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カテゴリ:たびごころ
お彼岸の入りともあって
谷中界隈は賑わいの中 気をつけて見ていなければ見落とす所 「疾風小僧」 のたくった墨書の小さな看板が 無造作に道端に置かれてる 「御免なさいよ」 がらりと引き戸を開け放ち声を掛ける 薄闇に目が慣れるまで暫し 「どなたさまで?」 返事を返すのはまだ十四五ほどの少年 「あんたが疾風小僧さんかい?」 問い掛けに短く答える 「はい」 往来に立ち込めていた線香とは違った匂いがふと掠める 「ちょいとこの手紙を届けてくれるかい 夕刻までに鳥越神社の裏手の家なんだが」 「お安い御用で」 手紙を受け取った小僧は懐にしまいこむと灯明を消した 「お代はいくらだい?」 財布を出しながら尋ねる 「何 今日は日和もいい ちょいと吹いてみてぇ日和だ 代なんぞ・・・」 言う間も無く姿が掻き消えた だらだら続く坂道を歩きながら 風の行き先なんか分かりやしないなんて思った バックグラウンドミュージック Wish You Were Hear by Pink Froid 付記 人力車引きの若者に 「日本語上手ですね」って言われちゃった てへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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