本が泣いている
JRと東京メトロの駅があるにぎやかな街の駅前商店街に、小さな古本屋さんがオープンしていた。狭い店内の正面奥にレジがあって、その手前、店の中央にはカラフルな絵本やヴィジュアルブックが表紙を見せている。左右の壁面の書棚を見ると、日本の小説を中心にびっしりと本が詰め込まれている。しかし、ここで見てはいけないものを見てしまった!書棚と天井の5−6センチのすきまに、地震対策のつっかえ棒の代わりなのか、数カ所に、数冊ずつ束にした文庫本がねじこまれていたのだ。折れ曲がってしまった本、破れてしまった本。おそらく店主は、もともと傷んで売り物にならない本を選んだのだとは思う。そうだとしても、本が好きなはずであろうに、なぜそんなことをするのだろう。本が泣いている。