カテゴリ:音楽
本当にその演奏に打ちのめされたとき、私は終わった瞬間、「お願いだから拍手しないで!」と心のなかで願う。
余韻に浸っていたいからだ。とくに、バッハの宗教作品などはそれを強く感じる。 久しぶりに、そんな演奏にであった。 オランダ・バッハ協会の「ヨハネ受難曲」である。 オランダ・バッハ協会は、これが初来日。地元では長年受難曲を演奏しており、評判も高いらしいが、日本では知られていなかった。 知人の某有名新聞記者が「超おすすめ」だと言ったこともあり、事前に彼らの「ヨハネ」の CDを買って予習はしていたが、たしかにいい演奏だとは思ったものの、圧倒された、という感じではなかった。 それが生演奏では、まったくもって圧倒されてしまったのである。 演奏された稿は、1724年の初演稿。ただ初演稿は自筆のスコアが残っていないため、再現が必要になる。 今回、その作業の中心となったのは、指揮のフェルトホーヴェンもだが、メンバーのひとりデュルクセンらしい。 当時の(「ヨハネ」が初演された)ライプツィヒの音楽の状況をかんがみながら、フラウト・トラヴェルソはおそらく加わらなかったとして外し、一方で通奏低音にテオルボを加え、音色を豊かにした。 また声楽パートは、コンチェルティスト4名、リピエニスト3名、それにエヴァンゲリストと、イエスも歌うバス、の9名。この切り詰められた人数を、コンチェルティストは舞台中央、リピエニストは舞台左手、あとの2名を右手に配して、あたかも楽器奏者のなかにちりばめられたような感じに配置した。 その結果、ピリオド楽器と、ノン・ヴィブラート唱法の声楽との妙なる響きのブレンド!が実現したのである。 器楽もうまかったが、声楽パートも名手ぞろい。とくにコラールのしみじみとした「歌」は絶品!他方劇的な合唱の迫力も素晴らしく、「ヨハネ」の特徴のひとつであるコントラストの美学が、過剰すぎずに表現されていたと思う。 終演と同時に、スタンディングオベーションもちらほら。この手の演奏会にしては、珍しいです。 終了後、「お願いだから拍手しないで!」と思った宗教曲の演奏は、2003年にライプツィヒのバッハ・フェスティバルで聴いたヘレヴェッヘ指揮の「ロ短調」以来でした。 世界には、本当に知られざる(すみません、こちらの勉強不足)名演奏家がいるものです。 まっすぐ帰るのももったいなく、余韻を楽しもうと軽くご飯を食べ、ワインを飲んだ。「ひとり寂しく」だったところがモンダイなのだが・・・ 下は指揮するフェルトホーヴェン。写真提供はアレグロミュージックです。 詳しい感想は、HP www.casa-hiroko.com (または加藤浩子で検索)の「コンサート日記」をご笑覧ください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
March 3, 2008 10:51:55 PM
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