甘い血日誌

潤子は夫と子供を送り出し


洗い物、洗濯干し、掃除とてきぱきと終わらせ


「ふぅ」と一息つくとエプロンをはずした




大好きな紅茶を入れ昨日買ったドーナツを頬張りながら


リビングのソファに座り込んだ




結婚十年目


何もかも望み通りではなかったけれど


決して不幸を感じている訳ではなかった




ゆうべ夫が言った一言が蘇った


「ちょっとこのところ太ったんじゃないの？」



（確かに結婚当初に比べれば太ったけど


自分なんかもっと太ったじゃない


海で知り合った頃なんて素敵なサーファーだったのに）



そんなことを心の中で呟きながら夫が広げっ放しにしてあった


新聞を元通りにたたみ目を落とした





一面の見出しを見た潤子の形相がみるみる変わった



「こいつの・・　全部こいつのせいだったのね！」





ヒッグス粒子




ﾊﾞｯｸｸﾞﾗｳﾝﾄﾞﾐｭｰｼﾞｯｸ
Surfer Girl
by
The Beach Boys



付記


果たして発見されるまで


本当に存在していたのだろうか？


が


２１世紀的課題だと思うんだ