青い空の下で

[学校、病院，障害児をとりまく制度] カテゴリの記事

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• 私たちはいつも不幸だった？

  小泉政権を振り返る番組を見ていると社会は年々悪くなってきたような印象を受ける。犯罪は増え、格差が拡大し、社会福祉は削られる一方。繁栄に見えて実はツケで遊びまくっていたバブルは別とするとその直前が最もよかった社会だったんだなぁ、と思うが、それじゃ、これから社会に出て行かなければならない子供たち、２０年前だったらよかったのかな、と自分に問うと違う答えが返ってくる。姉娘のことを考えると２０年前はかろうじて男女機会均等法が施行されたばかり。まだまだ女性の職場は狭かった。一般事務なら正社員になることは難しくなかったが、かといって女性が長く勤めることは会社も社会も好意的に見てはいなかったから、正社員の最大の特典である終身雇用は多くの女性にとって意味を持たなかった。あの当時に就職し頑張って働き続けた女性達も９０年代後半のリストラの嵐を絶えられるほどの確たる地位を得た人は一握りだったろう。もう一人の子供、発達障害を持つ息子のことを考えれば、さらに今だ。非難の多い支援法ではあるけれど、２０年前では一部でＡＤＨＤや学習障害が取り上げられたばかり。軽度の発達障害の子供はほとんど放置されていた。就労の支援も身体的なハンデのある人にようやく光が当たり始めた頃で、今よりはるかに生きにくかったろうことは想像に難くない。これは我が家の勝手な事情だから、社会全体で見れば今の方が悪い社会なのかもしれない。それにしても、社会ニュースを意識し始めた中高生時代を含めて、日本の社会がよかったという記憶が私には全くないというのも不思議に思える。バブルという例外はあったけれど、高度成長期はインフレの不安、公害の悲劇、低成長になってからは円高でもう、日本の経済はおしまいだというような見出しが大きかった。その後は、円安でもうだめだとも言っていた。今、振り返ってみればバブルまでの社会保障は世界でもトップクラスだったと思うけれど、スウェーデンなど一部の国を引き合いに出しては、日本は福祉が遅れているというのが誰も疑いようのない社会通念だった。格差が広がってと嘆く声が多く聞かれるけれど、一億総中流というのは多分に自嘲的に使われていたと思う。みんな、アメリカン・ドリームの華やかさにあこがれていなかったか。今の世の中は先に明るい見通しがないから子供の事件が多いというけれど、あの時代は日本の社会ではレールが決まっていて、そこそこの人生しか用意されていないから、子供は希望が持てないといわれたっけ。バブルの頃の地価高騰の時、地価が適性になったらどんなにいいかと国民すべてが願っていた。でも、地価が下がって幸せにはならなかった。私が小中の頃が詰め込み教育のピークだったらしい。落ちこぼれ問題以外にも詰め込み秀才は社会で役には立たない、個性と才能を伸ばそうといって、詰め込み教育は廃止された。ホリエモンや村上さんがその成果なのか？違うな、彼らは偏差値教育の勝者でもある。ヒデや松井か？いつもいつも、過去がよかったというのはおかしいな。日本人って暗すぎるのか、それとも政治を見る目が成熟していないのか。

  2006/09/09

• 高校卒業しても働かせたくない

  先日、日記に書いた高等養護学校は授業の半分が職業訓練で、高校卒業と同時に働き出すということになる。その頃、姉娘はまだ大学生。楽しい毎日を送っているだろう。不憫・・という言葉が頭に浮かぶ。１８才という年は社会に出るのに早い年ではないだろうとは思う。けれど、この子は人より幼いのだ。ハンデを持って生まれ、精神年齢が人より幼い。そういう子がどうして健常な姉娘より先に社会に出て行かなければならないのか。姉娘が２２歳で社会に出るのなら、成長の遅いこの子は３，４年遅くてもいい位なのだ。誰もが大学に行くわけではないから高校を卒業して働くことを想定しても、せめて、２０才過ぎてからにさせてやりたい。少子化の現在、高校も大学もお客様として受け入れてくれるところはどうやらあるらしく、形ばかりなら大学生にすることもできるかもしれない。知的レベルは低くても社交性があればそれなりに大学も意味があるかもしれないが、自閉傾向の子では居場所を見つけることもできないだろう。それに、働くということに慣れる期間はどうしても必要だ。先日の高等養護とは別の学校の話だが、職業訓練の時間は先生を課長と呼ばれるというようなことまでして、職業感覚を見につけさせるということを聞いたこともある。つまらなくても、疲れてもこつこつ働かなければならないということを言葉で言うだけでは分からない子ということは確かだから、普通の高校を出て、そのまま働くということは就職先があっても無理だ。段々行くのを嫌がって、あるいは無理をしてストレスで病んでしまうことは目に見えている。高校まで、小学校卒業位のことをゆっくり学び、その後２，３年、就労に向けての職業訓練を積む。そういうのが理想なのだけれど、、、、就労支援センターのようなものがぼつぼつできて来てはいるけれど、りおが１８才になったときどの程度あてにできるようになっているだろうか。

  2006/07/06

• 軽度知的障害児向け高等養護学校

  通学圏内に軽度知的障害児だけの高等養護ができるというので、説明会に行ってきた。障害の幅が広い生徒を対象とした従来の養護学校では適切な支援ができなかったところを改めるため、軽度に限定して職業訓練を行い、１００％の企業就労を目指すという特別支援教育法を受けての自治体として展開する最大の事業なのだという。お役所だけで閉じていると、意気込みの割には変なものができちゃったりするのだけれど、民間の就労支援コンサルタントの意見なども取り入れて、なかなか良い内容になっているように思える。・　頭を下げて、雇って頂くようなことはしない。　　企業にとっても損のない人材に育てる・　そのために社会のニーズにマッチした職業教育をほどこす。　　陶芸なんて有田焼産地でだって就労できない。　　木工なんか刑務所製品にかないっこない・　療育手帳、障害者枠をあてにすることもしない。専門家としての背景と意気込みを感じる話を聞いて、息子の進路の一つとして真剣に考えることにした。公の動きというのは無駄なところも多いけれど、財布も大きく、的確に動けば個人や民間の団体にはとてもかなわないパワーを発揮する。期待したい！

  2006/06/30

• 情緒障害学級という名前がついたとき

  息子が自閉を伴う発達障害と知り、中学を特殊級にと考え始めた頃、情緒級という言葉を初めて知った。それでも、情緒級の対象の多くが自閉症児だと分かるまではそれなりに時間がかかった。自閉症が情緒？どうも、しっくりこなかった。実際、ある自治体の情緒級の紹介には以下のような記述がある。”様々な原因によって、楽しいはずの学校生活になじめずに、学校を嫌がったり、情緒不安定になったり、　友達とうまく関われなかったりすることがあります。通級制情緒学級は、このような生徒に対して、本来もっている自分の力を発揮し、自信をもって楽しい学校生活が送れるように援助することを目的とした学級です。”先日日記にも書いたけやきの郷理事長（日本自閉症協会副会長）須田初枝さんのお話に情緒級の成り立ちについて、触れられたところがある。やまびこ作業所で働く須田さんのお子さん達は40代が中心らしいが、この年代の自閉症者の中で義務教育9年をまっとうできた方はいないという。長らく就学猶予の名の下に義務教育の外に置かれていた知的障害者が受け入れられるようになってからも重度の自閉症児を受け入れてくれるところはなく、須田さんたち親の会の働きかけでようやく、従来の知的障害とは別の障害として対応されることになり、杉並区立堀之内小学校に情緒障害級が設けられたのが1969年。そのときに親達は自閉症級としてくれと強く求めたのだが、受け入れられず、それは返す返すも残念だった、との言っておられた。自閉症の診断ができる医師も少なく、自閉症ではなく、知的障害でもない身体面以外の障害というものがあることを思えば行政としてもやむをえないものもあったろうが、自閉症級というものが誕生し、全国の都道府県に生まれていれば自閉症の認知も飛躍的に向上していたのではないだろうか。今度、情緒障害と自閉症を分ける方針が決まったと言う。歴史のページが進む。ゆっくりではあるけれども。

  2006/04/08

• あ・うんの呼吸で作業する―やまびこ製作所の話

  けやきの郷理事長（日本自閉症協会副会長）須田初枝さんのお話を聞いてきた。須田さんは現在80才、日本の自閉症児を社会的に（家庭の中だけではなくという意味で）支えてきた親の第一世代ともいうべき方だろう。息子さんはＩＱ３０以下という最重度自閉症であり、現在けやきの郷が運営するグループホームに住み、やまびこ製作所で働く日々だという。そのやまびこ製作所の様子を記録したビデオを見せて頂いた。そのきびきびした働きぶりに驚く。息子の特殊級の様子を見ていても思うことなのだけれど、障害児でも体操などで決められたプログラムをこなしているときにはその他の子とあまり、変わりなく見えることがある。休み時間などになると身体を揺らしたり、視線がふらふらしたりと、特徴が現れるのだ。しかし、ここの方達はそのギャップがさらに大きいとでもいうか、作業所へ行く様子（グループホームから歩いて通う）を見ると自閉症者の特徴が顕著なのに、作業中は自閉症に慣れてきた目で見ても、これが自閉症の人？というか重度の知的障害者なのか、と思うような動き方を見せている。（ここの方達は最重度から中度自閉症）パレットというとお分かりだろうか。コンテナ輸送でフォークリフトで持ち上げるときに使用する風呂場のすのこのようなもので、これがこの製作所のメインの製品になっているのだが、作業は釘打ちのエアガンや裁断のためのチェーンソーが回るかなり危険とも思える作業だ。それらの器具を操り、リズミカルに作業を進めていく彼らの動きは無駄がなく、視線も手元から外れない。事故の発生は過去十数年において２件の極めて軽微な怪我だけだそうで、むしろジョブコーチの職員の方が怪我をすることが多いと言う。しかし、何が驚いたといっても、驚いたのは２人一組になってあ・うんの呼吸で仕事をしますとうかがったときだ。釘打ちの作業は交互に行うのだが、当然、人によってスピードが違う。上手な人がリードして、遅い人のリズムに合わせて作業を進める。ペアはその日の都合でよく変る。そんなことが？？？これがどれほどすごいことか自閉症に慣れていない方には分かっていただけないだろうけれど、自閉症というのはコミュニケーションの障害なのだから、あ・うんの呼吸で動くし自閉症児では矛盾を起こしてしまう。いくら２４時間生活をともにしている仲間の間のこととはいっても、生まれたときから一つ屋根の下にいる家族とでもコミュニケーションが困難なのが自閉症というものだ。私の驚きが間違いではない証拠に太田ステージで有名な太田先生がここを見学した際に、「どうして、こんなことができるようになったんですか！？」との問を発したそうだ。「どうしてでしょう？私達は実践家ですから、説明は付けられません。それは先生のお仕事でしょう。是非、研究して発表してください。」と言われて（頭を抱えて？）お帰りになったとか。須田理事長の息子さんは48才。作業所でもらう給料で生活をまかない、親の仕送りは元より障害者年金にも手を付けず、受給額が2000万円を超えて、過去の高金利もあったから総額は倍以上になっていると言う。規則正しい肉体労働で身体は健康であり、家では掃除、洗濯を各自が行い、余った時間はそれぞれの余暇（テレビを見たり、お気に入りの本を朗読したり、ぬいぐるみと遊んだり）を過ごし、年に何度かはイベントとして、スキー教室やディズニーランドに行く。自閉症の診断さえもままならず、療育という言葉はおろか障害者級にも入れず子供時代を過ごして来たＩＱ３０にも満たないという人がこういう生活が送れるようになった、それはほとんどが親の力だった。この先、やらなければならないことを思うと重さに押しつぶされそうになるけれど、もしかしたら自分が期待した以上のものが手に入るかもしれない。須田理事長によれば現在日本の施設で成功しているのはほとんどお母さんが起こしたところで、何故かお父さんが作った施設はなくなってしまったそうです。それは違うの世代のお話ですよね。頑張れ！21世紀のお父さん達！

  2006/04/05

• 障害者料金というもの

  知り合いの親御さんから、とてもよい歯医者さんを見つけたお陰で、なかなか治療が受けられなかった息子さんが普通の治療はもちろん、抜歯でもなんでも受けられるようになったという話を聞いた。例えば空気を当てる機械はまず、手に当ててみせ、次に頬にあて、それから口の中に入れていくのだそうだ。もちろん、その都度丁寧に説明してくれて、最初は怖がって口をあけなかった息子さんもすっかり落ち着いたのだとか。我が家の息子は特に知覚過敏な様子は見られないのだけれど、５年生の時に乳歯を抜こうとしたら頑として応じなかった。その時はそのまま、帰り、次のときによくよくいいきかせてなんとかなり、その後は抜歯もOKになって問題はないのだけれど、歯医者で苦労する親御さんは多いと聞く。実際、その歯医者さんも障害を持つお子さんの予約が一杯なのだそうだ。是非、そういう歯医者さんが増えて欲しいと思うのだけれど、そこで治療を受けるためには障害者料金が必要で通常の治療費のほかに２５００円かかるという。障害者料金か。確かにサービスを提供する相手としては格段に手がかかる相手に対して、料金を要求するのは仕方がないことだ。お金を払ってもやってもらえばありがたいということは確かなのだし。でも、でも、合理的な説明以外の部分でひっかかりを感じてしまう・・・歯医者さんが悪いわけでは決してないのだけれど。

  2005/11/25

• 自閉症のあるべき療育は

  以前、講演会のサマリーを載せてあるサイトで自閉症の世界では著名なある医師がこの２０年間で日本の療育事情は劇的に良くなり、現在は世界でも有数のレベルにあると述べておられた。医師と当事者の間の温度差は常のことだけれど、これもかなりズレがないかな。そんなことを思っていたのをニューヨークで療育を受けさせているお母さんの書き込みをあるところで読んでいて思い出した。日本の療育レベルとは大分違うようなのだけれど、そもそも、あるべき療育プログラムというのは定まった形があるのかしら。内容的にはある程度のものはあるのだろうけれど、例えば重症児の何％が好転する最も費用対効果の大きいカリキュラムは（つまり、最善のものではなく公的教育の一環として妥当と思われるレベル）週何時間で、このような内容でというものがないと行政に要求するのも具体性がないし、福祉が遅れている地域に住んでいる親が自分で補う（できるかどうかはわからないけれど）こともできない。多くの親は現在の療育プログラムが充分と思っていないのは誤解なのか否か。この先生の診察は当然半年待ちというような状態らしいけれど、もし、子供が３才だったらどんなことがあっても、診察を受けに行って聞いてみたい。ニューヨークでは毎日２時間週４日、ABAを無料で受けられると聞きましたが、このような療育プログラムは日本では有料のものでも受けられるところはあまりないと思うのですが、日本の療育と有意の差はないのでしょうか。私の住んでいるところでは療育はほとんど受けられないのですが、親が家庭でできることはないでしょうか。そのための手引書等があるといいのですが。住んでいる町の自治体に療育プログラムを用意してくれるよう働きかけたいのですが、先生のような高名な方があるべき療育プログラム、週何時間程度等、カリキュラム内容を含めた具体的なものを提示していただけると大変ありがたいのですが。などね。

  2005/02/18

• 母と論争したこと

  母が日本から持ってきた雑誌を見ていたら森元総理が小泉総理の改革案に反対しているという記事が出ていた。最近の首相の中でもとりわけ空疎な人というのが私のこの方への評価なのだけれど、ここに載っていることが裏心ないものだとするならば、この方の見識への評価を変えなければいけないわ、と思った。争われているのは義務教育費国庫負担金の削減問題についてなのだ。現在、義務教育は国が半分を負担しているのだけれど、これを削減するという。いいこととは思えない。地方の権限が大変強いアメリカにいてそう思う。アメリカの学校の障害者プログラムの話をすると、多くの方は日本よりずっといいとおっしゃる。多分その通りなのだろう。でも、それは私が住んでいるこの町の義務教育であって、アメリカ全国津々浦々の事情は全く違う。アメリカの場合、国からの支援が多少あるかどうか知らないけれど、おもな財源は市毎にあるので、豊かな市と貧しい市の学校教育レベルは天と地ほどにちがうのだ。以前日記で子供達の通う学校には車椅子の子供が何人もいて、みんな当然のように地域の学校で学んでいると書いた。それは本当に素晴らしいことだけれど、多分２つ先の学校予算が極端に切り詰められている市では障害者用のエレベータはあっても故障等で止まっているだろう。息子の行っている学校は申請して２週間後には発達検査をしてくれたが、別の市では８ヶ月経っても放置されているという親の投稿を読んだことがある。アメリカではアメリカ人であることで保障されるナショナル・ミニマムは大変小さいのだ。しかもアメリカは大都市は別として、かなり厳密に所得に応じて住む場所が決まってくる。裕福な家庭が多い市は安定した財源でいい教育を行い、育った子供達は高収入への手がかりを得る。貧しい地区では逆の構造で貧困家庭の再生産が行われてしまう。「そういうところがアメリカみたいになったら大変よ」というと母は、都が中高一貫学校を作るように地方ごとに自由にやったほうがいいという。確かに地方の実情に合った内容で行うほうがいい結果を出す場合もあるとは思う。国の負担率が半分と言うのが最適かどうかも分からない。もしかしたら３分の１でもいいのかもしれない。けれど、国が国民の教育に責任を持つと言う点で分かりやすい配分だと思うのだ。おまけに母曰く、「日本はアメリカみたいにはならないわよ」ときっぱり言ったのだ。これには驚いた。私、２０世紀最後の１０年は日本がそれまで価値観とは完全に別れを告げた時代だと思っていた。カルト教団が毒ガスをまき、１４才の少年が猟奇連続殺人を犯し、土地は暴落したこの時代を過ごして来て、日本はアメリカみたいに（悪く）ならないって、なんで言えるの！今だって、むちゃくちゃな大人が増えているのに、教育がしっかりしていなかったら、その子供達はどうなるのかと思うのだけれど。母は戦前の生まれの人だから、一番の混乱というと戦争になって、後のことは小さなことなんだろうか。それとも、母は苦労はしたけれど安定した人生を送った人だからそう思うのだろうか。余裕のある家庭は学校だけでなく、塾に行かせたり、あるいは私立に通わせたりする。でも、国民の誰でもが受けることのできる教育は国の責任を明らかにすべきだと思うのだけれど。

  2004/12/07

• 発達障害支援法の意義

  前にも日記で紹介したことがあるのだけれど、学研のサイトに“自立をめざして”というWEBマガジンがある。発達障害の専門家が交代で記述しているコラムで、濃い内容のものが多いので、毎回読ませていただいている。このサイトのバックナンバーの２００２年の１２月号にアスペルガーで有名な杉山登志郎氏が” 軽度発達障害への偏見“と題した記事を書かれている。杉山氏は依頼を受けてある雑誌に軽度発達障害についての記事を書いたところ、その雑誌の編集後記に小さな障害に診断を下すより、教育で解決すべきではないかと書かれたことに激怒されているのだ。軽度発達障害を障害と認め、通常とは異なる教育で対応しようということへの抵抗感が現れている。大分前に読んだこの記事を思い出したのは先週、“障害児とともに生きる”のテーマに投稿された発達障害支援法への反対意見を読んだからだ。見えにくい障害と言われる軽度自閉症、学習障害等、軽度知的障害は同時に理解されにくい障害なんだと改めて思う。実際、今でも息子を見て、この子が本当に自閉症なんだろうかと思うこともしばしばなのだから、同種の子供達に接することのない人たちが活字の情報から推測できることは限られるのも無理はないと思う。－　そのレベルの障害は多かれ少なかれ誰でもある－　障害というレッテルを貼って、教育の責任を逃れている－　薬漬けの子供を増やすだけ今回成立した発達障害支援法は当然、不備なところもたくさんあるだろうけれど、とにかくこの見えにくく、分かりにくい障害を社会が認知したということが何より意義があることだと思う。少なくとも学校の先生と、「この程度は個性じゃありませんか、お母さんの思い過ごしでは」というような会話で親が疲弊するようなことはなくなるわけで、それだけでも大きな進歩だろう。これがうまく起動に載ってくれるまでにはまだまだ時間がかかるだろうけど本当によかったと思う。

  2004/12/03

• 現在のIEPの内容

  決まったIEP(Individual Education Plan)の内容は以下の通り。ここにはどうやって、それを達成するかと言う内容は書いていないのだけれど、それについては別途、特殊教育の先生からお電話を頂いた。挨拶についてはビデオを使って、どういうようにするのかを見て、それから練習をする。友達との関わりはマジックカード（ポケモンカードのようなもの）を使い、友達とゲームをし、その中で色々やり取りを学ぶなど学校の取り組みはよく対応していただいたと思っている。通常、IEPは年に１回の見直しなのだけれど、今回は初めてなので、１月に見直しをお願いした。内容的には不満はないけれど、計画表としては責任者と具体的な方法が明記されているといいと思うのだけれど。後、達成基準が挨拶などはともかく、どうやって判断するのかあいまいなところもあるな。Language/Communication現在の問題点：挨拶に参加していない。彼は横に立って、ただ見ていることが多い。教師や他の生徒に挨拶しないことは他者との交流を妨げる一因となっている。年間目標：教師、級友に日に１回は挨拶すること。達成基準：３週間に５回チェックし、４回を達成とする問題点：教師の指示に従わず、好きな本を読んでいる。年間目標：アイコンタクトをして、教師に注目し、アクティビティに参加すること。達成基準：８週間の間に７０％達成することを目標とするPre-Academic/Academic-Writing問題点：学校で書くことはほとんどない年間目標：教室において、促されたときに１つの単語、文を書けるようにする。達成基準：８週間の間に７０％達成することを目標とする問題点：教師の催促や質問に反応すること、あるいは助けを求めることがない。年間目標：教材や指示を理解し、あるいは助けが必要であることを示せるようにする。達成基準：８週間の間に７０％達成することを目標とするSocial/Emotional Skills問題点：級友に関心がありながら、係わることができない。年間目標：自分から級友に係わるようになり、簡単な質問ができるようになること。達成基準：８週間の間に７０％達成することを目標とする

  2004/11/22

• 時間割が変更になる

  学校の特別教育担当の先生から電話があって、来週から時間割が変わり、お昼に帰宅できることになった。午前中は初級英語、算数、科学（算数と科学は外国人向けのクラス）、そして体育を受けて、帰宅という時間割だ。あと、午前中に週に１，２回スピーチルームなどで挨拶やソーシャルスキルの練習があって、時には特殊教育の先生がクラスルームでバックアップしてくれるということになった。よかった。これでゆっくり家で勉強をみてやれるし、学校生活もそれなりに送れる。体育は今までは午後の２時間目に受けていたので、他のクラスへの移動が無理ならお昼で帰って、体育だけ連れてくることも考えたし、学校側もそれでもよいということだったが、午前の最後の時間に移してくれた。やはりこの年頃の男の子が一日中家の中にいていいわけはないし、私が相手をするのは限界があるから、体育には参加させたかったのだ。こちらの時間割は毎日同じなので、毎日一定の運動はすることができるわけだ。ちなみに音楽や図工はその学期によって取ったり取らなかったりのようだが、体育だけはどの学年でも毎日あるらしい。肉体重視かな。その他に、ご近所の方が英語を教えてくださるという好意に甘えて、週に１回３０分ほど一緒に本を読んで頂く事になった。よその家（といっても同じアパートの３軒隣）に行って、家族以外の人と過ごすというのもりおには必要なことだろう。とにかく、とりあえず、これでやってみよう。逆に家で過剰に私が詰め込み過ぎないようにも気をつけないといけない。二人の時間が長くなるのだから。

  2004/11/05

• ＩＥＰミーティング

  今日、ＩＥＰミーティングに参加してきた。前回に続き、学校での２回目のミーティングになる。りおは特別教育の対象と認められ、いくつかの教育プログラムを作ってもらえることになった。この内容は今回はドラフトとして提案されたので、決定したところで詳細に書きたいが、例えばコミュニケーションについては教室で、きちんと先生、級友に挨拶できることを目的として、スピーチルームで週に１，２回ロールプレイを行うとか、それができるようになったら、通常の教室で練習を行う等の内容で、私としては充分満足できる内容だ。正直、こちらで特別教育を受けることをあてにはしていなかった。現地の親の会の方達から話を聞いていたのだが、特別教育は予算もあることからそれなりに判定が厳格で、りおのようなボーダーの子供は対象と認定されるかどうか、ということ、そして仮に認定されたとしても障害とは別の意味で言葉の分からない子供が現地の障害教育に参加できるようにも思えなかった。私としては学校に障害を認めてもらい、不要なプレッシャーをかけることなく、楽しんで学校にいられるよう多少配慮してもらい、お昼に帰宅することを認めてもらえば充分と思っていた。昼に帰宅することについては、午後一に参加できる体育の授業があればそれに出て、帰宅がいいのではないかということになったし、私も提示されたプログラムの内容を見ると学校にいる時間が決して無駄ではないという気にもなっている。ESLの先生によればりおは決して孤立しているばかりではないんだそうだ。先生が話す時間はもう、分からないものと決めているようで勝手に辞書を読んでいるそうだが、グループ課題の時間になると結構周りの子と係わっているというのだ。副校長もちゃんと挨拶をしているし、といってくれた。今回の参加者も前回と同じ副校長、りおが一番お世話になっているESLの先生、心理の先生、学区の特別教育担当の方々で、まず心理の先生が大学病院から送られてきたレポート内容を簡単に説明し、その後学校で行った発達検査の説明をしてくださった。発達検査を受けたときに通訳してくださったこちらに長い同じ小学校のお母さんも同席してくださったのだが、知識の項目は日本人の子にはぴんと来ない内容だったから点が低いは低いだろうと言われた。例えばクリストファー・コロンブスとは誰かとか、日本人でも知っている同級生は多いとは思うけれど、多分学校では教わる内容ではないわよね。その他、図形の認知に関するテストはほとんど普通の子と同じにできたのだけれど、図形がぴったりそろわないと終わろうとせず、実施時間が長い、つまり遅いという判定になったとか。とにかく、これで、こちらでの生活の一番の懸念事項が軽くなって、本当に一安心。まだまだ、やることは多いけれど、、、、ところで、本題とはそれるのだけれど今日はハロウィン前の金曜日、学校にも仮装をしてくる子供が大勢いた。先生方も仮装していて、ESLの先生は先生はねずみの着ぐるみに、顔にもひげを書いていて、なんか、緊張も和みました。

  2004/10/29

• 病院からのレポートが届く

  今日、病院よりのレポートがFAXで届いた。今月の初めに受けた診断の結果だ。本来ならば４，５週間かかるのだが、金曜日に学校で今後の打ち合わせがあるということで急いでくれたのだ。１５ページのレポートで、最初の数ページは現状と背景の記述なので、長さはそれ程問題ではないが、やはりお医者さんの文章は平易ではない。おまけにinter-subjective factorだとかCompensatory learning strategiesとか、親向けのレポートにしては専門用語が多くありませんか？先生！pragmatic skillなんてこの場合、どういうニュアンスがあるのだ？とにかくよく読んでみなくては。 昨日、詰まった水道管は幸い復旧した。我が家は一戸建てではなくて、アパート、日本で言うなら３ＬＤＫの賃貸マンション。アメリカに来るときにどうせならば一戸建がいいなと思ったりしたけれど、アメリカの家というのは結構メインテナンスが大変なのだ。ここは管理事務所が一回なので何かあるとすぐに面倒を見てくれるのが助かる。それでも、２つのシンクの１つはうまくいかず、スーパーでこういうものを買って試してみろと言われてやってみた。要はパイプマンのようなものなのだけれど強力なことこの上ない。塩素系のガスと言い、発熱の度合いといい、ちょっと家には置いておきたくない劇薬っていう感じだ。それでも、さすがに効果はばっちりで、水道管は簡単に開通した。まあ、ほっとしたけれど、、、、

  2004/10/28

• ナショナル・ミニマム

  ナショナル・ミニマム、国として最低限保障するあるレベルのことだ。この間、特殊支援教育の関係のサイトを読んでいたときに、行政側は現在の障害児教育はナショナル・ミニマムを満たしていると判断し、云々という記述を見つけた。障害児の親の多くはこの言葉に反発するとであろうけれど、それとはちょっと別の意味でナショナル・ミニマムという言葉はどうも障害児教育にはそぐわないようにひっかかった。というより、子供に対する支援というのはナショナル・ミニマムとはなじまないのではないか。資本主義を是とする社会では万人に同じ暮らしを国家が補償することはありえないから、ナショナル・ミニマム以上のものは自力で勝ち取るということをこの国では多くの人が支持している。しかし、その土俵には上がっていない子供に対する支援は、もちろんそれはそれである種の線引きは必要なのだろうけれども、大人に対するものとは違っていいのではないかしら。まして障害児支援ということが大人と同様のナショナル・ミニマム感覚では決して機能しまい。子供の障害に気が付いて、それからネットで色々な家庭のご事情を見て、でも私が見たところはすべて親が必死で子供を支えているところばかり、裏返せばそういう親を持たない子供はどうなるの？と思うことがある。どの親御さんも胸が痛むほど必死で、それでも充分ではないというのに、そういう守ってくれる人を持たない子供はどうなっているのだろうと。そう、ぼんやり考えていたところに この記事（下村健一の「目のツケドコロ」）にであった。秘書の不正給与問題で投獄された元国会議員の山本譲司氏が監獄で出会った知的障害者達の話だ。“毎年3万１千人の新規の受刑者のうち、4分の1が、ＩＱ＝69以下なんですよ。ところがこの内、刑務所側が「知的障害者」として認めている人、つまり療育手帳を実際に持っている人は、200人ちょっとしかいなかったんです。”このお話が正確なものだとすれば、手帳の取得率は１％にも満たないではないか。確かに知的障害を持つ方のすべてが手帳を望むわけではないことは知っている。５０以上の方は日常生活にはほとんど支障はないというし、例えば地方の農家に生まれ、後を継いだお兄さんの支援を受けられる、療養手帳を申請する役場に中学の同級生が座っているというような方なら、外聞もあって、あえて手帳を申請したりはしないかもしれない。でも、一般的に考えれば刑務所に入るというどちらかといえば周囲の支援に恵まれない人々の手帳取得率が１％もないのだ。これでナショナル・ミニマムが満たされているとは誰も思うまい。山本氏は今、こうした人が社会復帰できるような支援活動をはじめていらっしゃるというが、どうも刑務所は入所の時に知能検査をして状況を把握しているのに、出るときでさえ、手帳をもたせてくれるわけではないらしい。（刑務所は更正施設でもあるのではないのか？）通常の教育にはついていけず、最低限の知識も身に付けられず、職にも就けず、食い詰めて、あるいはしかるべき倫理観の欠如から罪を犯し、服役し、そして出て行くときには自分は刑務所でしか生きる場所はないから戻ってくる、というそうだ。つまりはしっかりした親を持たない知的障害児のこれが末路というわけなのね。私、絶対に死ねない！せめて、りおが大人になるまでは。

  2004/10/20

• 車椅子の子が普通にいる

  先週クリストファー・リーブ死去のニュースが流れた。１９７８年公開のスーパーマンは８０年代に続く肉体派ヒーロー時代の幕開けだったと思う。その後ターミネータが登場し、ランボーが現れ、９０年代はこの流れは女達にも波及し、ゴーストの可憐なヒロインはＪＩジェーンとなった。今、スーパーマンを見てその肉体に驚くことはないけれど、当時は黄金の輝きを持っていたのだ。今週、彼が神経再生の研究に貢献していたというニュースが続いたのきっかけに、スーパーマンだった人が車椅子になってしまってね、と食卓でそれに関する話をひとしきりした後、姉娘が自分の通っている学校にも少なくとも３人、車椅子の子がいると話し出した。りおも「うちにもいる」と口をはさむ。そうか、姉娘の学校は１２００人ほどの規模だから３人くらいかなと思って、あれ？「ねえ、日本の学校にはいなかったよね」と訊くとと口をそろえて、うん、いなかった、と答える。たまたまか？いや、姉娘、りおが通算１０年間通った小学校は５００人くらいの小さな学校だけれど、それでも一度も見たことがない程、車椅子の子は珍しくはないだろう。第一、設備もバリアフリーの基準をみたしてはいない。テレビなどで周りから助けられている普通の小学校に通う車椅子の子供が紹介されているのを見たことはあるような気がするけれど、少なくとも当たり前にはなっていないように思う。町で車椅子を見かけることは普通になってきたのに、完全にお役所の管理下にある公立学校が、そんな対応しかできていないのはすごく情けなくはないか？こういうとすごく変な言い方だけれど、単に足が動かないだけならうちのような子供を相手にするより学校だってよほど対応がしやすいだろうとさえ思う。もちろん、車椅子といっても障害のレベルは様々でバリアフリーの設備であればほとんど自由に動けるという子供は案外少なかったりするのだろうか。姉娘の学校の車椅子の子供達はエレベータの鍵を渡されており、そのエレベータを使って校内を自由に移動し、体育の授業も一緒に出ているそうだ。娘は同じクラスではないのでどういうことをしているのかまでは知らないのだけれど、更衣室から出てくるのを良く見かけるといっている。こちらの体育の先生は日本ほど面倒見がよくない。姉娘は最初のアーチェリーの時間、どこに入ればいいのか全然分からず一時間見ているだけだった。今ではようは勝手にやればいいんだと悟って、自由に撃っているけれど、初めて参加した外国人の生徒がぼうっとしていても声をかけてもくれないのかと思ったものだ。それでも、障害者への配慮は自然にできるようになっているのだろう。９０年代、町のバリアフリーが勢い良く進められているのを見て、これはもしかしたら公共事業の予算を減らしたくなかったからかな、と天邪鬼なことを考えていたけれど、文科省は予算取りに失敗したのだろうか、とまた天邪鬼に考える。あっ、でも日本の実情をはっきり知らないからほとんど当たり前になっているとしたらそれはとてもうれしい誤解なのだけれど、、、

  2004/10/18

• 学校と病院の連携

  今回の診断の時、先々週学校で行った発達検査のレポートを持参したが、学校の心理の先生からも電話があって、状況を聞いているとのことだった。病院の結果についても医師から学校に電話を入れてくれるのだそうだ。この当たりの連携はとてもよくて助かる。もちろん、このような学校と病院の情報共有は親がＯＫと書面にサインしたときに限って行われることで、勝手に患者の情報を学校に流したりはしない。医師が診断し、学校の授業についてもアドバイスを出し、学校はそれを考慮して特別教育の内容を決める。このように分担と連携がしっかりしていれば親が余計なところで気をもむ必要もないし、まして、アスペルガーとはなんぞやと先生に説明する必要なんて全くないわけだ。でも、連携という言葉で反対の例も思い出しちゃった。アメリカの学校は予防接種に対して厳格で、規定の接種を行っていないと入学が認められない。それで、事前に調べて日本で受けてはいたのだけれど、やはり一つ漏れがあって、それを病院に受けに行ったところ、これはこの年齢では受ける必要はないと言われたのだ。でも、学校ではっきり受けろと言われたし、また行ったり着たりはいやだから、注射してもらったところ、次年度の注射についてまた、意見が違う。これは学校に行って、病院でかくかくしかじかと言われたと話すといいや、違う、これこの通りとプリントを見せる。こういうことは病院に従うものでしょう、日本では。でも、学校は譲る気配もないので、これも受けました。連携が必ずしも良いわけでもないかな。

  2004/10/07

• アメリカでの診断

  アスペルガーですね。えっ、言葉がこんなに遅れているのに、アスペルガーなのですか？と聞くと、確かに年齢相応の言葉の発達ではないが、こちらの言うことをきちんと理解しているし、返ってくる言葉もオウム返しもなく、自分の考えを言っている。このような応答ができればアスペルガーと診断できる。ただ、アスペルガー、高機能自閉症、PDD-NOSは専門家の間でも論争が続いており、違う診断をする医師もいるだろう。今日はりおにとって二度目の診断だった。日本で受けた診断に疑問があるわけではなかったけれど、こちらの医師の診断がないと学校とのやり取りもスムーズではないし、別の医師の意見を聞いてみたい気持ちもあったのだ。診察を受けたのは地元の大学病院で、担当医は周辺ではこの分野の専門家として著名であるらしく、学校の心理の先生も名前を知っていらした。９時に来院するようにと言うことで、幸い１５分ほど前に付き、事務手続きをすませる。時間になると先生が待合室に迎えに来られ、診察室に案内された。診察室は６畳くらいのスペースで半分がプレイコーナーになっており、りおはテーブルに座って、持って来た本を読んでもいいし、玩具であそんでも好きにしてていいと言われる。別のテーブルで親が医師から問診を受ける。一番の問題行動は何か、いつ頃から分かったか等でこれが３０分位続くと、次にりおだけが別室に案内され、別の心理士のテストを受け、親と担当医は鏡の後ろの部屋から様子を見る。最初は顔のあちこちが欠けたパズルを行う。渡されたピースは難なく正しい場所にはめ込むが、後はじっと待っている。健常児だと次のピースを催促する行動があるのだそうだ。その次は人が大勢色々なことをしている細かい絵を見せられ、条件にあった人を見つけ出すというもの。これはＯＫ。その後は言葉による質問で、きれぎれではあるけれど、ぼつぼつと答えていた。どういうときにしあわせ？どういうときが一番かなしい？その後、持参したビデオで姉娘と遊んでいる姿を見る。私には仲良く遊んでいる普通の兄弟の様子だと思ったのだけれど、医師からはいくつかの点を指摘された。例えば姉娘がふざけてりおをくすぐるとりおは身を縮ませながらも喜んでいたが、普通の子供だとここで相手をくすぐり返すだろう、相互のアクションが希薄なのは自分から人に対して行動を仕掛ける欲求が少ないことの現れであること。また、医師はインタビューをしながら同じ部屋で遊んでいるりおの様子を同時に観察していたが、りおは明らかに自分のことを話しているということを理解している、しかし、親のところに寄ってきて自分の何について話しているのかということを尋ねなかった、ここも診断基準に触れるのだそうだ。検査、観察、問診を終えて、医師が話したのが冒頭の診断となる。診断名としては意外であったけれど、専門家にとっても論争になるような微妙な違いを話してもらってもしょうがない。今後のアドバイスとこちらからの質問をいくつかして終了となった。今後の対応のアドバイス：・苦手な分野にどう対応するか、例えば文字が苦手ならできるだけ速やかにタイプをマスターできるようにするなどの工夫をする。・何より得意な分野を伸ばしてやるよう配慮する。・将来の仕事は人とのかかわりが少ないものを中心にイメージし、それが実現できるようこの先の教育を考える。・成人したときはできればファミリービジネスのように誰もが彼のことを知っていて、理解してくれる所が一番である告知について：あえて本人に言う必要はない。言葉の遅れについて：言葉自体について何らかの障害があるというわけではなく、自分から話す気持ちが薄いことから発達が遅いと思われる。それはやはり相手が自分の知っていることを知らないということをしっかり認知できないためであろう。周囲が意図的にそのことは知らないからもっと話してよ、と伝え、言葉の練習をつむことが必要。集中力について：注意散漫なのだが、ADDということはないだろうか？それは全くない。テストの様子を見ても落ち着いて取り組んでいるし、集中力が高いとは言えないとしてもこの年頃の子供相応というべきだろう。学習については自閉症ＬＤという言葉がある位で、自閉症の子供の多くはＬＤである。今日の結果はレポートにして送ってくれるということで、学校とはその後に特別教育の打ち合わせを持つことになる。診断名を除けば特に目新しいことはなかったが、専門家と色々話してみて、色々な面での小さい疑問が少しずつ解けていく、こうやって少しずつうまく対応できるようになればいいのだろう。

  2004/10/06

• マニュアルだけでは確かにだめなんだけれど

  学研のサイトに“自立をめざして”というWEBマガジンがある。そこに“障害児医療から、カルテに書かなかったこと”というコラムがあるのだが、専門医が持ち回りで書いている記事で、人によっては硬い文章だけれど濃い内容のものだ。隔月の更新なのだけれど毎回読ませていただいている。（興味のある方はリンクしてありますので、行ってみてください。アスペルガーで有名な杉山先生の記事もあります。）最新号の記事を読んで、ズキっとした。自分の子はこういう障害がある、席は前に、声賭けをまめにと細かく要求する親がいる、しかし、子供の状態とはずれがある、半端な知識で決め付けて、柔軟性のない大人が増えているというもの。また、教師もこうした子供への対応マニュアルを欲しがっており、文科省もそれに対応しようとしているけれど、医療、教育という高度に人間的なサービスにマニュアルが馴染むだろうかという、危惧を述べられている。専門家から見れば親の得られる知識なんてたかが知れているだろうし、実際その通りなのだから、私が学校に何かお願いするときにもそうした間違いを犯してしまいそうだ。教育にマニュアルが馴染まないと言うのもその通りだろう。誰も、マニュアル先生に子供を見てもらいたいとは思うまい。しかし、しかしだ。この発達障害のことを理解している先生が現場にどれだけいらっしゃるのだろう。息子が色々な面でつまずくのをもどかしい思いで見ていたとき、この種の発達を指摘してくださった先生は５年生の終わりになるまで出会わなかった。個人的な狭い見聞の中で決め付けてはいけないだろうけれど、もし、この方面の知識を持つ先生が全く少ないのならば、当面の手当てとしてマニュアルもないよりは合った方がよくはないかなぁ。もし、マニュアルに勉強の遅れの目立つ子供は一応、発達障害の可能性を保護者に指摘しましょうとでもあったらば、私はもっと早く専門医に診せに行っただろう。もともと、マニュアルと言うのは９０点の品質は提供できないけれど、合格すれすれの７０点の品質を多量に提供するためにあるもの。マニュアルの対応なんか望まない、望まないけれど、全国数十万人の先生にとりあえず、最低限の対応をお願いするためにはそれも必要でしょう。それだけに終わって欲しくは絶対無いけれど。

  2004/09/29

• 受診の案内

  １０月初めに予約している大学病院から受診のための案内が来た。事前の問診表と型通りのアクセス案内とか支払いのお知らせとかが多いが、実の親でない場合の対応についてかなり、細かいレターが入っていた。生物学的親、法的に正当な保護者であるか、ないか、その以外の場合実の親の同意書が必要云々、、、この辺りは日本ではみかけない書式だわ。当日は是非、録音装置を持ってこいと言うのも目を引いた。これはうれしい。医師の話を録音しておけば後日役に立つだろうと。聞いたつもりでも、メモも取ったつもりでも後になってどうだったろうと分からなくなることは多いから、是非そうしたい。その他、事前に子供の様子を５分程度ビデオに取ってくるようにという指示もある。他の子供、兄弟と遊ぶ様子を写したものと言うことで、さてこれはどうしよう。姉娘と遊んでいるときのりおは普通の子供に見えるのだけれど、それはそれでいいのかしら。そうだとして、どのような場面をとればいいのだろう？パソコン・ゲームをしているところ？トランプをしているところ？５分間というと、うーん、、、、、

  2004/09/16

• 学校とのミーティング（１回目）

  今日、学校で今後のりおの学校生活についてのミーティングに参加してきた。夏休み中に診断を受けたことについて、校長に面談を申し込んだのだ。参加者は副校長、りおが一番お世話になっているESLの先生、心理学者、学区の特別教育担当の４名の方々で夫と一緒に伺った。この学校の副校長は以前、特別教育を担当されていたと地元の父兄に聞いていたのでちょっと安心している。予め心理学の人から電話をもらっていて、診断書は受け取ったのだが、診断名と簡単な特徴が書いてあるだけなので、対応を考えるにはもっと詳しい評価表が欲しいと言うこと。こちらは１０月の上旬に地元の大学の診察を受けることにしている、と伝え、ちゃんとした対応はその後でとは話していたので、今日はメンバの顔合わせと情報の共有化、状況の確認をするだけで、こちらも幾分気が楽だ。りおの状態を話し、学校での様子を先生から聞いた。学校での様子はまあ、想像したようなものだったけれど、先生には打ち解けているようなので良かったと思う。昨日もペットボトルのふたが固かったので、持っていって開けてもらったんだそうだ。このあたりでは一番と評判を聞いて診察の予約を入れた医師は、やはり著名なようで特別教育担当の人も心理学の人も知っていて、その医師ならちゃんとしたレポートを出してくれるからと話してくれた。りおは学校で３時まで過ごすのは負担が高くて、学ぶことはあまりできないだろう。一通りの話が済んだところで、こちらからそう話して例えば午前中だけの授業にしてもらうということはどうだろうと提案してみた。そうすれば私が家でゆっくり勉強が教えられるからと。副校長は勉強とのバランスはあるがやはり社会性が大事だと言われた。そうでしょうね。こちらも今回はちょっと打診してみる程度の心づもりだったので、このことは診察の時に医師に相談してみて意見を聞こうと思っている。医師の同意があればその方向で進むのも無理はないはずだ。その他、りおへの告知の話が出た。心理学の人に意見を聞いてみたところ、もう、自分である程度は分かっているはずだ、何か他の子のようにできないことがあるということは分かっているだろう。診断名をぶつけるのではなく、こういうことはできないけれどそれはあなたのせいではないと少しずつ話してやるのがよいだろうとのことだった。これも診察の時にも相談して、どうするか決めよう。実質的な対応は何も決まらなかったけれど、今日のミーティングの感触は悪くはなかった。まず、障害に関する説明は何もいらなかった。勉強の進み具合と多動や不注意はどの程度かというような質問があっただけで、心理学の人からも特に説明もなかったところを見るとみんなある程度の知識があるように見受けられた。その上で詳細なレポートは待つにしてもどういうことができるかちゃんと考えましょうと言うことだったし、外国人で言葉もできないという重ねてのハンデを迷惑に感じられている様子も全くなかった。次は１０月の診察だ。６月に日本で診察を受けたがやはりこちらでフォローしてくれる医師が欲しい。この分野で日米の格差というものがどれだけあるのかないのか分からないけれど、できれば単に障害があるということではなく、どの分野が足を引っ張っているのかどう教育していけばいいのか、分かればいいいと思う。

  2004/09/14

• 診断を受けてきた

  ３０分ほど、先生ではない、肩書きは分からないけれど、若い女性の問診を親が受け、続いて子供が１時間ほどテストを受ける。その後、１時間ほど待ち時間があり、先生との診察があった。２０分ほどりおと話し、その後、親だけで結果を聞く。結果は予想通り、広汎性発達障害、正確には特定不能の広汎性発達障害（Pervasive Developmental Disorder Not Otherwise Specified；PDD-NOS）ということだった。知能指数はボーダーで言語性、動作性も同じくらい。この障害はこれらの差が大きいことが特徴かと思っていたが、これは必須条件ではないそうだ。検査に行く前にりおにどんな検査か説明しないといけないと思って、「りおはうまく話せなかったり、できないことがあるでしょ。だから、そのことで検査してもらうの。」と言ったら、「あっ、言葉の教室の検査？」と言って来たので、もうちょっと、色々話すつもりだったのだけれど、「うん、そうよ。」と簡単に答えた。診察を終わって、外に出ると風が強くなっていて、雨も降り始めていた。その夜、久しぶりに日本のテレビを見てご機嫌なりおを見ながら、思った。根が暗い性質だから、自分の人生に起こる悪いことを想像してしまうことは珍しくなかった。私ががんになるとか、子宮ガンか、乳がんかな、あるいは夫がそんな年でもないのに病気で倒れるとか、子供が障害者になるというのも事故にあってということなら、「ああ、やっぱりこんなことが起こってしまった」というような気がしたんじゃないかと思う。でも、先天性の障害児の母になるとは思わなかった。生まれる前なら思っていたかもしれないなぁ。考えたってしょうがない。しょうがないから寝てしまおう。その夜は台風が東京を直撃したそうだ。風の音を夢うつつで聞きながら、それでもまあ、眠れたな。

  2004/06/21

• 発達障害支援法案は成立しなかった

  １６日国会が閉幕し、結局この法案の提出は見送られてしまった。とても残念だ。一年早ければそれだけ救われる子供が多いはずなのに。次の国会っていつなのだろう。春の定常国会と言うことはないと思うけれど。今度の国会で決まった法律、条約は１４５らしい。らしいというのは正確に数えられたかどうか自信がないからだ。それでも成立した法案を載せている記事は一つしか見つからなかったし、それもあっという間にネットの見出しから消えてしまった。私自身、成立した法案をちゃんと見たのはほとんど初めてのようなものなのだから、大きな口はきけないけれど、立法府の一番大事な機能について、もう少し分かりやすく大きく取り上げてくれればいいと思ってしまう。１４５の中には改正も多く、時代に変化に合わせての事務的な改正も多いだろうから、本当の意味で新たな法律と言うのは２０－３０程度でなないかと思うのだけれど、ネットではなく新聞本体にはそれらの要約って載っているのかしら。ひいちゃんパパさんの親の声はいつ届くのを読みました。“動いて動いて動き続けて歳を取り、成果を見ることが出来ないで亡くなられる方も多いと思います。それでもなお、障害児の親は動き続けます。たとえそれが、水鳥が来ない湖に、パンを投げ続けるような行為でも・・・”涙が出そうになった。それでも発達障害支援法案が議員立法として、上がってきたということは水鳥は来たということではないか。今はまだ、一羽だけであっても、次に来るのがずっと先のことだとしても、最初の一羽を呼んだ人の苦労を思えば、私もパンを投げることができるよ。

  2004/06/17

• 発達障害支援法案（仮）、危うし！今国会提出

  昨日書いた発達障害支援法案、単純に喜んでいたら、どうやら今国会の提出はかなり難しくなってしまったようです。あれから、ちょっと調べてみてカイパパさんのサイトで経緯を知りました。　　カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルこのサイトを見て、私も２通メールを送りました。国会のこういう状況下で何の力になるとは思っていないけれど、まずお礼が言いたかったんです。軽度発達障害と聞けばおそらく１００人のうち９９人以上が軽度ならまだ、いいんじゃないと感じると思うでしょう。今まで制度がなかったのは必要とする人の数が少なかった、あるいは必要の度合いが少ないとみなされていたからです。そういう少数のための制度を作ると言うことは政治家としてものすごく地味な報われることの少ない仕事に違いありません。私は政治には疎いけれどそれでも法案を提出するまでの労力が並大抵のことではないことは知っています。法律的な問題の検討、文面の作成、各方面の利害折衝からはじまって各党の思惑ひしめくなか、多くの議案を差し置いての提出となります。この超党派議員団「発達障害の支援を考える議員連盟」の会長には元総理大臣橋本龍太郎氏の名前があります。自民党の長老が会長を名乗るからにはそれまでの折衝にも大変な苦労があったはずです。対象者が少ないからおそらく、メディアに取り上げられ功績が讃えられることもあまりなく、もちろん地域も全国に散らばっているから選挙的に恩恵があるわけでもない。そういう仕事を、そうまで時間と労力を割いてできる人というのはやはり本当の政治信念と苦しむ者への共感を持っておられると思います。発達障害の支援を考える議員連盟の方々へ、私は心から敬意と感謝を送ります。

  2004/06/11

• 特別支援教育：一般に紹介されるのはこれからなのね

  いつものようにネットで日本の新聞を読んでいたとき、そういえば、特別支援教育ってどういう風に報道されたのだろうと試しに新聞社の各サイトを検索してみた。キーワードは特別支援教育朝日新聞　　〈障害児〉対象５倍増、どうなる「特別支援教育」（２月２日付け）　　　　　　　制度の内容と現場で予想される困難を紹介産経新聞　ヒットせず日経新聞　ヒットせず毎日新聞　特別支援教育の推進へ、法整備など求める　（５月１０日付け）　　　　　制度の紹介読売新聞　ヒットせずほとんど、報道されていないようなものなのね。この制度の実施にあたっては教職員はもちろん、他の生徒、父兄の理解も大きく必要だと思うのだけれど、全国で実施されるのは平成１９年からだから仕方ないのかなぁ。毎日新聞では関連記事として発達障害支援法案（仮称）が出てきた。支援法案、今国会提出へ－－早期発見、就労確保 （５月１２日付け）これって聞いたことはあったのだけれど、特別支援教育とごっちゃになっていた。特別支援教育は文字通り教育制度の中のことで、こちらはもっと総括的なものなんだ。動きは遅いだろうけれど、いい方向に向かってくれるのは感謝だわ。

  2004/06/10

• 高校が義務教育であること

  不登校の増加や多様な選択肢が重んじられる風潮で、最近はあまり聞かれなくなったけれど、高校を義務教育とするかどうかという議論があった。今もどこかであるのかもしれない。私は義務教育は中学まででいいとずっと思っていた。社会で働く上で必要な知識は中学校まででほとんどカバーできるし、音楽やスポーツに才能のある人なら１８才までの３年間を縛られるなんてたまらないだろう。若くて吸収の良い時間は一分一秒が惜しいはずだもの。なにより自分の実感として，中学高校の６年間は長かったのだ。私自身は学校や勉強と言うものに適応した子供だったと思うけれど、学んでいる知識がどう役立つのか実感できずに過ごす６年はやはり長い。今この年になっても６年は短くはない時間なのだから、１０代の頃を想像してみれば不登校になったり、ストレスから精神を病む子供がいても何の不思議もないと思う。だから、高校を一律義務化するくらいなら、進学せずに社会に出た子供が再度教育を受けたいと思ったときに柔軟に支援できるような制度が望ましいと思っていた。けれども、あの頃はこうした障害のことなんかまるっきり頭になかった。いや、仮に思い浮かんだとしてもそうした障害がある子供に高校教育が役に立つなんて考えも及ばなかっただろう。立場が変わると見方が変わるというより、その立場にならないと理解できない想像力の貧しさが本当に恥ずかしいのだけれど、そうだった。こうしたハンデがある分、丁寧に時間をかけて能力開発が必要なのに、そうした道はそれぞれの家庭が自力で切り開くしかないという現実にバカみたいにショックを受けている。ほんと、バカみたい。大学まである付属小学校に入ることをエスカレータ式になんていうけれど、正常値の中で育ってきた人間ってみんなエスカレータに乗っていたようなものだ。自分ではそれなりに努力したり、あがいたりして何かを得てきたつもりだけれど、次元が違うわ。発達障害の子供は社会に出るために人一倍の努力をし、かつ周囲の理解も充分に受けられず多くのストレスにさらされる。そんな子供に言ってみれば普通の子供に見せかけるため高校入試という課題を課し、貴重な時間を費やすとしたらそれはもう理不尽の一言に尽きるというものだ。発達障害児のために高校教育義務化というのは変な話しだし、そういうことを言うつもりもないけれど、高校が義務教育のアメリカが今はただただうらやましい

  2004/06/08

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