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初めての新書を上梓させていただきました。 「ヴェルディ オペラ変革者の素顔と作品」(平凡社新書)です。 新書でヴェルディを扱ったものは初めて、ということで、大変光栄に思っています。 内容は以下の内容の3章で構成されています。 人間として作曲家としてのヴェルディ ヴェルディ上演の現在 〜上演の現在、おすすめの歌手や指揮者など。ヌッチ、マリオッティ、オルトンビーナのインタビューも含みます。3人それぞれのベルディ論も面白いです。 ヴェルディオペラ全作品 および一部の代表作の解説〜オペラについてはあらすじ、聴き所、作品解説(オペラ全作品のあらすじおよび解説をコンパクトに持ち歩けるのは、新書の利点ですね)。 一番力が入ったのは、やはり「人間として作曲家としてのヴェルディ」でしょうか。 ヴェルディの実像は、名前ほどには知られていません。オペラ作曲家としての業績だって、同年生まれのワーグナーに比べたらほとんど論じられてはいないのではないでしょうか。ヴェルディは、(極端に言えば)歌手の歌合戦状態だったオペラを、音楽による人間ドラマにした作曲家です。彼によって、少なくともイタリアのオペラは、「泣ける」ものになったといってもいい。 同時にヴェルディは、オペラの世界において作曲家の覇権を確立しました。著作権を手にし、作品は作曲家のものであると主張しました。後者のことはワーグナーも主張したわけですが、ヴェルディは実際的な作曲家として、劇場の現場で、そのことを主張、獲得して行ったのです。最終的にはワーグナーのように、オペラ全体を自分で把握しようとした。つまり「総合芸術」を実際の場で実践していきました。 彼の音楽以外の活動や、人間としての実像〜農場主として成功したことや、慈善家としての活動、あるいは実父との葛藤など〜も、ほとんど知られていないように思います。二番目の妻となったジュゼッピーナの実像や、彼女が属していた劇場という世界のいかがわしさにも触れました。 ヴェルディの実像が明らかにされてこなかった理由のひとつは、彼が「イタリア統一運動(=リソルジメント)の英雄」とされてきたことにあるように思います。けれどこの点は、最近では疑問が出ています。彼が建国の父のようにまつりあげられたのは、おそらく統一後の、政府側の思惑が大きく絡んでいるようなのです。そこを取り払わないと、ヴェルディの実像は見えてきません。 力不足で、至らないところ、勉強が足りないところも多々あると思いますが、もしご興味を持っていただけるようでしたら、ご一読いただければ大変光栄です。 どうぞよろしくお願いいたします。
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最終更新日
May 20, 2013 10:07:14 PM
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