メトの「ライブビューイング」で、フローレス&デセイの、「連隊の娘」を観た。
昨年来、コヴェント・ガーデンなどで上演されているプロダクション(ローラン・ベリー演出)である。
この2人の共演による「連隊」は、昨春ミラノで観る予定だったのだが、古いプロダクション(ゼッフィレッリ)での上演になり、デセイが降りてしまって、代役はランカトーレ。残念ながら今ひとつでした。
なので今回は、ぜひとも、と思ったのである。
素敵でしたね!大満足。
演出がしゃれていて、芸達者なデセイの演技力が際立っていたし、フローレスの歌はいつもながら絶品。最近、また輝きが増した気がする。
ハイCアリアのアンコールがなかったのが残念といえば残念だったけれど、こればかりは仕方ない。
2人の息がぴたりと合っていたのも、見ていて心地よかった。
幕間のインタビューでも、「気が合う」といっていた2人、来年はやはりこのライブビューイングで、2人の共演する「夢遊病の娘」が放映されるそう。ああ、いっそ現地に行きたい・・・
前も書いたと思うけれど、フローレスの凄いところのひとつは、(声や技術のすばらしさは当然として)安定度の高さ。10回くらいは聴いていると思うが、がっかりさせられたことが一度もない(残念ながらほかの有名テノールでは、ないとはいえない)。今日は少し疲れているかな・・・と感じたことはあるけれど。
それだけ、もろもろに気を配っているのだろう。
レパートリーが狭いという声もあるけれど、自分に合わないレパートリーを歌ってフォームを崩してしまう歌手が大勢いるなか、自分の声を客観的に把握して、本当に合ったものだけを選んでいくフローレスの行き方はすごいなあ、と思う。
海外のある雑誌に載った、彼のインタビュー記事を目にする機会があったが、自分の声を客観的に観ていることがよく分かり、興味深かった。
イタリア・オペラの一般的なレパートリーであるヴェルディやプッチーニは、「音域が低い」「怒鳴るように歌うのは嫌」などの理由でほとんど歌わなかったフローレスだが、今年は「リゴレット」のマントヴァ公を歌い始めた。3月に母国のペルーで歌い、6月にはドレスデンで歌う予定になっている。
実はドレスデン公演にははせ参じる予定で、今年最大のハイライト?とひそかに思っているのです。
オペラ歴半世紀の私のだんなは、フローレスの声は「個性的」という点で、「デル=モナコみたいだ」と言う。(もちろん、声のタイプが正反対ということは承知の上。彼はデル=モナコを聴いたことがあるので・・・)タイプもレパートリーもまったく違う2人だが、たしかに個性の強さや、存在の大きさという点では、肩を並べるところがあるかもしれない。
ペルーの「リゴレット」、ユーチューブではさっそく放映されているようだった。すごいなあ、ユーチューブ。
ちなみにユーチューブでは、テレビで放映されたフローレスの結婚式の模様も流れていた。さすが大スター!日本人オペラ歌手、いやクラシックの演奏家で、結婚がニュース、あるいはワイドショーのネタになるひとなんて、いるかなあ・・・(かつて庄司薫氏と結婚した中村紘子さんのように、2人とも有名なら別だけれど・・・)
写真はご存知、「連隊」のアリア後のフローレス。インプレッション・アソシエイツさんからご提供いただきました。