーニングを始めるかな。(07/12) ほえ! ご長男オムツ外れたのそれ位です…
七生子☆@ Re[1]:ナツイチ、ストラップを貰っちゃう♪(06/28) ■ くりむーぶ389さん 1冊また追加で購…

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。

© Rakuten Group, Inc.
X