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2012.05.24
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カテゴリ:健康・病気



■【379回】 五十肩の痛みとの共生 [12/04/15]





■体験から語る「医師が病気になったとき」 (その5)

五十肩の臨床経過は急性期、慢性期、回復期の3つに分けられ、急性期には強い疼痛(安静時、運動時、夜間)があることが特徴で、ときとして睡眠障害につながる夜間痛を呈することもあるそうです。

私も夜中に痛みで目が覚めることがしばしばあります。そんな時はどうしているのでしょうか。経験的に、痛くない方の右肩を下にして横になると痛みが緩和されることを知りましたので、そのような対応を心掛けておりました。実際に、「患側下の側臥位での睡眠阻害」ということが症状の一つとして挙げられております(宮崎 剛:五十肩を理解する─加齢. 関節外科 Vol.30 1221-1225 2011)ので、健側を下にした側臥位は痛みを緩和します。五十肩による夜間痛でお困りの方は一度お試し下さいね。

急性期には運動療法は禁忌だそうです。急性期を過ぎたら、二次性の肩の拘縮を予防する目的で、Codman体操といった無理なく行う可動域運動が勧められるそうです。Codman体操(コッドマン体操)について分かりやすく解説しているサイトもありますからご参照下さい。

大阪医科大学総合医学講座リハビリテーション医学教室の田中一成医師は、五十肩に対するリハビリテーションのエビデンスについて以下のように言及しております(一部改変)。

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「五十肩に対する運動療法や理学療法、物理療法に対する反応性は患者によって異なり、個々の保存療法の効果やほかの治療法に対する優位性などは科学的に証明されていないのが現状である。このことが治療ゴールの設定を困難にしている。」(田中一成:五十肩を理解する─治療のゴールはどこにあるのか? 関節外科 Vol.30 1248-1253 2011)
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6週間の保存療法で自・他動の可動域・痛み・日常生活の制限が改善せず、少なくとも症状が3カ月以上続く場合には手術療法の適応も検討するそうです(橋本 卓、諸岡孝明:五十肩を理解する─手術療法の適応と方法. 関節外科 Vol.30 1254-1259 2011)。

さて五十肩の手術っていったい何をするのでしょうか?冒頭で、「五十肩は、肩関節の疼痛と可動域制限という2症状があるにもかかわらず、明らかな外傷などの原因がない」ことを説明しましたね。原因が明確でなければ、当然、手術の対象病変がなく手術の効果は期待できませんよね。上記の論文を読むと、疼痛部位周辺の炎症を機転とした癒着による拘縮・線維性肥厚に対して手術が施行されるそうです。ですから、一定以上の期間が経過しても症状が続くケースが手術対象となるわけですね。

残念ながら上述の論文には、手術による「肩関節の疼痛」と「可動域制限」の改善率が記載されておりません。「ガイドライン外来診療2009」においても、肩関節周囲炎(五十肩)に関する記載を読む限り、手術療法に関しては触れられておりません。

「一度治癒した五十肩において、同一肩が再罹患することはほとんどないとされている」(山本敦史、高岸憲二:五十肩を理解する─五十肩の疫学. 関節外科 Vol.30 1210-1212 2011)という記載に期待を寄せて、今しばらくは五十肩の痛みと共生してみようと思っています。

(つづく)














笠間 睦 (かさま・あつし)プロフィール




 1958年、三重県生まれ。藤田保健衛生大学医学部卒。振り出しは、脳神経外科医師。地元に戻って総合内科医を目指すも、脳ドックと関わっているうちに、認知症診療にどっぷりとはまり込んだ。名泉の誉れ高い榊原温泉の一角にある榊原白鳳病院(三重県津市)に勤務、診療情報部長を務める。認知症検診、病院初の外来カルテ開示、医療費の明細書解説パンフレット作成--こうした「全国初の業績」を3つ持つという。
 趣味はテニス。お酒も大好き。お笑い芸人の「突っ込み役」に挑戦したいといい、医療をテーマにしたお笑いで医療情報の公開を進められれば・・・と夢を膨らませる。もちろん、日々の診療でも、分かりやすく医療情報を提供していくことに取り組んでいる。









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最終更新日  2012.06.01 05:08:29
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